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3Dプリンタ,積層造形,または,Additive Manufacturing

こんにちは,ぼんじーです.

博士後期課程に進学し,少しずつですが,僕が学んでいること,研究していること,考えていることを,まとめていきたいと思います.

ここでは,3Dプリンタについて,考えていきたいと思います.

"3Dプリンタ"とは,一体何だったのか.
"Addictive Manufacturing"とは,一体何なのか.

十年ほど前からでしょうか.テレビや新聞,ネットなどのメディアで,"3Dプリンタ"という言葉が取り上げられるようになりました.

好きな形,自分が思い描いた形が,ボタン一つで自動でできる機械."魔法の機械","夢の装置"のように語られていました.

これからは,個人が好きな物を好きなときに,自由に作ることができるようになる.と,期待が膨らんでいました.

しかし,実際はどうでしょうか.

3Dプリンタを所有していることはおろか,使ったことがある人さえ,あまりいないと思います.
いざ,何かを作ろうとしても,

AMF? STL? FDM?
そもそもCADって何?何の略?

と,こんな具合なのではないでしょうか.

実際に何かを作ったとしても,

積層痕が,造形精度が,サポート材が.

と.

つまり,3Dプリンタって,何かと面倒くさいし,思っていたより出来が悪い.何だ,大したことないな.と.

"3Dプリンタ"という言葉に対する期待は薄れ,その狭い意味での技術は,パイプ・サイクルの幻滅期に入ったと思われます.

確かに,現状の"3Dプリンタ"は,皆さんの期待に添えるものではなかったかもしれません.

しかし,ここで1つ,大切なことを言わせてください.

"3Dプリンタ"は,機械,装置の名前であって,その技術の本質を指す言葉ではありません.

その技術の本質は,Addictive Manufacturing(略してAM),日本語では,積層造形法と呼ばれる加工法です.

つまり,3Dプリンタとは,このAMという加工法を用いて物体を製作する機械,装置のことです.

それでは,このAddictive Manufacturing,積層造形法とはどういうものなのでしょうか.

そもそも加工って何だ.モノを作るとは.

原料や材料に手を加えること。 「原材料を-して輸出する」
三省堂 大辞林

Wikipediaには,『原材料に手を加えて,製品を製作すること.』とあります.

つまり,材料に何らかの作業を行い,何か別のものを作り出すこと.と言い換えられそうです.

では,その『何らかの作業』とはどういうものでしょうか.
それらは大きく分けて,以下の三つに分類されます.

1.除去加工
2.変形(成形)加工
3.付加加工

なんだか,the勉強 になってきました.

まず,『1.除去加工』についてですが,これは物を切ったり削ったりして加工することです.
欲しい大きさの分だけ,段ボールを切り出す作業です.

次に,『2.変形(成形)加工』は,これも文字通り,物を変形させて加工することです.
段ボールを曲げたり,ねじったりする作業です.
また,この加工方法には,"液体状のものを型に流し込んで固める"という方法も含まれます.
湯煎したチョコレートを,型に流して固めるようなものです.

そして,『3.付加加工』.これは定義の仕方が様々あり,詳しくは一意に定まらないですが,材料と材料をくっつけて加工することです.
段ボールを,ノリやボンドでくっつける作業です.

これまでは,この『付加加工』にあたるものは,溶接加工くらいしかありませんでした.(メッキ加工を含めることもありますが.)

そして,この十数年,急激に発展を遂げてきたのが,『積層造形法,Additive Manufacturing (AM)』です.

その方式には多くの種類がありますが(現在7種類の方式に分けられている.詳細は次回以降),基本的には,『薄い層を重ね合わせることで三次元物体を造形する』加工法です.これまでの加工法とは,根本的に異なります.

このため,従来の『除去加工』,『変形(成形)加工』では加工が困難であった複雑な形状,構造を,容易に造形していきます.

上のリンクで紹介させて頂いたものは,"タンポポの綿毛の上に乗るほど,軽量な金属材料の構造"です.
この例は,純粋に3Dプリンタのみで加工したものではありません.しかし,  AM技術を使用して緻密で複雑な三次元構造を造形することで,超軽量な金属格子(ラティス)構造を実現しています.

このように,Additive Manufacturing,積層造形法は,人が作り出す物体,構造の可能性を劇的に広げる技術なのです.

3Dプリンタは,『誰でも好きな形状を,そこそこの精度で作れる』なんて,とんでもない.

積層造形法,Additive Manufacturingは,『誰も見たことのない機能を持った構造を,生み出せる』技術なのです.

マガジン『学問的な何か』では,そのような技術,学術動向について,私の思考,知識を整理し,同時に,あなたにもその魅力を伝えられる,そんなnoteを連載していきたいと思います.

どうぞ,よろしくお願いします.

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画像は『フリー写真素材ぱくたそ』より,”ウォールシティ”.

noteを最後までお読みいただき,ありがとうございます. 博士後期課程で学生をしています. 頂いたスキやコメントを励みに,研究,稽古に打ち込んでいきたいと思います. よろしくお願いします.