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39 雪つむ木々書体も文体も肉体

 句集「むずかしい平凡」自解その39。

 雪が降っている。

 木々に雪が降り積もっている。

 それを見ながら、書体とか、文体とか、そういう文字とか言葉に関するスタイルというものが、いかにその人間のもつ肉体と深くかかわっているか。

 そんなことを考えている。

 と、読んでもらえれば作者としてはうれしいわけですが。

 木々に雪が降り積もっているのを見て、書体とか文体とか、そんなことを考えていることそのものがよくわからん、と言われたら、まさにそのとおり。作者も困ってしまうけれど、実際作者としても、なんでこんなことを考えたのか、よくわからない。

 ただ、この書体と文体といったときに思い出すのは、私の俳句の師、金子兜太のことです。金子兜太の書、そして文章や俳句作品は、彼の肉体そのものだった、いや肉声そのものだったなあ、と思うからです。そんなことを思いながら、雪が降るのを眺めていたので、こんな句ができたのかもしれません。

 でも、そう考えると、この句は金子先生への追悼句になるのか、と今更ながら気がついた次第。

 金子兜太の句は、不思議と声が聞こえてきます。

 こういう声が聞こえてくる作品を作りたいものです。むずかしいけれど。

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