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残暑にホラー 骨灰 冲方丁

復活しますと言いながら、すぐ失踪してしまいました😅
いやあ、旦那の家、神道系なもので、お盆じゃなくて秋分の日と春分の日が大事なんですよ。去年お姑さんを見送って、もろもろ私たち夫婦でやらないといけないんですが、旦那は親に任せっきりでよくわかってない人、私は実家が浄土真宗だったので神式わかんないで、手探りで勉強しながらお祀りしております。
うっかり体調を崩してしまったので、もろもろの準備が遅れてしまったので急ピッチで色んなことをやるはめに。ちなみにお頭付きの鯛の手配が意外と面倒(笑)。
それはさておきまして、もう9月も後半、夏とはもう言えませんが、怖い話はまだ暑い間に終わらせてしまおうと思いまして本日はこちら。

第169回直木賞候補作! 進化し続ける異才が放つ新時代のホラー。

大手デベロッパーのIR部で勤務する松永光弘は、自社の高層ビルの建設現場の地下へ調査に向かっていた。目的は、その現場について『火が出た』『いるだけで病気になる』『人骨が出た』というツイートの真偽を確かめること。異常な乾燥と、嫌な臭い――人が骨まで灰になる臭い――を感じながら調査を進めると、図面に記されていない、巨大な穴のある謎の祭祀場にたどり着く。穴の中には男が鎖でつながれていた。数々の異常な現象に見舞われ、パニックに陥りながらも男を解放し、地上に戻った光弘だったが、それは自らと家族を襲う更なる恐怖の入り口に過ぎなかった。

Amazon商品ページより

いかにも現代的な道具立てから始まり、都市伝説的なホラーかな、と思いきや、どうしてどうして、日本独特の“穢”と祭祀が根底にあって厚みのある展開のホラーでした。
とはいえ、その辺りのことはそれほど深く掘り下げられず、光弘がどんどん“それ” に侵食されていく様をメインにお話は進んでいきます。
穢れを灰に結びつけたところが面白い。何度も大火にみまわれた江戸の町、そして関東大震災、東京大空襲。死の穢れが灰となって土壌に染み込み、その穢れに触れた者は火の災難にみまわれる。穢れはその怨念を晴らすために祟りをなす力を得るために穢れに触れた者を侵食し、贄を求める。穢れに触れた者が喪くした者の姿を借りて。
光弘は始めは半信半疑で、祟りなんて馬鹿馬鹿しいと思っているんですが、“何か”が自分に纏わりつき、そして守るべき家族がいる家にまで“それ”がついてきてしまったことを感じ、そして次々に起こる不可解で恐ろしい出来事を目の当たりにし、祟りを信じざるをえなくなっていきます。
そして地下の祭祀場を管理し、明治の頃から東京の土地の穢れを鎮めてきた玉井工務店。水神の力を借りて骨灰の穢れを鎮めてきた彼らから話を聞き、光弘は自分がその穢れに触れてしまった上に、儀式の邪魔をしてしまったことを知るのですが、ここから一気に怒涛の展開になっていきます。怖いんですけど先が気になって仕方ない状態(笑)。
光弘がどんどん壊れていっているのはわかるんですが、玉井工務店の荒木からお守りをもらったりしてなんとか家族は守れるのかな、と思いきや……。
ネタバレになるので書けませんが、荒木にまつわる事情が明らかになってくると、うわー、うわー、光弘、アレやったら絶対あかんかったやん!!なことがわかってきてさらに恐怖が加速します。
紆余曲折あって最後は鎮めることができて解決で終わるんですが、でも穢れそのものを消すことができたわけではないので、いつまた骨灰が人を魅いろうとするかは……なんですよねえ。
冲方丁さんはそんなに沢山は読んでいないんですが、やはりストーリーテラーでぐいぐい読ませてくれました。
掘ろうと思えば民俗学的にいくらでも掘れそうな題材なんですが、本筋から離れることなくそうしたところは削ぎ落としたような印象です。
光弘がどんどん危うくなっていくところの危機迫る描写がなんといってもすごい。読んでる方はもう、それやったらあかんって!今助かりポイントやったのになんでそっちにいくんよ!とやきもきやきもき。
終盤、光弘が我を取り戻して“それ”と対決するところは、生きている者の強さを感じることもできて、ただのホラーに括れないようにも思います。
さすが直木賞候補になっただけあって、ダレるところもなくラストまで一気読みの面白さでした。
怖い度合でいくと、私的にはソンナニコワクナイヨでしたが、苦手な方にはオススメできないぐらいには怖かったです。
私的に、気づくか気づかないかギリギリの線で忍び寄ってくる系のホラーの方が怖いので、こう、明確に祟ってます!みたいなのはちょっと怖さ薄れるので平気でした。
向こうの目的が明確なので、日本的な題材ではあるんですけど、西洋的なホラーな怖さの方が近いかな。いやいやいや、何がしたいねん!何やねん!みたいなのの方が怖い(笑)
それにしても、こうなると高田和明さんの『踏切の幽霊』も気になってきた。うーん、とりあえず読んで、感想は来夏に持ち越す?
怖いの嫌いな方が多いのに、ホラーの夏にしてしまってすみません😅

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