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「移民と健康」を考える

オンライン研修に参加してみた

国立研究開発法人国立国際医療研究センター(National Center for Global Health and Medicine:NCGM)が提供しているオンライン研修を受講した。

NCGMの国際医療協力局(Bureau of International Health Cooperation)は、途上国の人々の健康を守るために、主に母子保健、疾病対策、保健医療人材、医療の質、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジの分野で、さまざまな支援を行っており、日本国内の保健人材育成のための研修を提供している。

私自身は開発援助の仕事柄、現地で保健セクターの案件を担当したことはあるが、保健・医療のバックグラウンドはないし、今後も特にそこでの専門性を深めていくという予定はない。

それなのに、なぜ今回研修に申し込んだかというと、
テーマにとても興味があったから。
今回のテーマは「移民の健康〜Migrant and Health~」


日本における「移民」

日本では、基本的には「移民」は受け入れていない、というスタンス。
ただ、近年は自分自身の肌感覚としても外国人居住者(在留外国人)が増えてきていると感じるし、技能実習制度や労働者不足に伴う外国人の受け入れの可能性、そしてグローバル全体の潮流からも日本に住む外国人は今後も確実に増えると予想される。
移住の理由や法的地位はなんであれ、母国を離れ、定住する国を変更した人々を「移民」と定義するならば、日本にも相当数の移民がいる。

そんな中で、移民の健康あるいは保健医療にかかる問題も様々報道されている。

https://toyokeizai.net/articles/-/617089

移民と言っても色々なタイプがあるが、社会的な地位が不安定だったり、地域社会・日本社会に馴染めず、孤立を感じている人は、何かしらの保健サービスが必要な状態になってもリーチできない状況に陥りやすい。

日本の公的な保健医療サービス

日本の医療サービスの質は高いと言われているし、
外国人でも然るべき手続きを踏めば、皆保険制度の恩恵を受けることができる。
しかしながら、現在日本の行政での外国語での情報提供は限定的だったり、
日本人ですら理解しにくい「単語」や「制度」が壁となる。
実際の医療の現場でも、マルチ言語(英語以外の外国語)対応は容易ではないし、
行政から正確な情報を入手する以前に、FaceBookなどの馴染みのある情報源から「正しくない情報」に惑わされるケースも多い。
そもそも、「然るべき手続き」を踏むことができない人もいる。

現在日本の人口の2%超えが外国人(移民)だ。
決して少ない数字ではないけれど、2%の人に対応するためにどれだけのリソースが割り当てられるのだろうか?

保健医療のサービスは基本的に地方自治体の所管で、
サービス拡充に対応できるパワーや財源は個々に異なるだろうし、外国人居住者の割合も様々な状況で、全自治体に同等の対応を求めても、難しいだろう。

自治体やNPOの取り組みからさまざまなGood Practiceが出てはきているが、
移民本人の住む場所によって対応が異なり、結果として本来享受できるサービス受けられない状況になってしまうのは未だ避けられない。

現場での実装には様々な問題があるとしても、
今後ますます増える外国人居住者への対応として
まず「国」として、ポリシー・ガイドラインを持つこと、実際のサービスを提供する各自治体が何かしらの「アクション」を起こす助けになるとは思う。

Healthy Migrant Effect 

今回の講座で初めて知った言葉:ヘルシー・マイグラント効果

移民の健康状態は移民先の国の国民の健康状態よりも良い(健康な人が働きにくるため)という現象であり、疫学的パラドックスとして知られる説である。

さらなるデータ調査や研究が必要な分野ではあるが、
概して移民の方がその国の住民より長生きになるらしい。

多少背景は異なるが、私自身のケースを考えてみた。
確かに海外(特に途上国)に駐在しているときは、日本にいるときの数倍健康管理には気を遣っていると思う。

日々病気や怪我をしないように心がけることはもちろん、
体調に変化があったら、用心深く観察して早めに休養をとったり、
程度な運動、食事の栄養バランス、睡眠の質と量という基本的な項目に気を使った生活心がけている。

どこかで「できるだけ外国での医療サービスを受ける場面を避けたい」という意識があるのだ。

その意識の背景には、

  • 言語による意思疎通に自信がない(特に具合が悪い時に外国語は喋るのは相当億劫)

  • 施される処置が理解できない(あるいは説明されない)

  • 保険制度や医療費発生の仕組みをあまりわかっていない

などなど、「不安要素が満載」だからだ。

移民の人々は経済的にも精神的にも厳しい環境に置かれていることが多いだろうし、そういった環境では「何か」が起こった場合に、一気に生活が崩れてしまうような危機感も常にあるだろう。

健康であることが何にも勝る「自衛」(Self-Protection)なのかもしれない。
だからこその、「Healthy Migrant Effect」なのかな。


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