10年目からのスタート-OKAMOTO’S “LAST BOY”


2019年6月27日、10年間音楽を愛し、自分たちがかっこいいと思うものを追い求め、作り届け続けてきた4人の少年たちが初めて日本武道館の舞台に立つ姿を見た。

OKAMOTO’S。“最強の10代”と称されてデビューした4人。
10年の活動の中で8枚のアルバムリリース、47都道府県ツアー、海外公演、その他たくさんのツアーやフェスで全国に音楽を届け続けてきた。さらには各個人の幅広いフィールドでの活動。素人目で見てもこの活動量はすさまじいものである。
近年デビューして間もないアーティストが武道館公演ソールドアウトしたというニュースはよく聞く。
しかし彼らの武道館はそうではなかった。10年間地道に丁寧に音楽を届け、ファンを着実に増やしてたどり着いた場所だった。

昨年11月、東京でのホール公演直後に発表された武道館公演。
驚きと感動が押し寄せながら何としてでも見たいという気持ちで急いでチケットを取ったのを覚えている。
それから約7か月間メンバーもファンも武道館を目指して走っていた感覚がある。

「ソールドアウトが目標です」と言っていたチケット。実現するか本当に不安だったという言葉を当日のMCで聞いた。
公演の約1か月前にソールドアウトのお知らせを見たときにスマホを持つ手が震えたことを思い出した。
何かのファンになってあれだけ嬉しかったことは私の中では初めての経験だった。

武道館に先駆けて行われたアルバム“BOY”のリリースそして10周年記念ツアーの20公演。ここでも彼らは進化を見せていた。
BOYの収録曲を中心にこれまでのリリース曲を散りばめて展開されるセットリスト、随所にみられるライブアレンジ、そしてライブと同じ熱量で盛り上がるMC。どこをとってもこれまでのツアーの中で最高の盛り上がりだったし最高のライブだった。
私は2週間という短いスパンで2公演参加したがこのわずかな間にも確実に進化していた。
“最新が最高”という彼らの言葉はいつだって偽りがない。
そして武道館への期待値は否が応でも上がった。

グッズが発表され、公演当日が近づくにつれて“そわそわ感”が私の中には漂っていた。本当にOKAMOTO’Sが武道館の舞台に立つのか。と信じられない気持ちもあった。
前日、メンバーがそれぞれSNSなどで武道館公演について発信しているのを見て一気に現実なのだと実感した。同時に「明日が来たらこれまでの期待や胸の高まりはなくなってしまうのか」と少し寂しさも感じた。私の中でこんなにもOKAMOTO’Sが武道館に立つということが嬉しく待ち遠しいものであったのだとこの時初めて分かった。


公演当日。会場に入ると確かにステージ上には見慣れたセットが組まれ、ギターとベースのアンプの上には太陽の塔がいる。これからここで大好きな4人が大好きな音を奏でるのだ。そして私と同じように、それ以上にOKAMOTO’Sを応援するファンの方がこんなにもたくさんいるのか。と開演前から感動した。

暗転しツアーでも耳にしたオープニングSEが流れる。スクリーンには彼らのこれまでの映像が流れる。ステージに4人のシルエットが現れ“Dreaming Man”の演奏が始まる。スピーカーから出る音の大きさも歓声の大きさもステージと客席の距離も彼らが回り続けたライブハウスとはけた違いである。それでも確かに武道館でOKAMOTO’Sの音が鳴っていた。
鳥肌が立ち、自然と涙が流れていた。これは現実なのだ。OKAMOTO’Sは今、私の目の前にあるステージで歌っているのだ。涙が止まらなかった。

そして彼らは会場が大きくなっても“いつも通り”を貫いた。
ツアーと同じセットリストで同じ機材、同じ編成。丁寧に音楽を作り、届け続けてきた10年間を証明する圧倒的な存在感と安定した演奏力。そしていつも通りの長時間に及ぶトーク。なにひとつ違いはなかった。
広い会場の左右ギリギリまで走って音を届ける3人とコーラスに間に合わせるために急いで定位置に戻る2人の姿、そしてMC中に上がった炎とバンド名をかたどった看板。広い会場での特権である特別な姿は美しかった。
ライブハウスからホールそして武道館へ。10年かけてManへと羽ばたくLAST BOYの姿をみた。


これまで私はあらゆる局面でOKAMOTO’Sの曲に助けられた。自分が大切に思う音楽を誰かに否定されたとき、押しつぶされそうになったとき、人生の選択に悩んだとき、どんな時でもOKAMOTO’Sの曲は私の背中を押し、新たな一歩を踏み出させてくれた。
そんな日々のことを思い出して心が震えた。

そしてライブも終盤に差し掛かったショウさんのMC。
「俺たちが10年間やってきたことは間違ってなかった。」
「このバンドを続けている限り心のどこかにBOYがいる」
「なるだけうそをつかずに正直にピュアに素直にかっこいいものを作ってきた」
こう語りながら、目を潤ませる姿を見た。

最強の10代がデビューしてから10年間、ここまで来るのにどれだけの苦悩と葛藤があったのだろうか。同世代のバンドが休止したり、解散したり、なかなか芽が出なかったり急成長してきたり。私には計り知れない。それでも彼らは自分たちを信じてかっこいい音楽を届け続け、常に最高のパフォーマンスをしてくれる。そしていつも4人が一番楽しそうなのだ。だからこそあの日のあの涙は強いものを感じた。

そこから演奏されたDancing Boy。OKAMOTO’Sに出会えて本当に良かった。自分がかっこいいと思う音楽を追いかけ続けてよかった、そして何よりこの日この舞台をこの目でみることができてよかったとまた涙が止まらなかった。

アンコールでのDOOR、Beek、90'S TOKYO BOYS。4人のこれまでとこれからを物語るにふさわしい3曲を奏でて OKAMOTO’S “最初で最後”の武道館は幕を閉じた。

前日に感じていた寂しさは全く感じなかった。武道館での4人の姿や「まだやりたいことはたくさんある」「絶対バンドやめないからな!」という力強い言葉、そして彼らのデビュー当時からの目標 “世界制覇”。 Boyの心を持ったままManへと進化した4人はこれからがスタートなのだ。その姿を目に焼き付けたい。彼らならば絶対に裏切らない。つぎはどんな面白いことをやってくれるのだろう。期待にあふれていた。


2019年6月27日 木曜日。わたしはこの日を忘れない。

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