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海へそそぐためのソナチネ

みみず腫れを指の腹で撫でつけて
私と夕景の境界線を消す
稜線は朱鷺色に発光し
民家の土壁を染めていた
その景色は吹きすさぶ山颪に押され
浜に続く道をゆき私を突き刺し
やがて白浪でぐしゃぐしゃにかき乱された

手の甲に残る点線
夕焼けが深くきざまれた刺青の痕
それをまた撫でつけて
もっと奥へ日をしずめていく
風のつめたさは頬から苦しみを絡めとって
沖へと漂流させる
しみ込んでいった
落陽の温度だけが血液をながれ
心臓をうごかしている



――――金谷から臨む海にて

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