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むずかしい平凡 自句自解 第一章「むずかしい平凡」

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拙句集「むずかしい平凡」の自解を行っています。もしよければ俳句を楽しみつつ、お付き合いください。
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#月

32 いい本の手ざわりラ・フランスの重み

32 いい本の手ざわりラ・フランスの重み

 句集「むずかしい平凡」自解その32。

 本屋でふっと感じた印象。

 あ、この本の手触りっていいな。どことなく重みがしっかりあり、重心が感じられる一冊の本。内容もあって、しかも甘みもある。

 その感触が、果物の味わいに似ていた。この感触って、なんか記憶があるような。そして思いあったのがラ・フランス。これだなと。

 今はスマホでいろいろなことが事足りているような時代だけど、ぜひ紙の本も手に取

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31 我を噛みし吾子の犬歯よ月に還す

31 我を噛みし吾子の犬歯よ月に還す

 句集「むずかしい平凡」自解その31。

 抜けた乳歯を屋根などに投げて、次に生えてくる永久歯の健康を祈るちょっとした儀式は、まだ今も残っているんでしょうか。私も小さいころ、抜けた歯を夜空に投げたものです。小さい歯が屋根にこっと当たって、あとはしーんとした月夜。そのときの厳粛な気持ち、今も体の一部分に残っています。

 この句は、我が子のことを描いた句。

 小さいころ、この子によく噛みつかれたな

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