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下を向いて歩こう

近所のカフェに来ている。
ここに来たのはnoteを更新するために作業をしたいからなのだけど、いちばんの理由はおニューの革靴を履いて外に出たかったからである。

先週、H THREEという台湾のブランドにお願いしていた革靴が届いた。
11月の初めに注文し、1月に一度届いたのだけど、細かいサイズの調整のために一度台湾に再送。それからやってきたので、実に約4か月も待ったことになる。
わたしは甲の幅が広くて、学生の時のローファーはいつも3E。普段も24.5cmの靴を履いていて、なんとなくそれが私のサイズだと思っていた。ところが、ちゃんと足の大きさを測ったところなんと23.5cmがジャストサイズであることが判明し、デザイナーさんの判断で23.5cmの靴を作ってもらうことに。そんな大きさの靴なんて履いたことがないし、そもそも入らないから、本当に大丈夫かとドキドキしながら到着を待った。でも全くの杞憂だった。届いた靴を履いてみたら、びっくりするくらいぴったりフィットして、思わず「ええー!」と声を出してしまったほどだ。
色鮮やかなグラデーション、つやつや輝く革、揺れるタッセル、そして何より、足にきゅうっと吸い付くような心地よいきつさ。どんどん足に馴染んでいくのかと思うと、「これからよろしくね」という気持ちになる。「これからどんな服と合わせて、どこに行こう」と考えるとわくわく、どきどきする。おかげさまで、寝る前に下駄箱から取り出して、眺めてから寝るという妙な習慣が生まれた。

そしてその靴を履いて友達とお出かけする予定だったのだけれど、新型コロナウイルスの影響で外出は自粛しようということになり、あえなく中止に。せっかく靴をお披露目しようと思っていたのに、思いがけず1日暇になってしまった。でも、天気もいいし、もともと今日は出かける気持ちになっていたし、どうしても革靴が履きたい…ということで、誰に会うわけでもないのに張り切って家を出てきたというわけである。

出かける、といっても自宅から徒歩圏内なので、大した距離ではない。約束がないので、誰にも会わない。カフェも空いているから誰に見られるわけでもない。でも、お気に入りの服を着て、カフェでコーヒーを片手にnoteを書き、足元には新しい靴がいる、それだけで何だか明るい気持ちになる。

毎週、NHKの「世界はほしいものにあふれてる」という番組を観ている。
色んな分野のバイヤーが心躍る一品を求めて世界を旅するという内容はもちろん、MCのJUJUと三浦春馬の掛け合いが好きで、欠かさず録画している。その「せかほし」で、アンティークの食器を特集していた時のこと。イギリスのアンティークの食器をコレクションしているというイギリス人コレクターの自宅を訪問していたのだけど、家の至る所にお皿が飾ってあった。果ては枕元にまでお皿を置いていて、毎朝眺めるのが日課なのだという。
「朝起きて、お皿を眺めるのが至福の時間なんだ」と笑い、絶対にあげないからね、と大事そうにお皿を胸に抱く様子がとても微笑ましかった。
と、同時に「あっ、それでいいんだ」とほっとした気持ちになった。

今まで、趣味でもなんでも、成果を目に見える形にしたり、実用的であるべきだと、どこかで思っていた。
だから旅行先でお菓子の箱を集めたりすることも、何かにリメイクできないかと一生懸命模索してみるものの、なかなかうまくできなくてちょっとしたフラストレーションになっていた。
でもどうして箱集めが好きなのか考えてみると、箱を何かに作りかえて有効活用できたらもちろん嬉しいけれど、それだけではないという答えに行きついた。地元の人にまじってスーパーに行くこと、色とりどりの包装を眺めること、どれを買おうかと迷うこと、家で箱コレクションを並べてみること。どれも形にはならないけれど、とても大切な時間なのだ。

見るだけで楽しくなる。そこにあるだけで気持ちが明るくなる。手に取るだけで笑顔になる。
何かを好きであるとは、そういうことなのかもしれない。

上を向いて歩こう、涙がこぼれないように。
でも、今日は下を向いて歩こう。
お気に入りの靴を、ずっと見ていたいから!

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