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福払い ~幸運が欲しい~

ど~にも人生上手くいってる気がしない。
仕事して疲れて帰ってきて、残り時間とお金を切り詰めてまた仕事に行く生活。やる気が徐々に薄れてゆき、嫌気がしんしんと降り積もる。

藁よりもか細い一発逆転〝 宝くじ 〟
これに賭けるかぁ~ ・・・いや、まてよ、
そもそも当たる気がしないのに宝くじを買うのってあまりにも無謀だな。
せめて・・・運気空気だけでも良くしてからでしないといけないな。
そおだ! 神頼みだ! 神社へ行こう!!

四国は香川県高松市のT神社に行くことにした。

ぷはぁ~~ 妙な満腹感に包まれとても良い気分だ。
心なしか身長も伸びてる気がする。
おや?何処からかいい匂いがするぞ。クンクン・・・いや、俺からか!?
体臭がコロンのような香りに変化しているぞ!!
腹が引っ込み眼鏡を外した方がよく見えるし!!

おっ、明らかに身体の変化が速攻起きているぞ! こ、これが、ご利益なのかッ!!
すげえぇぇ ――― !!! こりゃあ絶対宝くじ当たる気がしてきたぞ! そ、即買いに行かねば ――― !!

「ふほっほほほお」

金ピカの金運の権化のようなおじさんが呼び止めてきた。
「・・・溢れてる・・・溢れてるよお・・・」「あなた、うちの神社の御利益全~部受け取っちゃってるよお・・・」

・・・は? 全部・・・とは? まったく良い事なのに不安な物言いをしてくるもんだぜこの金おやじ・・・。

「金運・仕事運・恋愛運・健康運全てにおいて最大級にして発光しうる徳が、そなたに授かっておるぞよ」「そのままいけば光輝き続け、明日には・・・お星さまになるであろうなぁ・・・」

・・・え? 星になる・・・って何?

「・・・・」
おい、何も言わず両手合わせて目ェつぶんなや・・・え?
お、おれ・・・もしかしてだけど、死ぬ・・・の? 明日?
「今日のあなたはビッグバン。明日のあなたはAKIRAの鉄雄。」
いや何言ってるか分かんない。

今日一日だけ最強の福男!しかし24時間だけのシンデレラということぉ? 
「お困りのようなら北の黒牛さんに会うといい」

く、黒牛・・・さん?

T神社より北にある高松市N天満神社にやってきた。

「さぁ そなたの体の不調な部位と同じ所の我の部位をさすれよ。さすれば、快癒するであろう・・・ん?・・・お、おぬし・・・ ・・・い、一体なんじゃその超絶な幸運体はッ!」

「T神社で福を最大MAX受け取ったとなっ!!
む、うむうぅ~~・・・わかった! どんとこいっしょい!!」

翌日には死ぬと分かってるんなら宝くじなんか買ってもしょうがないじゃんよ。俺に宿りし福よ!黒牛さん!吸いとってくれ~~!!

覆いかぶさるようにハグをし、一生懸命全身でさすさすした。
ピッカアァ―――― ッ!!

黒牛さんが俺の福を吸い取りすぎて、真っ白な牛になってしまった。

「・・・はぁはぁはぁはぁ・・・ ・・・す、すまぬ、これが限界だ。」
え? 
「残りは赤狛さんのとこで引き受けてもらってくれ・・・」

ま・・・まだ俺の福、溢れているの・・・か?え~・・・

西讃方面三豊市のM見宮に行ってみる。

大きな岩の下に社殿がありなかなかの迫力がある所だなぁ。
これは期待できそうだぞ。

「あ? なに? 願懸け?」

足元からグイッと赤い狛犬が声をかけてきた。
あ、あのお~N天満神社の黒牛さんの紹介できたんですけども・・・
「あ~、ハードなやつね~じゃあ、拝殿の後ろくぐっちゃってよ~」

はぁ?拝殿の後ろ?確かに岩と拝殿との間に人一人分の隙間がある。明かりが通らない真っ暗な通り道になっているようや。あそこを通れってことなんか?・・・ん?ロープが張ってあるぞ・・・。
『 立ち入り禁止 』

「あっ!先日の地震で落盤があって立ち入り禁止にしたの忘れとったわ・・すまんすまん」

んえぇ? どゆことよ!? つ、使えない・・てことぉ?

「あ~心配すんなって この山下りた先におススメのとこあっからよぉ。」
「そこ、行ってくんね?」

半ば門前払いされたかのような気持ちにさせられたが、おススメされた仁尾のK神社に行くことにした。


「赤狛からは聞いておる。わしらの間に立つがよい」

海中から現れたと言われる巨大な岩柱が重々しく言う。

岩って間近で見ると何となく生きているかのような圧を感じるよなぁ・・・
・・・ア゛ア゛ア゛ーーーッ!!

岩に絡まっていた注連縄が急におれの手首に結びつき両手を引かれ、磔のような態勢をとらされていた。
「衝撃!電撃!吸収破ァッ!! ぬうぅーーーんッ!!」

バリバリバリバリーーーーーッ!!!
メチャメチャ電流ガガガーーーシビシビシビれぇぇぇーーーー!!

「ぬううう~~ん!!!」

「ふぉあああああーーーー!!!」
「過払い福よ! 神の元に戻るのじゃあぁぁーーーー!!!」

ずばばばばァーーーーん!!!    ぶつっん

注連縄が切れ、膝から前のめりで俺はドザァっと突っ伏した。

・・・あれ? おれ、今日、めちゃ運が、良かったはず、じゃあ・・・?
心なしか顔もガングロになっちゃってるよう、な・・・死ぬ・・・

「ふぅううう~ん  お主の過剰な福は全て受け取ったぞよ~~ うふふん」

岩柱は大理石のように白く輝き妙にホクホクしていた。

「さぁ、仕上げはミツイシさんにお願いするかのおう」

・・・ま、まだあるのかよ・・・

ミツイシさんというからどんな人かと思ったら、人ではなかった。

三つの石だった・・・!!

宇多津の三つ石さん。運動会の組体操のピラミッドを思いださせるように巨大な石が重なっていた。

 「 我の下を・・・くぐれ・・・ 」

大人一人が通れる位の隙間がある。そこのことかな?やだ、怖い。おそるおそる腰をまげつつ真ん中を歩いてみる。

「・・・ドドドドドドドーーーーーー!!」

ほ、本当に石が震えだしてきた! いや、ここは上側の石が落ちてきそうと想像してビビり、やっぱ何も起こらなくてホッとする・・・のが定番じゃんか!?
マジで落ちてくること・・・ないじゃんかあああああーーー!!!

「どずうぅぅぅぅん」


・・・・  ・・・・  ・・・・  ・・・・

・・・ど~にも人生上手くいってる気がしない。
仕事して疲れて帰ってきて、残り時間とお金を切り詰めてまた仕事に行く生活。神様に強運を貰えたのにもかかわらず一日で捨てることになろうとはね。

T神社の巨大鳥居の前に何故か今、立っている俺。
夢だったのか?時が戻ったのか? どおやらまだ生きているようだ。

・・・腹へったな

新しい中華でも食べに行こうか。当たりかハズレかは神のみぞ、知る・・・


おしまい


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