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出来事

スマホの目覚ましアラームを鳴る前に消した。

次のアラームが鳴るまで5分間。

もう1時間くらい余計に寝てもいいのでは。

そんな訳はないので起きて準備して出勤した。

今日は秋にしては暑過ぎる。きらいだ。


一目惚れした秋物アウターを買うのを諦めた。

欲しかったチャコールグレーが売り切れだし、納品が11月上旬でその頃には冬が来ている気がしたから。

大人になってからこういうことが増えた。

向こう見ずなことをしなくなった。

つまんない奴になりやがって、唾を吐いた。

朝、通勤中にすれ違う常連である学生風の女の子がイカす秋物のジャケットを着こなしていた。

私にはもう数週間あるかどうか分からない季節のために大枚を叩くような気概は持ち合わせていない。

つまんない大人になりやがって、涙が出る。

給料全部洋服に注ぎ込むような無鉄砲に戻りたい。

生活も安定も夢も希望も未来もいらない。

好きな洋服と詩集とカメラを持って何処までも。



夕方、いつものコンビニの喫煙スペースにいると隣の大学生風がハイライトメンソールを吸っていた。

匂いで分かる。初めて吸った煙草だから。

当時好きだった人から貰ったもの。まだ未成年だった私は冗談のつもりで頂戴と言ったらすんなり1本渡してくれた。

もちろん受け取ったけど、謎の罪悪感でその場で吸うのは憚られたので大事にポケットにしまった。

意味不明なことをしても何の言及もなかった。

良くも悪くもその人は全てに関心がなかった。

帰ってから玄関で埃を被っていた古着屋の何周年かのノベルティで配っていたブルーのBICライターで火をつけた。

普通に不味くてびっくりした。喉がヒリヒリして激しく咳き込んだ。大人が何でこんなものをありがたがって吸うのか分からないという気持ちだった。

そんな私も十数年後にはそんな大人。

しかし、今でも美味しいとは思っていない。

何となくだよ、何となく。


おまけ(昔の写真)

あやしい建物

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