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経営はみんな「効率化」が大好き。でも事業はもともと「非効率」を忘れずに

電車で、乗り換え案内アプリを使うと、同じ所用時間で3つの方法が提示された。2つは乗り換え1回、1つは乗り換え2回。到着時間の差は1~2分で無視できる範囲。

運賃の安い方が良い、と普通は思う。今回の運賃は10円ほどの差。無視できる。

乗り換え回数も大切。だけど同じプラットフォームで目の前の電車に乗り換えなら苦ではない。上述の乗り換え2回のパターンがこれに該当する。だから、乗り換え回数も無視できる。

なので、歩く距離や階段の長さ、登りか下りか、両方か、などがより重要になる。

こうして、普通は、歩く距離が短い方が選ばれる。あるいは、エスカレーターが使えるか、階段の上り下りがないか、が考慮される。

つまり、体力が保持でき、筋力を使わずにすむ、より疲れない方を選択する。そして、車内でも、空席があって、特に不快なひとが隣にいなければ、座る。席が空いているのに座らない選択肢には特別の理由が必要だ。

なぜなら「ラク」だから。
「ラク」は人類が人生で追求すべきことだから。
疑う余地なし。当たり前。



さて、会社では「ラク」と言う言葉は幼稚過ぎ、と言うことで「効率」と呼ばれる。「生産性」なんて言われることもある。

「効率的であれ!」「更なる効率化を目指そう!」。ありがちな経営者の言葉。概して、経営者の言葉には疑心暗鬼になり、裏を探すものだが、この「効率化を目指そう!」には誰もが異論なし。

職場はデジタルのお陰でかなり効率的になっているけど、とはいっても、まだまだ付加価値の低い作業があります。経営者は「効率LOVE」です。もう十分なんて発想はないですね。他に効率化できることはないか探します。

しかし、経営者が「効率LOVE」ということは、裏を返せば、つまり、そこには「どうでもよい」仕事?作業?ルーティンがいっぱいある!ということ?! 経営者の手腕不足? 怠慢か? なんて意地悪も言えます。



ところで、効率を極めるとどうなるのか。
ふと思うのですが、ロハスかなと。

ロハス、スローライフ、エフォートレス、ナチュラルなどのカタカタ。流行り出してここ10、20年ぐらい?

人生をのんびり、ゆったり、上質な時間、生活を求め、ほどほどを知り、地球環境も考え、節度持って、自然と大いに触れ合って、生きよう、なんて言われますが。

この思想の本質は、人生の、生活の、ひとつひとつを、自分が大切だと認識できることだけに絞り込もう、ということかなと。つまり、嫌なこと、やりたくないことはやめよう、ということかと理解しています。

だから、残ったことはすべて大切なこと。大切なことをさっさと効率的にやろうなんて思わない。時間をかけて、長い時間、楽しむ。さっさと終わらせよう、なんて思わない。効率を追求する必要がそもそもない。



さて、伝統工芸品を販売している会社の社長さんと会話した。

日本全国の職人さんと仲良くなり、その歴史、生き方、こだわり、なぜその地で発展したか、なぜ現代にまだ生き残っているか、などなど、学び、噛み締めながら販売している、とっても素敵な方です。

ラクとか、効率とか、そこにはない。量産を目指していない。全く同じものを作ろうともしていない。昔ながらの方法で、経験とカンを頼って、「偶然」を大いに受け入れ、楽しみ、愛情を込めて、結果として一つ一つ何かが必ず異なるモノを手作りしている。

ロハスと同じにすると大変に失礼なのかもしれないけど、似たような考えかなと思える。つまり、ひとつひとつの工程がどれも大切なのだ。大切だけに絞られている。だから、効率化を目指そうなんて思わない。

うーん、こんな職場、素敵!



ということで、

一般(?)の会社はロハスを目指しているわけでも、伝統工芸を目指しているわけでもないですが、同じように大切な「本質」だけを残すべく、どうでもいい”作業”の「効率化」は目指すべきでしょう。「効率LOVE」大いに良し!



と、自分で言いながら、立ち止まるのです。
「効率LOVE」って、どうなんだろう? 弊害もあるよな、と。

と言うのも、
本質/本質じゃない、大切/大切じゃない、は誰が決めるのか? それは誰にとっての大切なのか? ということなのです。

あるいは、短期的視点だけに陥っていないか? 今、それを効率化することで、逆に失うものはないのか? ということなのです。


そして、更に怖いのは、

乗り換え検索の話に戻るのですが、たくさん歩く方を選択したっていいじゃない! 無駄な疲労ですか? 階段の上り下りがある方を選択したっていいじゃない! つまづいて転ぶリスクだけですか? 到着時間は変わらないのだから、エクササイズ・筋力トレーニングをその過程でプラスした、とも思えるのです。

毎回、長い距離をあえて歩き、階段を一段抜かしで登る/降りる。これが習慣になれば、だんだん短期的な疲れを凌駕し、中・長期には筋力維持・健康体に繋がるかもしれません。

「非効率」にも価値があるのに「ラク」ばかりを追求する。

職場でラクばかりを追求する文化が強くなり、行き過ぎると、挑戦や負荷の高い仕事を拒絶する傾向に陥る、かもしれません。。。

「ラクを追求することが当然」となると、挑戦、忍耐、継続、支え合いなどが弱くなり、面倒くさいがまかり通るなんてことも? 「それって非効率じゃない?」「無駄じゃない?」「費用対効果悪くない?」が横行する。正論とも言えるけれど、この思想では事業を作ることはできません。

だって、事業を作るって、将来はわからないけど、可能性は感じられるけど、そんなことより、ただただその価値を信じて、答えなき道を、継続的に、諦めずに、切り開くこと、なのだから。

つまり、ある意味、とっても非効率、なんだから。




お読み頂きありがとうございます。
(v9_33)



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