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文献の読み方

はじめに

お茶はいかが?
日々乃 夢です。
今回は、大学院生の日常ともいえる文献を読むことについて書きます。

 大学院に入る前、まずは興味のある分野を知るためには何をしたら良いかというところから考えました。特に私の場合、卒業した大学と進学希望先の大学院での専攻分野が全く異なっていため、受験生としてゼロからの学び直しでした。その上、1人で黙々と受験生活を送っていたので、「他の大学院受験生はどのような勉強をしているのだろう?」と思いつつ、よく分からないままでした。

文献の読み方を使い分ける

 大学では、与えられた教科書(専門書)を中心に、興味のあるニュース記事や短い論文に目を通すことはありました。しかし、大学院で専門的に研究を行おうとする際に何をしたら良いのかさっぱり分かりませんでした。
そこで、以下の手順で文献を読み進めました。

①書店に行って(あるいはネット書店)興味のある分野の棚を見る
➡分野ごとの棚に、最近出た書籍や基本知識を学べる書籍が並んでいる

②Google scholarを利用して、興味のある分野の研究の歴史をざっと学ぶ
➡日本だけではなく、世界中の文献から自分の関心分野を探すことができる

③関連していると思われる論文を5~10本読む
➡複数読むことで、関心分野の中の未解決の課題や既に何度も繰り返された議論が見えてくる

④論文で引用されている筆者を確認する
➡複数の論文を読む中で、必ず登場する筆者がいることに気づく
➡その筆者は、自分の関心分野の中で重要な研究者である場合が多く、分野を築き上げた人であったり、新しい理論を創出した人であることが多い

 このように、文献を読むことはまず「関心分野の基本知識とは何か」を知ることだと思います。分野によって、知っておくべき前提知識や専門用語は全く異なるため、「何を最初に知るべきか」を知ることはとても大事なことです。研究背景の「当たり前」を知らないと、自分がしたい研究が分からず、その研究が既に議論されたことのあるものか、まだ議論されていないかも分かりません。
 まずは、PDFで読める短い論文(10~30ページ程度)から始め、書籍にまとめられた論集(200~400ページ)、最後に辞書のような大きさの専門書(600~800ページ)と、読む分量を増やしていくことも良いかと思います。いきなり長文を読むのは大変ですし、分厚い専門書を読むにはある程度の知識が前提となるので、私はこのように徐々に分量を増やしていきました。

文献を読むことが億劫な時

 毎日継続して同じ分量の文献を読み続けられれば良いのですが、なかなか読む力が湧かない日もあります。
そんな時は、以下のように研究を進めます。

①要旨と参考文献だけにざっと目を通す
➡何か興味を惹かれれば、想像より長く机の前に座っていられるかもしれません

②結論を読む
➡「なぜこの結論に?」という疑問から本文を読もうという気になるかもしれません

とはいえ、そもそも文献を読むことが億劫な状態から始まっているので、このような日はどうしようもない場合があります。
研究に熱意を持ち続ける方法を編み出すこともまた、1つの研究課題かもしれません。
 色々なことが起きる日々の中で、どのように研究に時間を割り当てるのか私はまだまだ模索しています。

溜まった文献は時々見返す

 このようにして、文献を読んでいると当然ながら文献が溜まってきます。
私の場合、文献は紙で読みたいので、基本的には印刷してファイルにまとめます。そのため、放っておくと部屋が紙だらけになってしまいます。
そして、片付けも得意ではないので、あちこちに文献が散乱してしまいます。

 そこで、散乱した文献を時々見返しながら整理するようにしています。これは、ただの片づけではなく、自分がどのような文献を読んできたのか、どういった傾向で読んでいるのか確認する作業でもあります。
文献整理の方法は以下のようにしています。

①ファイルに見出しを追加して、テーマごとに文献を分類しておく
➡同じ分野でも細かくテーマが分かれている場合に便利

②自分にとって最重要文献は、すぐに出せるようファイルの手前にしまう
➡これは研究段階によって変わりうるため、時々入れ替えたり追加したりすると便利

③実際にレポートや論文に引用する文献は、読んだ段階で文献リストにしておく
➡提出直前にリストを作成するのは大変で、時間がかかる上に記載漏れがある可能性が高いので、読んで引用した時にすぐリストに追加すると便利

④気になった文献は何度でも読む
➡一度、二度、三度と読んでも、新しい発見があるところが文献の面白いところ。時期を変えて、何度も読むと思わぬひらめきが浮かぶかもしれません

おわりに

 文献を読むことは、誰かが考え抜いた言葉や理論に触れることだと思います。それ故に、書いた人の姿を思い浮かべると気が引き締まって、文献を読みながら、作者に出会うような体験をします。
この点は、一般の読書とやや近い体験かもしれません。

 研究の場合、批判的に文献を読み込んだり、その文献に頼って自分の研究を始めたりするので、あまり気楽に読めない時もあります。
解決しない山積みの課題にがっかりしたり、何から取り組んだら良いのか分からなくなってしまったり…

 それでも、今日までに誰かが積み上げた研究の後ろに、さらに積み上げられた研究がある、ということによって自分が研究を行えるという点は忘れずにいたいと思います。