アクセシビリティの美学
こんにちは。FirstFourNotesフクシャチョーのぼへぼへです。音楽と技術を組み合わせて、楽しいことを作るぞ!という挑戦をしている会社です。
先日、ドレイク・ミュージックによる Disability Equality Training ワークショップに参加してきました。
ドレイク・ミュージックは、テクノロジーを応用して障がいのある人の音楽活動の可能性を拡大することに着目した多様なプログラムを展開する英国のアート団体です。
弊社も、音楽&テクノロジーを使って
誰もが音楽を楽しくやる、できる場所
経験も知識もなくても始められる
音楽を楽しむのにつながるモノ、繋げられるモノ
を生み出そう、実現させようとしているので、何かヒントが得られるのではないかと思って、このワークショップに参加しました。
障がいの社会モデル Social Model of Disability
今回のワークショップでは、障がいの社会モデルとは何かということをワークショップを通じて学ぶことでした。
以前、障がいはMedical Model、つまり、その人自身に障がいがあるとして考えられていました。しかし、今は、Social Model、つまり社会との関わり合い、接点に障がいが生じていると考えるようになりました。
したがって、その接点を少し変えれば、障がいが問題ではなくなるようにできると考えます。
では、接点をどう変えれば良いか。それには、目に見えるバリア、目に見えないバリア、
「バリアが何であるか?」を考え始めて、見つけていく。
いくつか手を動かし、ブレストをすることで、実際の気づきと発見を得ていくワークショップなのですが、一番モノを作る上で、そこまでは考えていなかったかもしれない、それを考えることで、もっとクリエイティビティをもつのではないかと気付かされたことを書きます。
公園の遊具とアクセシビリティ
シーソーを描いてください。ツリーハウスを描いてください。ブランコを描いてください。ジャングルジムを描いてください。
描けましたか?
(シーソーをおぼろげながら描いてみる)
みなさんがよく目にする公園の遊具です。
その遊具で遊べない人は誰ですか?
その人たちが遊べるような遊具を考えてください。
ただし、設計する時に、Why?を忘れないでください
なぜ、子供達は、公園の遊具で遊ぶのでしょうか?
・楽しいから
・友達と交流できるから
・運動できるから
・ちょっと冒険ができるリスクがあるから
色々考えられますよね?
そのWhyがなくならないように遊具を設計してください。
そしてもう一つ、
アクセス=サービスではないということ。
アクセスを簡単にできるサービスを提供しないでください。
車椅子の人がツリーハウスに登るのにはどうしたら良いでしょうか?
エレベーターでしょうか。確かに簡単にツリーハウスに登れるようになります。でも、エレベーターはリスクがないし、乗っても楽しくないです。障がいのある人も、そうでない人と同じように、楽しんだり、リスクがあってちょっとドキドキしたり、が必要なんです。
そして出来上がったシーソーがこちら。
聴覚障がい者が、向き合っておしゃべりが楽しくできるように。
・手を離して、上半身を激しく動かしても落ちないように、カゴに乗ることに。
・バネがついていて、足でホップしなくてもよくなった。
・おしゃべりの内容が外に見えないように、スモークな何かで雲のドームで囲う。
・囲っただけだと、中も外もつまらないので、LEDでキラキラさせて、中も外も楽しめるように。
これ、障がいがない人でも乗ってみたいですよね。
いつもあるシーソーよりも、乗ってみたくないですか?
アクセス = Creative Tool
障がいのある人のことも考えて工夫することで、ジャングルジムも、ツリーハウスも、ブランコも、全て今ある遊具よりも、より魅力的で楽しいものに生まれ変わっていました。
アクセス、アクセシビリティを考えるのは、障がいのある人向けだけと考えがちです。そして、その人たちが簡単にアクセスできるようすることを考えがちです。
違う。
違った。
アクセスするのがちょっと難しいけど、うまくできるようになる楽しみがある。ちょっとリスクがあるけどドキドキする。
そういった要素は、障がいのある人にも必要なんです。
それを彼らは「アクセスの美学」と呼んでいました。そして、設計するときは「アクセスの美学」を失わないように、と。
「アクセスの美学」を持ったものを作れば、誰にとっても魅力的なものができる。
この考え方にはちょっとびっくりでしたが、同時にとても納得しました。障がいがあるから簡単にアクセスできるようにするのでは、楽しさを失ってしまう。そうならないように考えれば、障がいのある人も楽しむことができます。そして、それは誰にとっても楽しいものである可能性があります。
この考え方は、障がいがあるなしに関係なく、全てに当てはめて良いんじゃないかと思いました。何かを作るときは、つい「簡単に」、「便利に」と考えてしまいがちですが、「難しさ」や「不便さ」をうまく残してコントロールすれば、もっと使って楽しくなるのじゃないかと思います。
つまり、最初から「アクセスの美学」も考えていくプロセスを取り込むことで、より楽しくより良いプロダクトを生み出すことができる。
もちろん簡単なことではないですが、これからの物作りの意識に大きな影響を受けました。
人々を妨げている設計は何か?
バリアは何か?
最初からアクセスというものを考えていくプロセスを取り込む、
「アクセシビリティの美学」。
より良いプロダクトを生み出すために意識していきたいと思います。
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