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記憶

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架空で空想で夢で現みたいなもの
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#エッセイ

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私はLの死を直接は知らない。

本当は全部が嘘。

何処か遠くの街で水商売とかをして生き延びていてくれたらなって考えたりする。嘘を吐かれたんだとしても死んじゃってるよりはマシ。

私を含めて友人知人の類いは、Lの家族から悉くよく思われていなかった。知らせを聞いたのも知人経由。

だから、私は冷たくなった彼女を知らない、焼かれて灰になった後の彼女を知らない、暗くて冷たい場所に押し込められた彼女を知ら

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今夜は遅くまで友達と飲んでいた。
みんな終電近くで帰った。

私の最寄駅はマイナー路線なので、すでに終電は通り過ぎたあと。ひとつ手前の駅までは電車がまだあるからそこまでは乗って行く。

そこからは歩いて帰るつもり。

ひとつ手前の駅から自宅までの間は、酔っ払いでも歩いて帰るのが苦ではない距離感。

が、楽しい時間のあとは寂しくなるもの。

深夜帯でも時間を省みることはなくLは飲み終わりによく私に電

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母方の祖母はそれはそれは優しい人だった。
初孫ということもあり私は大変甘やかされた。

幼少期の記憶を辿れば、怒られた記憶はほとんどなく、どこかに連れて行ってもらったり、何かを買い与えられたり、学校帰りにはおやつを作って待っていてくれたりと良い思い出しか残っていない。

時は流れて、私が大学生の時分に祖母は大病を患った。生活にこそ支障はないが、決して現代の医学では完治できないものだった。

何度か

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