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公園の詩

バイトをしてなかった僕はお金がなくて、
いつもデートは君の家から近い高台の公園だったね
反対側から来たこの公園は
思っていたよりも広かった
腐る程来てたはずなのに
眼下に広がる景色が綺麗なことも
今更になって気づいたよ
全部知っていたつもりで本当は何も知らなかったみたい
足音に落ちる木の実の潰れるパチパチと音がした

君が1人ではしゃいでたブランコが見える
隣のベンチに座って眺めてた時間は特に幸せだった
そういえばこの公園で花束をあげた気がする
とっくの昔に枯れて捨てられているんだろうけど
駅前のお花屋さんで買うときは緊張したんだよ
「プレゼント、花束にしたら?」
と勧めてくれた先輩は今年結婚するらしい

公園は本当に高いところにあるから
帰りは下りがきついんだ
部活をしてたあの頃は
隣に君がいたあの頃は
このきつい下り坂も平気だったんだね

帰り道の自販機で
押し間違えて出てきた冷たい微糖のコーヒーを
君との思い出を
全部一緒に飲み込んでしまうよ

君の分はちゃんと温かいココアを買ったよ
花と一緒に置いていくね
僕はもう大人になったけど
やっぱりお花屋さんは緊張するんだね

冷えた身体を温めるためにも
今日は走って帰ろうかな
携帯の充電はもう8%しかない
急いで、振り返らずに
それでも一歩ずつしっかりと


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