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前回まではこちら * あの日以来、近ごろは寝坊しなくとも、もう顔に時間をかけるのは止めに…
志邑です。 「不思議」をテーマに書いた小説(の冒頭)が見つかったので載せます。 まだ冒頭の…
昭和硝子の嵌った台所の窓のところに、ずい分水気が飛んでどす黒くなったしょう油。 何年も動…
ベランダにならべた プランターのプチトマトの 花がしおれていくのを眺めている 毎日 プチトマ…
高校生になる娘は最近家にほとんどいない。 校則でバイトはたしかに禁止されていないが、私と…
みみず腫れを指の腹で撫でつけて 私と夕景の境界線を消す 稜線は朱鷺色に発光し 民家の土壁を…
螺鈿のイヤリングを揺らして 君はブランコに乗っていた 涼やかな顔は春の夜風によく似合っている ぼくのからだをその雑木林の いちばんうす暗いところにちょっと埋めて 君はブランコに乗っていた つよい風はぼくの上にかかった土を乾かして 簡単に払ってしまった 少し覗いているぼくの目には 君が大きく足を振っているのが映っているだろう はげしく吹く風は君の起こした風なのか 君は服も顔も髪も乱れることなく 元気にブランコを揺らしてしている 乾いた空気を浴びている野ざらしの瞳の裡に 揺れ
ノンアルコール、と書いてある飲み物にも実は微量のアルコールが含まれている。 日本の規定で…
家へ着くとブレザーを脱ぎ捨て ネクタイを引き抜いてそこらに投げる わたしは袖を煩雑にまくり…
前編はこちら *** その絵には『一枚の絵』というタイトルが付けられ、第三展示室の隅の方…
わたしが生まれたのは日本のどこか、海辺の街で、夏だったこともあって、安直な、海っぽい名前…
まだ昼のうちから、鬱蒼とした森はくらく、視界はあまりひらけていない。 足元一面に広がって…
次の連絡船の時間まで、あと40分あった。 わたしは往復のチケットを買い、これから湾を挟んで…
履きつぶした革靴は、靴底が破けていて、動くたびに湿っぽい砂が中に入り込んで不快感を助長した。 海から流れてきた、ばらばらになりかけの洗剤容器や、おそらくバーベキューの残骸の缶や箸が、ベージュの荒い砂山に刺さっている。 陶器の破片は丸みを帯びていたが、時折ゴム底のすき間に食い込もうとする。 足がもたついて、少しも進んでいる気がしない。 とにかく走っていた。 ーーーーーーーーーー 急に深夜呼び出されるのはいつものことだった。 無視すればよかったのだろうが、それができないのもや