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名作探訪 その12 紛れなき傑作! 90年代の巨人 『エルグランデ』

こんにちは、ボードゲームデザイナーの山田空太といいます。

このnoteでは、普段ボードゲームの作り方に焦点を当てて書いています。今回は名作探訪の第12回。皆さまにぜひご紹介したいボードゲームのシリーズです。

前回の名作探訪の記事はこちらからどうぞ⇩

本日のゲームは90年代を代表するゲーム。ヴォルフガング・クラマーリヒャルト・ウルリッヒ作の『エルグランデ』、1996年のSpiel Des Jahresを受賞しています。エリアマジョリティの最高峰ともいえるドイツゲームです。

同作者クラマー の『トーレス』の記事はこちらから読むことができます⇩

エルグランデ El Grande

Designer: Wolfgang Kramer, Richard Ulrich
Artist: Doris Matthäus
Publisher: Hans im Glück
(1995)
2-5 players
好み:AAA  
時間:120分程度
2人でも:3人以上がおすすめ

中世のスペインがを舞台として、9つ州に騎士を派遣して、各州で騎士数で覇権を争うゲームです。

エリアマジョリティのゲームです:ざっくりいうと、各州で他プレイヤーよりも多くの騎士駒を置くことを目指します。

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ゲームは全部で9ラウンド。3-6-9ラウンド後と3回の決算があります。決算では、各州に派遣された騎士の数で順位をつけます。『エルグランデ』では3位まで点数をもらえます。例えば、グラナダという地域では1位/2位/3位に6/3/1のように、順位に応じた勝利点がもらえます。

カードのセットコレクションの勝利点を付け加えたり、ゲーム終了時のボーナス的なヤワなことは一切なく、純粋にエリアマジョリティの勝利点のみで戦います。この辺りは90年代のゲームらしい。

前半で、一種の競りをして、後半で、アクションカードの選択と実行をさせるという2層構造

この2層構造は、前回ご紹介した『ペルガモン』と構造が似ているかもしれません。どちらもターンオーダーすなわちプレイ順での不平等をどう扱うかに工夫が見られます。僕がゲームデザインした『IKI : A Game of EDO Artisans』では、いきざまトラックというものを使い、2層構造を取り入れました。

競りでは、1から13の大きさのパワーカードを使います。ここで、ターンオーダーすなわちプレイ順(重要!)ストックから場へ移動できる騎士数の2項目が一挙に決められてしまいます。パワーカードは、プレイ順が良いほど、利用可能な騎士数は多くなるようにデザインされています。

「1つの選択で2つ以上のことを決定させる」このメカニクスは結構有用で、これ以降のドイツゲームでもよく見られます。

後半では、アクションカードの指示にしたがって行動するのですが、アクショカードの種類は豊富です。例えば、騎士を派遣したり、他人の騎士を戻したり、勝利点の組み合わせを変更したり、途中で決算したり・・・などなど。こちらもパワーカードのデザインと同じく、「他プレイヤーの騎士を排除できる」ような強いアクションをもつカードは、派遣できる騎士数が少なくなるようにデザインされています。

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そして、ゲームをより複層的にして深みを与えているのが、キング & タワー!上の写真でも目立っていますね。

騎士駒はキングに隣接しているエリアにのみ派遣できる(ただし、キングがいるエリアはアンタッチャブル)という制約があるため、常にキングの位置を考慮しないといけません。

そして、タワー!エリアに派遣するかわりに、タワーの中に騎士駒を放りこむことができます。タワーの中の騎士駒は、決算時にエリアに投入することができるのです。これによって、エリアマジョリティの順位が崩れる可能性をはらんでいるのです。タワーの中に何個騎士駒があるのか、ラウンド中は見ることができません。なので、誰が何個入れたか、ある程度覚えておかないといけないのです。

タワーの存在が揺らぎを与え、ゲームの最後までドラマが生まれることがあるのです。また、ガチガチのエリアマジョリティが、若干緩和されてもいますね。

総じて、プレイは濃密です。相手の手を読んで、手番順を考え、キングの位置を考え、自分のパワーカードの残りを注意し、タワーにあるであろう騎士駒を覚えておく・・。

ゲームの序盤でトップに立つと、たたかれ、削られる。どこかでしゃがんでパワーを溜めむことも大事。かといって、控えめにいっていると、いつの間にか逆転の目はなくなっています。しれっと塔の中にキューブを溜め込んでいて、ひっそりとトップをとる。意地と我慢と気合いと悪意が錯綜するゲーム。やっぱり面白い!

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ちなみに、拡張の『王と参謀』も要注目。ゲームの構造に変化が加えられており、興味深い拡張です。アクションカードとパワーカードが一体になった新たなカードを使用することで、従来の2層構造がまとめられて1層になっているのです。一見スマートな改変ですが、プレイ時間はさらにかかります。運の要素は減り、より戦略性が増すからでしょう。

というより、もう超激辛のゲームになります。機会があれば一度遊んでみてください。

さて、『エルグランデ』いかがだったでしょうか?次回の名作探訪もお楽しみに。

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過去のおすすめ記事を紹介します。
名作探訪 その5 エリアマジョリティの傑作 『将軍』
名作探訪 その7  硬派なタイル配置ゲーム 『サムライ』

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