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ビーチ・ボーイズの驚異的な傑作「グッド・バイブレーションズ」の軌跡]


1966年10月、ビーチ・ボーイズはシングル"Good Vibrations"をリリースし、ロック音楽の歴史に燦然と輝く金字塔を打ち立てました。複雑絶倫な音の織り成す世界観、楽曲展開の個性的エピソード性、そして音楽の常識を越えた大胆不敵な構造は、まさに当時の音楽シーンに革新をもたらす衝撃的存在と言えるでしょう。本日はThe Beach Boys - Good Vibrationsの研究と分析というコトで記事を進めさせて頂きます。

本日の記事は以下magazineに収録させて頂きます。 

The Beach Boys - Good Vibrations (Official Music Video)

日本語翻訳

グッド・バイブレーションズ

僕は、彼女のカラフルな服が大好きだ
そして、太陽の光が彼女の髪に映し出される様子も
優しい言葉が聞こえてくる
風に乗って、彼女の香りが
空気の中に漂っている

僕は、良いバイブレーションを感じている
彼女は僕の気分をHighにしてくれる… (繰り返し)

目を閉じると、彼女はなぜか今、より近くに感じられる
柔らかく微笑む、彼女はきっと優しい人だとわかる
そして、彼女の瞳を見つめると
彼女と一緒に、花が咲き乱れる世界へ行ける

僕は、良いバイブレーションを感じている
彼女は僕の気分をHighにしてくれる… (繰り返し)

どこかはわからないけど、彼女は僕を連れて行ってくれる
ああ、なんて素晴らしい感覚なんだ
ああ、なんて素晴らしい関係なんだ
この愛のグッド・バイブレーションを
彼女との愛とともに、ずっと持ち続けたい

ああ…

グッド・グッド・グッド・グッド・バイブレーションズ
グッド・グッド・グッド・グッド・バイブレーションズ
ナ・ナ・ナ・ナ・ナ・ナ・ナ・ナ

究極の録音スタジオ活用術

この前代未聞の"Good Vibrations"の制作は、録音スタジオそのものを新たなる音楽的可能性を秘めた創造の場、いわば新しい楽器へと変貌させました。それまでのポップス曲は概ね1、2日の短期録音で仕上げられるのが一般的でしたが、ビーチ・ボーイズの音楽的指揮者ブライアン・ウィルソンは、この常識に風穴を開ける新しいクリエイティブ・プロセスを取り入れたのです。4つのハリウッド・スタジオを縦横無尽に渡り歩き、90時間を超えるテープを使い、ごく短いフレーズ(モジュール)の断片を何度も録音・重ねていったのです。

このようなモジュール式アプローチと大胆な編集作業により、楽曲の各セクションごとに調性や演奏スタイル、楽器編成を自在に変化させることが可能になりました。その結果、従来の概念を超越したまさに"ポケット・シンフォニー"と呼ぶに相応しい、壮大絶景の音の競作が生み出されたのです。ニューヨーク・マガジンはこの曲を「リズミカルなビートを持つ複雑で変化に富んだ作品のようだ」と表現しています。音楽ジャーナルSound on Soundは「30分を超える本格的な古典作品にもひけを取らぬ、ムード変化の多様さがあり、通常のポップ・フォームを大いに覆す」と分析しています。

フラワーパワー運動の息吹から生まれた歌詞

タイトルが示すように"Good Vibrations"は、宇宙的な"良い振動"というコンセプトから着想を得ています。また歌詞は、サンフランシスコ発祥の反体制的なフラワーパワー運動の影響を色濃く受けていました。ブライアンのいとこでバンドメイトのマイク・ラヴが書いたこの歌詞は、色とりどりの服を着た恋人の姿と、その髪に揺らめく陽光の様子を綴っています。そして「私は彼女のそばに行けば、花々の咲き誇る世界へ連れて行ってくれる」と歌われています。フラワーチルドレンの心象風景が描かれた歌詞世界は、まさにサイケデリックな雰囲気に満ちています。

楽器編成においても前衛的な趣向が凝らされており、電子的なシャリーリングが印象的なテルミン・ソロと、ポップ・ミュージックの領域ではあまり見られなかったチェロのリズムフレーズが、この曲の特徴的なサイケデリック・サウンドを力強く支えています。

金銭的にも空前の製作規模

革新的な録音手法に加え、"Good Vibrations"の制作自体が金銭的にも過去最高の規模だったことは、この曲の偉大さを物語る重要な事実です。当時の推定製作費は5万ドルから7万5000ドルという言われており、シングル曲としては空前の高額でした。

