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芥川龍之介の教える婚活のススメ

ーーー私たちはどのようにしてパートナーを選ぶのだろう。

自分の好みに適った、社会的にも成功しているすばらしい異性で、家族の全面的な賛同を得られる人であればOK!

そこまで完璧であれば文句はない。でもそんな人はいったいどこにいるのだろう?

むしろ、「この人イイな」って思ったとしても家族に大反対されたとか、家族がメッチャすすめてくる人がなんとなく自分にとっては嫌だったりとか、そういうのばっかりではないだろうか。

芥川龍之介の小説「河童」より。今日は、河童の世界を通した現代の結婚制度の風刺をお届けしますーーー


下の記事の続きです。↓


芥川龍之介「河童」より。とあるポスター。

お産のお話をしたついでですから、僕がこの国へ来た三月目に偶然ある街の角で見かけた、大きなポスターのお話をしましょう。

街角の壁に貼られた、その大きいポスターの下にはラッパを吹いている河童だの剣を持っている河童だのが十匹くらい描いてありました。それからまた上には河童の国の文字が一面に並べてありました。この文字を翻訳すると、だいたいこんな意味だったのです。

遺伝的義勇隊を募る!!

健全なる男女の河童よ!!

悪遺伝を撲滅するために

不健全なる男女の河童と結婚せよ!!


僕はもちろん、その時にも人間界ではそのようなことが行われないことを友達になった河童のラップに話して聞かせました。すると、ラップばかりではない、ポスターの近所にいた河童はことごとくゲラゲラ笑いだしました。

「行われない?だってあなたの話ではあなたがたもやはり我々のように行っていると思いますがね。あなたは令息が下女に惚れたり、令嬢がおつきの運転手に惚れたりするのはなんのためだと思っているのです?あれは皆、無意識的に悪遺伝を撲滅しているのですよ。第一、この間あなたの話した、あなた方人間の義勇隊よりも、(一本の鉄道を奪うためにたがいに殺し合うような義勇隊ですね)、そういうのに比べれば、ずっと僕たちの義勇隊は高尚ではないかと思いますがね。」

ラップは真面目にこう言いながら、しかも太い腹だけはおかしそうに絶えず波立たせていました。

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(青空文庫 芥川龍之介「河童」より)


考察 ~本能と社会の狭間で、僕たちは苦しむ~

「結婚相手として最適なのは、同じような境遇で、同じような知性で、同じような金銭感覚の人である。」

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