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ショートショート集

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不定期に作っている超短編小説を綴ったものです。極めて短いものばかりなので、気軽にお読みください。
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記事一覧

【ショートショート】電脳もぐら

【ショートショート】電脳もぐら

 「電脳もぐら」を知っていますか?電脳とは電子頭脳の略です。つまり電子頭脳をもつもぐらのことを電脳もぐらといいます。

 電脳もぐらは電子計算機の中で生きています。0と1でできたデジタルの土に穴を掘りながらその中にいるワームを探しています。

 ワームは電脳もぐらの大好物です。ワームは土の中のデータを食べて、体を太らせ、分裂してどんどん増殖します。そのようにプログラムされているのです。

 電脳も

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【ショートショート】虫の知らせ

【ショートショート】虫の知らせ

私は畑の世話がしたかったのだが
Eさんから
田んぼの水がオーバーフローしているので畦の嵩上げをした方がいい
と言われた

しかし
やはり畑の世話がしたかったので
畑の道の草を刈り
トウモロコシの収穫をし
シソを収穫して
サツマイモの周りの草を刈っていたときに
スズメバチがわたしの周りをホバリングした

スズメバチがわたしのことを刺すことはないと思ったが
田んぼに行こうと思い立った

田んぼに移動し

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【ショートショート】しっぽがあった頃

【ショートショート】しっぽがあった頃

最近、面白いものが売り出された。
しっぽがあった頃を思い出すことができるデバイスだ。

このデバイス、ベルト状になっていて、腰から少し下に装着する。

すると、尾骶骨あたりを刺激し、あたかも自分のおしりにしっぽがあるような感覚になるのだ。

ゴーグルを着けると、このデバイスを着けている人に仮想しっぽが生えているように見える。

私はとても不思議だった。

しっぽは進化の過程で不必要になったから、退

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【ショートショート】真夜中の冷蔵庫

【ショートショート】真夜中の冷蔵庫

夜中に唸る冷蔵庫

なぜ君は唸っているんだい
僕はたずねた

君のためさ
彼は応えた

君の飲みものを冷やすためさ

僕は今のところ冷えた飲み物が欲しくないし
第一君のおなかのなかは空っぽだぜ
と僕は言った

でも君は僕のコンセントを抜かないじゃないか

彼は寂しそうにそう言って
唸り続けた

僕は少し申し訳ない気持ちになったが
実際お願いした覚えはないので
放っておいた

突然彼は唸るのをやめ

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【ショートショート】バベル

【ショートショート】バベル

星のいたるところで、
塔が建ち始めた。
より大きな塔を建てるためには
より広い土地がいるので、
小さな塔を取り壊して、
更に大きな塔を建てた。
無数にあった塔は次第に巨大に、
少数になっていった。

巨大さに取り憑かれた人々は、
世界中からあらゆる資材を集めて、塔の一部にしていった。
そしてその巨大さを見ては、ため息をつき、自分の小ささ、無力さを感じるのだった。
過酷な労働に疲弊し、精神を蝕まれ、

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【ショートショート】へそのいと

ある日道を歩いていると
ふわふわと体が浮きだした

手足をじたばたさせてももう手遅れ
ぼくの体はどんどん高く浮いていき
街はどんどん遠くなった

雲を抜け
青い空を抜け
暗い宇宙へでた

やっと体がとまったとき
青い地球ははるか遠くに見えていた

宇宙に出てから
ずっと鼻と口を塞いで
息をとめていた

でも限界になって
口を大きく開けた
全然苦しくない

気がつかなかったが
おへそから白い糸が出て

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【ショートショート】眠る父娘、電子レンジ

【ショートショート】眠る父娘、電子レンジ

夜中の3時、1台の車が停まる。
闇夜の中なので、色は濃いグレーにしか見えない。古いセダン車だ。
男が一人、車から降りる。

二階建てで、横長、小さなアパートくらいの大きさの建物。一見倉庫か工場のように見えるその建物の窓は各階に3つずつあり、ドアは各階の側面に1つずつしかない。二階のドアに向かう屋外階段を登り、ドアを開ける。

中は一間しかないが、入り口付近の壁と、中央にオイル式のランプがかかってい

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