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出来事未満

夜更けに高熱が出た。

朝まで熱は下がらなかった。

だから仕事は休んだ。

ひとまず薬を飲まなくてはならない。

朝ご飯はポカリと黄色の錠剤3つ。

こんな日でも家事タスクはこなさないと気が済まないので鈍い頭と身体に鞭を打った。布団を片付け掃除機を掛けて洗濯機を回す。

無論、明日に見送っても良いのだけれど明日のタスク量が2倍になる。それよりは今すぐ処理した方が楽だろうという思考。ほとんど病的。

洗濯機が終わる前に力が尽きた。

私は床にうずくまって、そのまま意識を失くした。

そしてしばらく眠った。

夢は見なかった。


何度か目を覚ましながらも泥のように眠った。

カーテンから差し込む陽の光が心地よかった。空の青さが少しも嫌味っぽくない。脳髄が熱に浮かされているせいで雑念がシャットアウトされてるからか。

高熱で倒れているのに全然気持ち悪くない。さすがに、コロナも5回目だから耐性ができているのかも。

そろそろ起きなきゃと思いスマホに手を伸ばすと、まだ昼過ぎくらいだった。久しぶりに幸福な時間を感じていた。これが永遠ならば。

しかし、全ては有限なので起きて洗濯物を干した。

少し身体を動かし過ぎたみたい。意識朦朧。

何か食べないと。だけど食欲はなかった。

お昼ご飯は漢方味のドリンクと黄色の錠剤3つ。

そして、また床にうずくまって眠った。


窓から差し込む西陽のやつが大人しくなってきたであろう頃に、私は再び目を覚ました。

今日のうちにやるべきことは全て終わったので、夜がやって来るまでは惰性で過ごした。

テレビをつけた。面白い番組はなかった。

YouTubeを開いた。目ぼしい動画を後で見るリストに放り込んだ。いつか見る日が来るだろう。

本を開いた。頭痛がしたから読むのをやめた。

天井の細かい凹凸やシーリングの中に入ったゴミの黒点を数えてみたりした。無意味な時間。

そのうちにまた眠りについた。

次に起きた時にはすっかり夜だった。

ゆっくり起き上がって素早くカーテンを閉めた。

晩ご飯の前にシャワーを浴びた。全身が気持ち悪かったので冷たいシャワーを浴びた。これのせいで熱が上がるのでは?そんな疑問も排水溝に流した。

身体をタオルで丹念に拭いてから、清潔な部屋着に袖を通して、しっかり髪を乾かした。

晩ご飯はぶどうゼリーと黄色の錠剤3つ、水色の粉薬1つ、白い錠剤1つ、退廃的な音楽を朝まで。

今日はもうおしまい。

おそらく明日も。

でも明日は仕事に行きたい。


掘る


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