【ブックリスタ】デザイナーが全社に染み出していくためデザインイベントを開催した話
こんにちは。ブックリスタで働くデザイナーのcremaと申します。
2021年9月に入社し、新規事業開発室で推し活アプリ「Oshibana」やショートマンガアプリ「YOMcoma」のデザインに関わる仕事をしています。
そして、サービスの設計/制作と並行して、社内のデザイナー達のコミュニケーション施策や、他部署のデザイナーに対する認知を高めるような活動を行っています。
ブックリスタの「デザイナーに関する課題感」
この記事を読んでくださっている方は、ブックリスタのことをあまりご存知ないですよね。まずは、会社について少しご紹介させてください。
ブックリスタはソニー(株)※、KDDI(株)を含む4社で設立したジョイントベンチャーで、今年で設立12年目、社員数は2022年3月末時点で約120人です。
※ 現在の株主は(株)ソニー・ミュージックエンタテインメント
電子書籍関連事業をベースに、2020年度以降「エンタメ×テック(知的好奇心×感動体験)」のビジョンの元、新規事業を加速・推進し、さらにコンテンツ事業にも着手しています。
それに伴い「システムの内製化」→「収益性の高い新規事業へのトライ」を強力に進めていまして、エンジニアチームの強化と並行して、UIやUXに関わるデザイナーが2名、グラフィック制作のデザイナーが3名、さらに業務委託のデザイナー2名+1社という体制で仕事をしています。)
社員が約120人という体制で、正社員デザイナーが5名+業務委託デザイナー2名+1社というのはなかなか悪くないバランスなのかもしれませんが、正直なところこれまでの課題は2つありました。
【課題1】社内各部署に所属するデザイナー同士の横のつながりがほとんど無かった
【課題2】デザインに関して他の部署の人と話す機会が少なかった
特に前者の「課題1」に関しては、私が知る限り、以前は「違う部署のデザイナーと話したことがない」という人がいる状況でした。
このような環境を改善し、デザイナー同士が助け合える仕組みを作り、会社のあらゆる部署の人と「お客様の体験を作る視点」で話せるように「じわじわ染み出していくデザインチーム」を作るのが、私の役割のひとつです。
さて、前置きが長くなってしまいましたが、今回のnoteでは後者の「【課題2】デザインに関して他部署の人と話す機会が少ない」の改善に関してご紹介します。
実際になにをやったのか?
ブックリスタでは、2021年からメンバー1人1人がビジネスを考えるきっかけになるような社内活性化の取り組みとして、Zoomによる「社内配信トークイベント」を実施しており、その時々の情勢を折り込みつつ事業に関わるテーマを取り上げていました。
そこで、2022年1月実施のイベントの枠をお借りして、「デザインに関して全社メンバーで考えてみる機会」を作らせていただいたという流れです。
企画する際に気をつけたのは、下記のような点です。
社内でデザイナーと他部署との信頼関係をこれから構築していくところなので、内部のデザイナーだけで内に閉じてしまうような企画ではなく、外部の視点があることで説得力が増すように設計する
減点法で考えるより加点法で考えることで、より多くの人に受け入れてもらいやすいイベント内容とする。具体的には「自社サービスの改善点」について話す企画ではなく「エンタメ系アプリのいいところから学んでいく案」にした
「じわじわ染み出す」戦略をとっていますので、無駄にハレーションを起こさず、楽しいなかにも少しずつ変化を積み増しできるように取り組みたいと考えていました。
こんな考え方に基づき、社内でもファンが多いUX MILKの元主宰で現フライングペンギンズの三瓶亮さんをゲストとしてお招きし、ワークショップとトークイベントの二本立てでイベントを開催しました。
■ ワークショップ
誰かが喋っているのをただ聴くだけのイベントではなく、できるだけ参加型かつ巻き込み型にするため、トークイベントに先立ってFigJamを使ったワークショップを開催しました。
三瓶さんとも相談した結果、電子書籍やコミックアプリの比較だけではどうしても似たりよったりになってしまうので、他分野のプロダクトから考え方のエッセンスを拾うのが良いだろうということになり、「その体験に感心したエンタメ系アプリと見どころ」というテーマを設定。
