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水槽

ある日

金魚を眺めていた。

壁に近づく度にひっくり返ってまた泳ぐ。

「狭いかもしれない」

四角の透明な水槽にピントを合わせると

自分が映り込んだ。

「おやすみ」と空に黒い布を被せれば夜。

その縫い目から零れた光が星だった。

あの山も僕の家も、この世界の外にいる誰かが

置いたオブジェなのかもしれない。

僕らも誰かの金魚で

丸い水槽の中を壁に打つかることなく泳いでいる

金魚はこちらの世界を羨ましそうに眺めていた。


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