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名作探訪 その5 エリアマジョリティの傑作 『将軍』

こんにちは、ボードゲームデザイナーの山田空太です。随分ご無沙汰しておりましたが、noteまた書き始めたいと思います。

今回は、名作探訪という、是非とも遊んでほしいボードゲームを紹介するシリーズです。100作を目指して、ちょっとずつUPしていきますので、夜の読み物にでもしていただけたら嬉しいです。

過去のシリーズはこちら⇩からご覧いただけます。

さて、本日ご紹介するゲームは、2006年のディルク・ヘン作『将軍』
『ヴァレンシュタイン』というタイトルで出版されていたゲームのリメイクで、日本の戦国時代を舞台とした陣取りゲームです。

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将軍 Shogun

Designer: Dirk Henn
Artist: Michael Menzel
Publisher: Queen Games
(2006)
3-5人
好み:AAA 
プレイ時間:180分
インスト:45分
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作者であるディルク・ヘンは、『アルハンブラ』で2003年のSDJを受賞しました。それ以前にも『ローゼンケーニッヒ』(1992)という一風変わった陣取りをする2人用ゲームや、『ショーマネジャー』(1996)という俳優をスカウトして演劇を作るゲームなどを作っています。

『将軍』はその中でも最重量級。準備とインスト込みで4時間くらいかかります。とは言え、その間ずっと没頭できます。とにかく・・・スーパー面白い!未プレイの方は是非とも遊んで欲しいゲームです。

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ゲームボードには日本地図が描かれています。プレイヤーは徳川、上杉、羽柴、武田、毛利の各武将となり、領地を広げてその領地から米や金を徴収し、さらに兵士を増やしたり、自分の領地に城や神社を建てたりします。

戦争という直接攻撃のアクションがあり、他プレイヤーとのインタラクションもばちばちの重量級。しかし、そこまで重さは感じません。その理由は、採用されているメカニズムの組み合わせが優れているからだと考えます。

まず、メインアクションの選択は、プロットというアクションの事前決定で行います。毎ラウンドの行動計画を、ラウンドの最初に考えます。プレイヤーの意思決定の大部分がこのプロットに集約されていて、全プレイヤーが同時にプロットを行うため、ダウンタウンが少ないのです。

重量級のゲームでは、終盤に近付くにつれて1手番で出来ることがどんどん増えがちです。なおかつ、その組み合わせや順序を考えると、選択肢の数が掛け算になって膨れ上がってしまう。その最適な組み合わせを探すことに面白さを感じる人もいるので、それが悪いわけではないですが、個人的にはダウンタイムの長いゲームは苦手です。

さて、『将軍』でのプロットの方法は、自分の領地のカードを10種のアクションに単に割り当てるだけ。アクションの内容は、米や金を徴収したり、兵士を増やしたり、兵士を移動したり、城や神社を建てたりするものです。

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ただし、アクションの順序を決める必要がありません。10種のアクションがどの順番で出てくるかは自動で決まります。アクションは最初の5つしか公開されません。ここもうまく効いていて、考え得る選択肢の数がうまく制限されています。

また、『将軍』はエリアマジョリティのゲームでもあります。1つのエリアに多数の駒を置くことができたら、そのエリアが自領になります。ここでは、支配するかどうかのゼロサムです。他プレイヤーの支配する領地を奪いたければ戦争を仕掛けるしかありません。

例えば、『エルグランデ』という別のエリアマジョリティのゲームでは、1位、2位、3位まで勝利点を得られるので、1位を他プレイヤーに取られてもおこぼれを頂戴できます。最近では、『八分帝国』や『天下鳴動』という軽めのエリアマジョリティのゲームがあり、どちらもオススメです。

さて、戦争の解決はどのようにするのでしょうか?例えば、ウォーゲームの場合、戦闘解決のためにダイスを振ります。ダイスを何度も振るので結局平均化されると言う方式です。

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『将軍』ではここにキューブタワー(上写真)というものが使われています。これがとても良い感じに機能しています。攻撃側と守備側がキューブで著された兵士を上部から入れて、下から出てくる数が多かった方の勝ち。しかし、タワーの中にキューブが引っかかることがあり、多く入れた方が勝つとは限りません。そして、引っかかったキューブは後の戦争で出てきて活躍するかもしれないのです。そう、負けた方にも救いがあるのです(とはいえ、戦争に負けるとゲーム的には辛いのですが・・・)。

戦争に勝って領地を増やすのがゴールではなく、自分の領地に建物を建てることで初めて勝利点が得られるように設計されています。建物を建てることにも、手番とお金が必要で、領地を広げすぎると養うための米が足りなくなるというジレンマ。一見すると、派手な戦争・陣取りゲームでありながら、繊細なリソースマネジメントのゲームでもあります。

戦争・エリアマジョリティゲームの殺伐としがちなところをアクションプロットとキューブタワーが程よく緩和しています。リソースの種類も少なく、無駄なルールはありません。大変困難なゲームデザインを見事に着地させた、ウルトラCのゲームだと思うのです。

*この記事は新たに書き下ろしました。

さて、名作探訪シリーズ、いかがでしたでしょうか?もし面白かったら、是非、noteとTwitterのフォローをお願いします。



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