社内で参加者を募ったところ、デザイナー、エンジニア、PdM合計11名がワークショップに参加してくれました。
「使っていて気持ち良いUI、良かった体験」についてスクショと解説を事前にFigJam上に投稿してもらい、ワークショップ当日は本人に解説してもらいつつ、全員でいくつかの切り口を立てて分類していきました。
実際に出たトピックと分類をご紹介します。
一つ一つの投稿はこのようなカードで構成されていまして…
全体をまとめたあとは、こうなりました。
具体名は伏せるかたちで、各種アプリを観察したポイントをダイジェストでご紹介していきます。
※ あくまで個人の感想ですので、ご了承ください
脳に負荷をかけず心地よいスマホUI
動画鑑賞アプリA
サムネイルのサイズ違いで情報の強弱が分かりやすい。
どの作品も人物写真のトリミングを揃えることでノイズの少ない一覧ページを実現していそう。
動画鑑賞アプリB
などサードパーティのコンテンツもシームレスに表示して再生もできる。
リモコンの上下がタッチパッドライクなUIになっているのも操作しやすい。
動画鑑賞アプリC
動画を開くと自動的にランドスケープ(横向き)で再生スタート。
メッセージアプリD
横スワイプでリプライできるUIのさきがけでは?
ブラウザアプリE
アドレスバーが下部に移動したことでタブ切り替えが使いやすくなった。
UIが下に集中したので、縦スクロール(情報の深堀り)と横スクロール(情報のザッピング)が親指が動く範囲だけで実行できるようになった
マンガアプリF
縦読みマンガ/横読みマンガ両方とも、縦でも横でもスクロール可能になっているUI。ぼーっとしている時に、スクロールの方向を考えることすら意識せずに読み進められる。
マンガアプリG
競合アプリでは「前に戻る(←)」ボタンが左上にあることがほとんどの中、このアプリでは左下に目立つようにあり、分かりやすい。
適切なオンボーディング/案内
防災情報アプリH
利用開始時のパーミッション取得画面が非常によく整理されている。一画面の中で許諾の必要性を簡潔に説明しつつダイアログを出すアクションをユーザーに行わせることで、ストレスを感じにくいのでは?
マンガアプリI
情報量が多くどれから見たら迷うので曜日別のUIが良い。
起動時のスタートを設定できるオプションが、かゆいところに手が届いて良い。
ユーザージャーニーの良きタイミングでカスタマイズを提案しているのが良い。
日記アプリJ
迷うところが一切ない直線的で丁寧なオンボーディング。
最初の日記がチュートリアルになっている無駄の無さ。
コレクションビューとシングルビューが一体化したシンプルなUI。
他者のいる温度感/コミュニケーション
写真SNSアプリK
自分のアカウント名をタップすると、友達だけで交流する別アカウントの作成をすすめるシートが表示される。
SNSアプリL
テキストや写真で情報を得る縦方向の流れをぶった切って差し込まれる「音声によるライブ」を差し込み、人が集まっていることを可視化している。
自分が参加していることが投稿され、さらに人を呼ぶ。
マンガアプリM
読後に作者あとがきが表示され、作者の考えや人格を見ることができる。
コメント欄での意見交流により、作品に対する考えが深まる。
ホラーやミステリーを読んだときの考察を各話の直後で共有し、恐怖を緩和できる。
見たことないような迫力あるコンテンツ
マンガアプリN
フィーチャーされた作品が大きなビジュアル+アニメーション+黒背景とのコントラストで目を惹く。
インタラクションのアニメーションが派手で、作品を読む前の気持ちの盛り上がりに貢献している。
既存のマンガアプリではあまり見ないUIを採用しているが、ナビゲーションは非常にスタンダードな構成なので操作感を損ねていない。
マンガアプリO
縦スクロールで横開きマンガの見開きが縮小されずスムースに読めるよう、縦スクロールしても横方向に動いて表示されるUI。
利用シーンに最適化しまくる
趣味活動アプリP
ジャンルやシリーズを選ぶだけで勝手にカレンダーが埋まっていく
公式情報なので見逃すことがない。
アーティスト軸と対象ジャンル軸で切り替えてカレンダーを見やすくできる
大事なイベントを見逃しにくい安心感が大きい。
