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心のラヴ・ソング | Silly Love Songs : McCartney: A Life in Lyrics

今回の記事は以下マガジンに収録させて頂きました。


Silly Love Songs - McCartney: A Life in Lyrics | Podcast

以下のpodcast「lyricsの人生」よりWingsの名盤"Wings at the Speed of Sound" の名曲「Silly Love Songs」を分解・分析させて頂きます。

はじめに

ポール・マッカートニーは、ビートルズ時代から現在に至るまで、数々の名曲の中で「愛」をテーマに歌い続けてきました。若き日の洒落たラブソングから熟年の深みあるバラード、ありとあらゆる愛の形を詩的かつユーモア溢れる歌詞で表現してきた半生は、まさに愛の賛歌そのものと言えるかもしれません?。

本記事では、ポールの歌に込められた愛への真摯な眼差しを、podcast
を通して代表作を 辿ることで明らかにしていきます。時に陳腐で老醜と批判された LOVE SONGS こそが、人間性の根源を体現するテーマであり続けるのかもしれません。

若きビートルズ時代の恋愛ソング

ビートルズ黎明期の作品を振り返ると、ほとんどが若々しい恋愛をテーマにした曲ばかりでした。"Can't Buy Me Love"や"She Loves You"など、今なお多くの人々に親しまれている不朽のラブソングは数え切れません。

しかし、単なる恋愛賛美に留まらぬ新鮮な発想とユーモアがこれらの曲にはちりばめられていました。"Can't Buy Me Love"では「金は絶対に恋を買えない」とストレートにマテリアリズム(物質主義)を批判。ポールはこの曲について「とてもシンプルな作品ですが、金と愛の対立を描いています」と語っています。

また、恋愛の陳腐なクリシェ(独創性のない平凡な考え方。)を逆手に取った機知に富んだ作品も多数ありました。"Love Me Do"の「愛してるよ」「僕を愛して」というありふれた呼びかけは、リスナーを喜ばせました。

このようにビートルズ黎明期の作品には、若者らしい甘酸っぱい想いを代弁する一方で、既成の概念に囚われない自由な発想が随所に垣間見えるのです。

熟年期の深みあるロマンティック・バラード

ビートルズ解散後のソロ活動でも、ポールはロマンチックな愛の賛歌を多数残しました。"My Love"は第一人者リンダへの誓いの言葉が綴られた作品です。

「It's everywhere with my love」

愛する妻への想いがストレートに表現されたこのフレーズからは、ポールの真摯な愛情が伝わってきます。

一方、"My Valentine"はポールの現夫人ナンシーに捧げた曲です。モロッコ旅行中の2人のエピソードをきっかけに生まれた作品で、雨に濡れながらも愛を貫く決意が綴られています。

「雨が降り続き最悪の天気でしたが、ナンシーが『雨なんてかまわない。きっと太陽が昇るから』と言ってくれました。その前向きな姿勢に感銘を受けて曲を書きました」

"I Will"の中世吟遊詩人のような味わいを持つ歌詞からは、ポールの愛の形を夢見る少年のようなロマンチシズムが感じられます。

「いつまでも私はあなたを愛し続けます。私の愛は決して消えることはありません」

ポールは「まるで森の中を彷徨う吟遊詩人のようですね」とこの曲を愛らしく形容しています。

他にも愛すべき存在に捧げられたユニークな作品があります。"Martha My Dear"はポールの愛犬マーサへの賛歌で、ペットへの思いやりの情が込められた心温まる一曲です。ジョン・レノンもマーサを可愛がっていたそうです。

ラブソングへの批判と「Silly Love Songs」

長年に渡り愛の賛歌を書き続けてきたポールでしたが、一部からは陳腐で老醜なものと評されることもありました。そうした批判に対し、彼は"Silly Love Songs"の中で痛快にも反論しています。

「愚かしいラブソングを書いてなにが悪い?愚かしいラブソングに何が悪いというんだ?」

この歌詞にはあえてラブソングらしい陳腐さを皮肉ったポールの遊び心が感じられます。しかし同時に、愛の普遍性とその重要性を力強く主張しているのも事実です。

「私たちは愛の賛歌を求めているのです。それに何が悪いというのでしょう」

批判はいずれ去っていくと一蹴するポールの言葉からは、どんな時代が来ようとも愛の讃美は不滅であることが分かります。

愛の賛歌の意義

ポールが愛の賛歌を書き続ける理由は、愛が人類にとって根源的な感情だと捉えているためです。

「この地球上のあらゆる場所で、人々は愛し合い、赤ちゃんが生まれ愛されています。動物たちも同じです。愛は存在のすみずみにあるのです」

つまり、愛とは人間性そのものを体現する、哲学や宗教の基礎にもなるテーマなのです。陳腐で老醜と批判されようとも、ポールはそうした愛の普遍性とその重要性を自覚し、真摯に愛の賛歌を紡ぎ続けてきました。