ブライアン・ウィルソンは、作品の各セクションごとに、ロサンゼルスの一流スタジオ・ミュージシャンたちに、ギター、キーボード、木管、打楽器などの多種多様な楽器を演奏させています。さらに、複雑絶倫なコーラス・アレンジなども加えられ、驚くべき充実ぶりだったのです。

現在の価値観で…
$75000 x 9.64=$723000
本日は$1=157.48円
$723000 x 157.48円= 113,585,040円
1曲=1億1359万円

批評家も絶賛したヒットへ

このような前衛的で常識を越えたサウンドにもかかわらず、"Good Vibrations"はアメリカ、イギリスを含む複数の国で1位を記録する大ヒットとなりました。批評家からは、ポップ・ミュージック界の極みとも言うべき作品として熱い賞賛を受けました。また、サイケデリックとプログレッシブ・ロックの先駆けとしての評価も高まりました。

途切れることのない絶大な影響力

半世紀を経た今日でも、"Good Vibrations"は批評家や専門誌の"最高の曲"ランキングにしばしば上位にランクインされています。ビートルズの"A Day in the Life"クイーンの"Bohemian Rhapsody"など、後に登場した多くの革新的ロック作品が、この傑作からの影響を受けていると考えられているのです。

しかし"Good Vibrations"は、単なる音楽の先駆者や影響源としてだけでなく、それ自体が今なお色あせることのない、あまりにも天才的で挑戦的な名曲なのです。ポップミュージックの概念そのものを覆した究極の芸術性により、50年を経た今でも次代の無数のアーティストたちに衝撃と多大な影響を与え続けているのです。

結びに代えて

"Good Vibrations"は、あらゆる面においてポップス史に燦然(さんぜん)と残る金字塔であり続けています。革新的な録音手法、起源的なスタジオ・クラフト、幅広いアーティスト層への多大な影響力など、この1曲に凝縮された意義は誠に計り知れません。しかし何よりも、"Good Vibrations"自体が常に色褪せることのない、天才的で輝かしい芸術作品であり続けているという事実が、この曲の持つ最大の価値なのかもしれません。時を超えて聴き手の心に強く訴え続ける、一音一音に神々しい光が宿っているのです。これほどズバ抜けた名曲が生まれた1966年の出来事は、まさに音楽の歴史に新たなる地平線が開かれた証しと言えましょう。

参加Muisian

このセクションの詳細は、バンド・アーカイビストのクレイグ・スロウィンスキーが編集したセッショングラフィを含む『The Smile Sessions』のライナーノーツと、音楽史家のアンドリュー・G・ドウが管理するウェブサイト『Bellagio 10452』からの引用です。

Single edit
The Beach Boys

Al Jardine – backing vocals
Bruce Johnston – backing vocals
Mike Love – lead and backing vocals
Brian Wilson – lead and backing vocals, tack piano (choruses), overdubbed tambourine (choruses)
Carl Wilson – lead and backing vocals, electric rhythm guitar (choruses and chorus fade), shaker (second bridge)
Dennis Wilson – backing vocals, Hammond organ (second bridge)

追加 players

Hal Blaine – drums (verses and choruses), timpani (choruses), shaker (second bridge)
Jimmy Bond – upright bass (first bridge)
Frank Capp – bongos with sticks
Gary Coleman – sleigh bells (third bridge and chorus fade)
Steve Douglas – tenor flute (verses and first bridge)
Jesse Ehrlich – cello
Jim Gordon – drums (third bridge and chorus fade)
Bill Green – contra-clarinet, bass saxophone
Jim Horn – piccolo (first bridge)
Larry Knechtel – Hammond organ (verses)
Plas Johnson – piccolo (verses and chorus fade), flutes (chorus fade)
Al De Lory – tack piano
Mike Melvoin – upright piano (chorus fade)
Jay Migliori – flutes (verses and chorus fade)
Tommy Morgan – bass harmonica, overdubbed jaw harp, harmonica
Bill Pitman – Danelectro bass (first bridge, third bridge, and chorus fade)
Ray Pohlman – Fender bass (verses and first bridge)
Don Randi – electric harpsichord
Lyle Ritz – upright bass (verses and second bridge), Fender bass (choruses)
Paul Tanner – Electro-Theremin
Terry (surname unknown, possibly Terry Melcher) – tambourine (verses)
Arthur Wright – Fender bass (third bridge and chorus fade)
unknown (possibly Hal Blaine) – tambourine (first bridge)

Technical staff

Chuck Britz – engineer
Cal Harris – engineer
Jim Lockert – engineer

https://booksch.com/go/me

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