ゲーム関連アプリQ
アプリ起動時にもタッチIDの制限をかけることで、子供がこっそりパスワードを見ることを防いでいる。
ショッピングアプリR
バーコードでの商品検索が、紙の本の電子書籍版を探すのにも有益。
マンガアプリR
コインチャージランクのページが新設されたことで、(運営の意図とは違いそうだが)自分の課金額を冷静に見直すことができる。
課金額表示がクリアになることで、計画的かつ長期的にアプリを使おうという意識が生まれる。
フィードバック&エモーション
音楽アプリS
年末に聴いた曲のサマリーを出してくれる。曲で当時のことを思い出す楽しさ。
某サービス管理画面
管理画面に「サービス11周年おめでとうございます」と表示された。業務システムでも「このサービスを何故作っているのか。お客様になにを届けるのか」という原点を思い起こさせてくれた。
ゲーム端末T
すべてのアクションにサウンドが付いて気持ち良いインタラクション。
ローディングのケアが完璧。スケルトンがアニメーションで表示されるので「この順番で処理しているから待ってて」が伝わる。
反応が気持ちいいので、次のアクションを起こしたくなる。
メッセージアプリ
季節のキーワードを入力すると期間限定のアニメーションが表示されるのが地味に嬉しい。
タッチ以外のUI
ゲームアプリU
iPhone 3GS時代からあるスタンドアロンゲームアプリだが、iPhone 13 Pro MAXでも動いて楽しめる。
ジャイロセンサーで操作するiPhoneらしいアプリ。
UIはタッチだけではないことを思い出させてくれる。
このような体験と情報を同僚同士でシェアしあい、日頃自分が見落としていたことに改めて気付かされ、自分たちのサービスに活かせる部分について真剣に検討する良い時間となりました。
■ 配信トークイベント
上記のようなワークショップを経て、いよいよ全社向けの配信トークイベントの開催です。弊社は赤坂にオフィスがあり、その一室にリアルで集まって対談しました。消毒、換気、マスクなどの感染対策を徹底したうえでの実施です。
ゲストとして、フライングペンギンズの三瓶亮さんをお迎えし、MCは弊社社長の村田。ブックリスタのメンバーとしては、PdMの菅野、UIデザイナーの松田、そしてcremaが参加し、ワークショップでの投稿をさらに分類して分析し、5人で討論するスタイルです。
視聴者の皆さんにコメント欄への積極的な投稿をお願いしていたこともあり、質問や感想なども集まって、双方向でコミュニケーションが発生する場となりました。
実施してみてどうだった?
コロナ禍状況でなければオフィスで実際に集まって実施も可能だったと思うのですが、オンライン開催だとどうしても「本当に皆さんがどう感じたのか」は分かりにくいところですね。このようなワークショップを開催したとしても、一日で目に見える成果が出て、魔法のように状況が変わるわけではありません。
しかし、個人的には、ワークショップ開催後のアンケートにて「現サービスで実際にお客様に提供している体験との乖離をどう埋めていくのか」というご意見を他部署からいくつかいただいたことが、とても良い反応だったと感じています(このあたりの課題を解決する施策は別途行っているので、また数カ月後のnoteでご報告できれば!)。
ブックリスタがいま置かれている状況では、とにかく対話を続けて「デザインや体験設計についてみんなで議論できる組織なんだ」という空気を醸成するのが大切です。デザイナーがその「ハブ」になれるよう、地ならしをする日々です。
このイベントを単発で終わらせることなく、全社員誰でも参加可能な「デザインお茶会」を隔週開催して、私からネタを振ったり皆さんから持ち込んでもらったりしながら、「体験やUIを観察/考察して言語化する」機会を定期的に作っています。
そして、「お客様体験を共に作っていく環境」をもっと強化していくつもりですので、泥くさいけど丁寧に積み上げて自分たちの環境もサービスもより良くしていく働き方にご興味あれば、ぜひお気軽にコンタクトください。
ご興味を持っていただいた方は、まずカジュアル面談からでも大歓迎です。マンガとエンタメが大好きなメンバーが積極的にお待ちしています!
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