一方で、ポールはラブソングの主題を「復讐、別れ、欲望など数えきれない主題がある」とも語っています。愛は時に陰湿な姿を見せ、憎悪やつらい想いと裏腹の関係にあります。しかし、そうした愛の両極端な側面があるからこそ、愛は人間的な感情の中核であり続けるのです。

まとめ

ポール・マッカートニーの愛に捧げる歌には、人生の様々な局面での愛の姿が色とりどりに描かれています。若き日の新鮮なラブソングから、深みのある大人の恋愛を綴ったバラード、さらには愛犬への思いにさえ愛の形を見出しています。時に陳腐で老醜と批判されながらも、彼はラブソングこそが人間性の根源的な部分を体現するものと自覚し、真摯に愛の賛歌を紡ぎ続けてきました。

ポールの歌詞の一つひとつには、愛への賞賛と同時に揺るぎない愛の理念が宿っています。愛は人類の営みの根幹にあり、その姿を歌うことは普遍的な価値を持つ。そんなポールの愛の賛歌に込められたメッセージは、今なお多くの人々の心に強く響き渡っているのではないでしょうか???

更に深掘り

大好きな曲だけに更に深掘りさせて頂きます。

ポール・マッカートニーの傑作「Silly Love Songs」 - 恋愛ソングへの回答が生んだ至高の楽曲

ポール・マッカートニーの代表作にして不朽の名曲

1976年3月、イギリス出身の伝説的ロックバンド"ウィングス"のアルバム「Wings at the Speed of Sound」に収録された「Silly Love Songs」は、ポール・マッカートニーのソロ活動における代表作の一つとして長年愛されてきました。同年4月にはシングルカットされ、アメリカでは5週連続でビルボード熱狂チャート首位を獲得する大ヒットとなりました。発売から45年以上が経った今でも、この楽曲の魅力は色あせることがありません。

批評家の"愛の歌"への皮肉に対する賢明な回答

この楽曲のタイトル"Silly Love Songs(馬鹿げた恋愛ソング)"そのものが、当時マッカートニーを取り巻いていた状況を物語っています。一部の音楽評論家からは「単に恋愛ソングばかり書いている」と決して良い意味ではない批判の声が寄せられていたのです。

しかしマッカートニーは、そうした批判に対して「愛の歌は昔から数多く書かれてきた。多くの人々が共感し愛してくれるジャンルなんだ」と賢明に回答しました。楽曲のタイトルとなった"Silly Love Songs"という言葉を逆手に取り、皮肉を込めてそう題したと言われています。

ビーチ・ボーイズ最高傑作「God Only Knows」への憧れ

「Silly Love Songs」の大きな特徴は、複雑に重なり合う歌声の美しさにあります。この点では、マッカートニー自身が「史上最高の曲」と絶賛していたビーチ・ボーイズの代表作「God Only Knows」からの影響が大きかったと考えられています。

楽曲制作の際、マッカートニーはミュージシャンたちに対して「自由に考えたアレンジを加えてほしい」と伝えており、特にホーンセクションにはアドリブを大いに盛り込むよう促しました。そうした自由な創作の場が用意されたことで、重厚感と親しみやすさを併せ持つ、全く新しい魅力に溢れた名曲が生まれたのです。

長年の人気を誇る不朽の名曲

発売当初、一部の批評家からは「内容が軽すぎる」との評価もありました。しかしながら、マッカートニーの狙い通り、リスナーの共感を呼び、やがては不朽の名曲の仲間入りを果たすこととなります。

2008年には、ビルボード誌による「歴代最高の曲ランキング」で全曲中の31位にランクインするなど、長年にわたり世界中で絶大な人気を誇っています。マッカートニーの無二の人気と才能が凝縮された、史上最高の恋愛ソングの一つと言えるでしょう。

これほどの名曲が、かつては皮肉な批判への賢明な回答から生まれたことは、音楽の醍醐味を感じさせる好例と言えるかもしれません。時を経ても色あせることのない「Silly Love Songs」の魅力に、今なお多くのリスナーが惹きつけられ続けているのです。

他のレコーディング

1976年に、Wingsはライブアルバム「Wings Over America」のために「Silly Love Songs」をライブ録音しました。そしてWings解散から3年後の1984年、Paul McCartneyは映画「Give My Regards to Broad Street」(ヤァ!ブロード・ストリート)のサウンドトラックのために、「Silly Love Songs」を再録音しました。

https://booksch.com/go/me




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