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BOOKLABまでの長い散歩

どんどん冬らしくなっている。昨日までの冬と今この時間、これをあなたが読んでいる時点での冬はまるで別物。日に日に寒くなり、外を歩いていると前触れなくサラサラと雪が降り出す事が多くなってきた。そしてここは札幌。割と雪がよく降る街。まだ積雪は無く、朝にうっすら積もっていても大抵正午には溶けてなくなっている。岩見沢や幌加内はもうマジで冬、雪まみれだ。距離的には近いのに街の景色が札幌とは全然違う。そう、だからこそ限界まで挑戦したい。車を持たない私は自転車でブックオフや古書店を巡ってどこまででも長い散歩をよくする。それも雪に路面が覆われるまでの話だ。あと少ししか残されていない積雪の無い冬の内に、出来るだけ多く、遠くの目当てのお店を訪問したい。その記録。

どうやらBOOKLABという素敵な古書店が北区にあると噂を聞く。早速翌日コートを着込んで出発。若干迷ってぐるぐるするも1時間ほどで到着。

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チラリと青空文庫こと100円棚を見ただけで確信。「こりゃー当たりだ」珍しい事に本に混ざってDVDまである。しかも最初に目に飛び込んでくるのが60年代の伝説的なロックフェス・ウッドストックのライブ映像を収録した公式のソフト。しかもレンタル落ちなどでは無く、ディスクもDVDRなどで自主制作したものに取り替えられてる訳でもない。純然たる正規品が100円。他にも近年活躍が目覚ましくゼログラビティなどで知られている映画監督、アルフォンソキュアロンのトゥモローワールドまで発見。しかも2枚組プレミアムエディション。勿論これも正規品。サミュエルLジャクソンとベンアフレック主演のチェイシングレーンも発見。書籍では歌人・穂村弘さんの食べ物をテーマにしたエッセイ・君がいない夜のごはんをゲッチュー。新聞のコラムなどで目にして好みの作家だなーと思ってはいたものの、去年盲腸で入院した際に病棟の共同スペースで穂村さんのエッセイを見つけたので読んでみるとすっかり虜に。あの1週間は手当たり次第にめちゃくちゃ本読めて幸せだったな。人生で1番お腹痛かったけど。さて、もうこの時点で今日は100点。欲しかったものが限りなく安く手に入ったが気は抜けない。この時点ではまだ店内にすら入っていない。どうやらここの店舗は100円棚に文庫がゴッソリある。ここもチェケラーしていくぜ。

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文庫が綺麗に陳列されている。しかも本の状態も悪くない。丁寧な仕事を垣間見た。ここでまさかまさかの大発見。というより大失敗か。私は基本的に200円以上で本は買わない。自分が求めているミーハーな書籍なんていずれどこかで安売りされて出会えると思っているから。それでも稀に我慢出来ない瞬間は訪れる。先日思い切って小栗虫太郎・黒死館殺人事件を400円だか600円だかで購入した。日本の三大奇書で所持していないのは残すところ本作だけ。何年もかけて探すも殆ど見当たらずにいたので、二ヶ月前にコロナ後久々に開催された古本市の陽気に踊らされて買ってしまった。それと全く同一の文庫がここでは100円。怪奇小説が好きな誰か良い人に貰われてくれ。

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昨夜放送のEテレ浦沢直樹の漫勉neo・星野之宣さん回の対談会場となったこちらのお店にてサイン発見。可愛い。凛々しい。

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安心感のあるブラウンを基調とした店内は広々していて在庫の陳列も自由。テーマ毎に選分けされている。しかもぎゅうぎゅうに棚に本を詰めるのではなくオブジェのように大胆に大判の写真集や図録が配置されていてセンスフル。

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本の背表紙を見つめているとふとCDを発見。クラシカルな王道ロックや時代遅れのポップスなどを片手間に取り扱う古書店もあるが、天衣無縫のラッパー、まさかの鎮座ドープネスの2ndアルバム・だいぶ気持ちいいねを発見。しかも400円。お安い。うはうはでレジへ向かう。店員さんはどちらも小柄な若い女性だった。北大生にも見えなくない。「800円です」の後に私が購入したものにサッと目をやり「良いもの見つけましたね」と静かにほんのちょっとだけ微笑む店員さん。分かってくれますかこの喜びを。気持ちの良いサービスってこういう瞬間だよなーとしみじみ心の中で独りごちる。「多分鎮座の事だよな。いやウッドストックの可能性もあるし読書家なら穂村さんのエッセイか?」とぐるぐると頭の中を駆け巡る言葉と思惑。話すきっかけを貰ったので青空文庫の品揃えの充実っぷりと安さの理由を思い切って訪ねてみた。すると意外な返答が返ってきた。

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https://sai-books.com

他にもやってるんです」なんとこちらの店舗、札幌市内の古書買取専門sai booksさんの実店舗との事。タウン誌に広告がよく出ていて清潔感に溢れた写真が素敵だった印象があります。「またお邪魔しに来てください」と微笑む店員さんにお礼を告げて、また冬空の下に舞い戻る。少しだけリュックを重たくして。

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