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生きづらさは変えられる【52ヘルツのクジラたち】感想

初めまして、レイです。

生きづらい人って、実は気が付いてないだけでたくさんいる。これは、そんな人たちの叫びがわかる本だ。彼らの紡ぐ物語に、人生に、君は何を感じることができるだろうか?

繊細な描写が送り出す物語の数々には、思わず引き込まれる。一気に引き込まれて、その世界にどっぷりとつかりこんでしまう。その世界で見るのは、
本当に心が痛く、そして最後にはホッと一息をついて目頭の温かさに安心する。そんな、生きづらさを前面に押し出しつつも、全力で生きる者たちの姿だ。

君にその物語を堪能しつくし、楽しむ覚悟があるなら是非ともこの一冊を手にしてほしいと思う。


概要

「わたしは、あんたの誰にも届かない52ヘルツの声を聴くよ」
自分の人生を家族に搾取されてきた女性・貴瑚と、母に虐待され「ムシ」と呼ばれていた少年。
孤独ゆえ愛を欲し、裏切られてきた彼らが出会う時、新たな魂の物語が生まれる。

52Hzのクジラたち

「52ヘルツのクジラたち」の紹介

誰にも届かなかった声が、誰かに届いたとき、この物語は始まる。今回紹介している「52ヘルツのクジラたち」という作品は、町田そのこ先生によって作成された作品です。

この小説を読んで最初に感じることは、深い共感になります。誰かに自分の声が届かない、という経験はあると思います。だからこそ、この物語の主人公の気持ちは痛いほどわかりました。多分、この感覚には誰もが共感できることなんだと思います。

具体的には、「独りぼっちだ」という感覚。それを、実際に声にして勘定にしてみると、次のようなものだろう。

「私の気持ち、わかってもらえない」
「この声が届いてない、響いてない」

そんな感覚。この経験があれば、きっと理解してもらえると思います。そして、その共感を繊細な描写が如実に表現している。その細かく丁寧な描写に、思わず引き込まれると、この作品を涙なしに見ることはできないだろう。

見ていると「痛々しい」と感じるかもしれないが、そんなあなたはきっと、彼らの「心の奥にある芯の強さ」に気が付くだろう。その芯の強さに触れると、今にも壊れそうな感じがする。触れると儚く飛散してしまうガラス細工のような、そのむき出しの心に触れる。それは、現実世界では酷く恐ろしいことだ。

だが、この作品ではだれもが「届かない声」に悩んでいる。だからこそ、そのリアルな心と、悩みをさらけだし、本気で向き合おうとしている。
それが許容される、優しい世界なんだ。現実にはそんな世界があるとかないとか、そんな無駄な議論をしても意味がない。

この作品は、非常にリアリティが高く心の奥底にスッと入り込んでくる。まるで現実に、その問題が目の前にあるかのように錯覚する。だが、残念だがこの作品はフィクションなのだ。そこにケチをつけているようでは、本書を堪能できてないだろう。

52ヘルツのクジラたちを100倍楽しめ

この小説を文字通り100倍楽しむには、この小説を2巡すればいい。もしもあなたが、一回目を読んだ時点で「涙が流れて、人にやさしくしたいと思った」と。そう思えたならば、君は時間をおいて、心が落ち着いてからもう一度、この小説にトライしたほうがいい。

僕は小説を読むことで、「新しい世界に触れて、心を豊かに養うことができる」と考えている。誰かの物語に触れて、君は自分以外の人生を丁寧に描いた作品を堪能する。それだけで、君はその主人公や登場人物を魅力的に思い、自分では想像もしなかった世界に触れる。その触れた世界を追体験して、自分の心を知らぬ間に豊かにしているのだ。

この小説を読めば、誰もが一つの事実に気が付くだろう。「自分が気が付いていないだけで、届いてない声に溢れている」という事実に。その事実を受け入れて、「ちょっと意識してみようかな」と思った瞬間に、あなたの人生はこれまでの価値観から、視点から少し変わる。

その少し変わるの積み重ねが、人の人生を変える。その視点を持って、気が付いた自分の心音に従って、この物語を再度見てほしい。すると、「気が付かなかったSOS」に気が付くかもしれない。もしかしたら、「共感できなかった一文に深く共感できる」かもしれない。

それは、この物語を二巡しなければわからないのだ。この物語を100倍楽しむ最強の方法は、ただ「物語の主人公たちにどれだけ寄り添えるか?」であると思う。

だから、一度読んで満足せずにもう一巡してほしいなって思います。

感想

この小説を初めて読んだ時に感じたことは、「あ、これは僕だ」ということ。僕はふさぎこんだ時期があり、まさに「52ヘルツのクジラ」だった。そのクジラ時代に、救ってくれる人がいたらと思うと、もう涙なしには見ることができなかった。

この作品を読むうちに、グッと引き込まれている自分に気が付いた。それは、抑えようのない感覚だ。繊細な描写は主人公たちの葛藤だけではなく、その成長してく姿も、きれいに彩り映し出す。そのむき出しの感情に触れてしまうと、思わず「そうだよね」と口にする。
それほどまでに、僕はこの物語の主人公たちに感情移入していた。本を読んでいるとまれに起こる現象だと思うが、この本ではその感覚がひときわ強かったように思えた。

支えあい、分かち合い、現実に向き合う。一人では無理でも、誰かが横に寄り添い、一緒に悩んで葛藤してくれる。「分かち合う」というのは、本当に重要なことだと思う。この物語は、二つの物語が交差した瞬間が、一番その真価を発揮するのだと思った。二つの、二人の物語が交差したときは、思わず声を出してしまったほどだった。

この物語を読んで、「人にやさしくしたい」なんて思いはなかった。だって、それは難しいから。人に優しくするには、自分の精神状態に余裕があって相手の悩みなどを、しっかりと受け止めることができる隙間が必要だ。

だけど、僕は「寄り添って悩む」ということはできる。それは、得意なことだと思う。だから、僕は「誰かの悩みに寄り添える人間になりたい」と思った。

これも、簡単なことではないだろう。だが、やってみたいし、そんな人間でありたいと。そう思った。

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