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【本096】『うしろむき夕食店』

著者:冬森灯 出版社:ポプラ文庫

美味しそうな2匹のエビフライがハートの形をつくってて、その表紙に惹かれて購入しました。それに「うしろむき」という言葉もなんだか興味深いですね。

レトロな洋館の「うしろむき夕食店」。女将の志満さんと不幸体質の希乃香さんが美味しいお酒と料理をふるまいます。このお店には「料理おみくじ」があり、おみくじを通して、それぞれが前をむくヒントをもらいます。常連さんたちも楽しく温かく私もこんなお店に訪れたいと思いました。

「前に前に」進むことを良しとする世の中。でも、目の前に広がるのは新しい地平ばかり。どこまで行けばゴールに辿り着くんだろう、どの道を通ればいいんだろう。と、不安になることがあるでしょう。そんなとき、志満さんは言います。

「ゆたかに生き抜いた日々が積み重なれば、いつかうしろを振り向いたときに、自分にしか歩けなかったゆたかな人生が、必ず、見えるものですよ。」

自分が迷いながらも歩いてきた道は宝物。ときには振り返ってみると、「こんなにたくさん歩いてきたんだなー」って思えるし、自分しか醸しだせない時間を積み重ねてきたって思うかもしれません。

この物語は、ひとりひとりが歩んできたすべての道を全肯定してくれる優しさが詰まった小説です。

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