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西洋、最後の崩壊? エマニュエル・トッドと語る『真実のすべて』


西洋、最後の崩壊? エマニュエル・トッドと語る『真実のすべて』

AI研究・分析・実験に大量の時間を持っていかれ、なかなかエマニュエル・トッドのDataが後手になっていまいました。
で 本日は、タイトルを「西洋、最後の崩壊? エマニュエル・トッドと語る『全てを真実で』」にしようと一瞬思いましたが、「真実のすべて」で進めさせて頂きます。

トッド氏の示唆に富む論考を可能な限り詳細かつ平易な言葉で要約刺せていただきます。

【西側の敗北の背景】
トッド氏はまず、西側がロシアとの戦争で敗北した背景には、プロテスタント的な労働倫理と産業基盤の崩壊があると指摘します。かつてプロテスタントは教義上、信者に読み書き能力を求めたため、西側社会では技術革新が進み、資本主義経済が発達しました。ところが最近では、そうした世俗的な労働倫理が消滅しつつあり、西側の産業は空洞化しているのです。

特に米国では、国民の富を実際に生み出している工業分野よりも、金融や法律などのサービス業が過度に発達しGDPの6割を占めています。工学などの研究開発への投資が手薄なため、米国の産業競争力は低下し、ウクライナへの武器供給能力も制限されているのです。つまり、西側諸国がロシアに対する戦争で劣勢なのは、産業基盤の空洞化が招いた結果なのです。

【西側的価値観の矛盾】
もう一つ、西側の敗北の要因としてトッド氏があげるのが、西側が掲げる「普遍的価値」の矛盾です。例えばフェミニズムやLGBTの権利といった概念は、西側社会の中で自然に芽生えたものですが、これを他国に押しつけようとする西側の姿勢には無理があります。

プーチンもまた、家父長的な価値観を持つロシア社会が西側的価値観を受け入れることを拒否しています。トッド氏はこうした世界的な西側への反発が、思想レベルでの西側の劣勢を示していると論じています。

【西洋中心主義からの脱却】
そしてトッド氏が最後に訴えかけているのが、西洋中心主義からの脱却です。西側社会が抱える深刻な現実を見過ごしていることの例として、ロシアより米国の方が乳児死亡率が高い実態をあげます。西側こそが世界の覇権を握るべきだとする昔ながらの思い込みを改め、自らの危機を直視することが求められている、とトッド氏は説いているのです。

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「西洋の敗北(フランス語版)」


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ソビエト連邦の崩壊は、歴史を再び動かしました。それはロシアを激しい危機に陥れたのです。さらに重要なことに、世界的な空白を作り出し、それは1980年代から危機にあったにも関わらずアメリカを引き込みました。その後、逆説的な動きが始まりました:内部で衰退している西洋の侵略的な拡大です。

プロテスタンティズムの消滅は、段階を経てアメリカを新自由主義からニヒリズムへと導き、イギリスを金融化からユーモアのセンスを失うことへと導きました。宗教のゼロ状態は欧州連合を自殺に導きましたが、ドイツは復活すべきでしょう。

2016年から2022年にかけて、西洋のニヒリズムは、ソビエト圏の崩壊から生まれたウクライナのニヒリズムと融合しました。NATOとウクライナは共に、安定を取り戻し、再び大国となり、保守的で、西洋の冒険についていきたくない世界の残りの部分にとっては安心材料となったロシアに対峙しました。ロシアの指導者たちは停戦のための戦いを決断し、NATOに挑みウクライナを侵攻しました。

経済批評、宗教社会学、深層人類学のリソースを動員し、エマニュエル・トッドは私たちに実際の世界を巡る旅を提案しています。ロシアからウクライナ、旧民主人民共和国からドイツ、イギリスからスカンディナビア、アメリカ合衆国に至るまで、そして戦争の結果を決定したその世界の残りの部分を忘れることなく。

https://booksch.com/go/me


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