春キャベツ【short-short 4/30】
私の幸せは毎日とれたてのキャベツが届くことだ。
届いたキャベツを台所へ運び、ボウルに入れて水で洗う。土を落としながら表面の葉をむくたびに昔を思い出す。
*
あなたがまだ幼かった頃。
外で遊び疲れた泥だらけの体で玄関を開ける。
笑い声とともに土もはらわずリビングに駆け上がろうとするあなたを抱きしめ、お風呂場へと運ぶ。
まるでキャベツの葉をむくようにして、あなたの服を脱がせ、シャワーでよごれを落とす。
あなたはみずみずしかった。
*
キャベツを洗い終わると、日が暮れていた。
部活で疲れた泥だらけの体で玄関を開ける。
ため息とともに洗面所へと向かうあなたに成長を感じる。自ら服を脱ぎ、シャワーを浴びる姿が少し切ない。
私の幸せは毎日とれたてのキャベツが届くことだ。
今日はキャベツたっぷりのとんかつにしよう。