無観客の奇跡「マヂカルラブリーno寄席」を観て、地下芸人の面白さが少し言語化できた。
1/1に配信された「マヂカルラブリーno寄席」が、オンラインながらチケットが爆売れ。配信期間も延長する異例の大盛況となっている。
この寄席で注目されたのは、無観客を逆手に取った芸人達からのガヤである。
特に、いわゆる地下芸人と呼ばれるような少し理解しにくい不可解の笑いとの相性が良く、中でもランジャタイのネタは口コミでも大盛りである。
ガヤの力、自分がお笑いに組み込まれる力は凄まじいものがあると、改めて感じさせられた。
▶無観客の配信ライブの弱点
何でもそうだが、テレビなどの媒体を通すよりも、ナマモノは直接舞台で観た方が面白い。
演劇でもお笑いでも、目の前で観た時の迫力や空気感は段違いである。音によって震える空気。体感温度が変わるような空気。とにかく空気の変化が媒体を通してでは感じられない。
配信ライブだってもちろん面白いのだが、やはり現場に比べたら見劣りしてしまう。
さらに、無観客であることも大きな問題だ。
特にお笑いにおいては、「つられ笑い」「笑いやすい雰囲気」がかなり重要である。そのため、お客さんがいない静かな会場の映像だと、ただでさえ現場にいない分だけ面白さが伝わりにくいのに、さらに笑いにくくなってしまう。
コロナ禍の新しいエンタメの形の中で、お笑いにおける無観客配信ライブは大きな壁でもあったと言えよう。
そんな課題を、ある種解決したのが今回の「芸人のガヤ」であった。
お客さんのいない客席に、出番前もしくは出番終わりの芸人が座り、お客さんの代わりとなって笑う。
これは今まででもよくあったことだが、さらに「それなりの声を張って野次を飛ばす」というガヤが加わったのが新しい。
よくバラエティ番組では、事前に用意された映像を見ながら、スタジオの芸能人がコメントをするワイプ芸や、大勢でトークをする際に、一言二言ツッコミを入れるようなガヤ芸(FUJIWARAのフジモン、アンタッチャブルのザキヤマなど)が多用されている。
それを無観客配信ライブでも行ったのだ。
本来ならば、芸人がネタという作品をやっている時に、笑い声以外の言葉を放つ事はルール違反だろう。
我々が笑い声として発していた「おかしいよ!」「なんだそれ!」をそのまま言ってしまっているのだ。
さらに、その発言内容は芸人ならではの鋭い感想や野次であり、まさにガヤ芸といえるような言葉選びやタイミング、言い方なのだ。
そのため、普段バラエティ番組を見ている時のような自然な面白さが、無観客配信ライブでも味わえたのだ。
そして、その逆転の発想やタブーへの笑いが、彼らのネタをさらに面白く感じさせてくれる。
▶地下芸人の面白さ
そして、このガヤもとい野次は、地下芸人の面白さを分かりやすく解説してくれていた。
(ランジャタイが果たして地下芸人なのか?という疑問はあるが、)好みが分かれるような奇抜なネタをするランジャタイに、多くの人が爆笑した。
ランジャタイのネタにポカーンとしてしまう人も、「非常に笑った、彼らのネタの見方が分かった」と言っている。
まさに神回といっていいほど、ランジャタイと野次の組み合わせは抱腹絶倒だったのだ。
いわゆる地下芸人ネタ、シュールとも言えないよく分からないアングラなネタを面白いと思う人は決して多くはないだろう。
ただ、ハマると抜け出せないようなそんな沼である。
私は昔から地下芸人ネタが大好きなのだが、何が面白いのか?と言われるとなかなか説明が難しく、「意味不明で分かんないのが面白いんだよ」というフワフワした回答しかできない。
ランジャタイのネタも、一般的な型の漫才に慣れていたら意味が分からなさ過ぎて「悪夢かな?放送事故かな?」というような感じなのだが、そこが面白いと思えるかは人によって違うと思う。
しかし、今回の野次とのコラボは、その「意味不明」にある種ツッコミを入れる形で、受け入れやすい漫才に近づいていた。
私が意味不明な漫才を見て笑うのは、「なにしてんのこれ?ひどいだろ!何考えたらこうなるんだよ!頭イカれてるのか!……」と心の中で野次を飛ばしているからである。
ボケ×ボケの相手をする人というツッコミ不在のネタに、野次を入れる視聴者というツッコミがいることで面白い。
つまり、私は、地下芸人のネタを見ながら、彼らの一員としてツッコミを入れて、皆で一つのネタを作っているのだ。
ネタの構成員として自分が参加するからこそ、沼が深い。必然的に自分の感性のバイアスが高くなるから、笑わない人と笑う人の差が出るものなのだ。
今回の野次を見ていたら、地下芸人の面白さってこういう事なのかな?と思った。
私は、今回は出演しなかった小梅太夫のファンなのだが、彼の全く意味の分からないネタで捩れるほど笑ってしまう。
彼のネタがただ単に「意味不明……」て終わっている友達数人と、「〇〇かと思ったら〜」の後に続く「△△でした〜」を当てるゲームを行ったらめちゃくちゃ爆笑してくれた。
これも、小梅太夫のネタに対して、「そんなわけないじゃん!考えるだけ損だわ!」という自分達がツッコミの役割を果たすという事を、分かりやすく表したゲームだと思う。これによって友達は小梅太夫の面白さに気づいてくれた。
ガヤや野次というようなツッコミを自分の中に生み出すことで、一緒にネタを作り楽しむことができる。そんなお笑いの楽しみ方も乙なものである。
▶まだ観ていない人は是非!
この沼が深いライブ、まだ観ることができます!
なんと配信ライブでは異例のチケット1万枚の爆売れにより、1/10まで延長しました。
初めの30分ちょっとは待機時間なので飛ばしてOKなのと、野次を楽しむためにイヤホンで視聴することをオススメします。
新年早々、伝説のライブを観てしまった。
この好評を受けて、「地下芸人と野次ライブ」みたいなものをやってくれたら面白そう。
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