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ファシリテーションの歴史を紐解くと、そのコツは時間を守ることにある

ファシリーテーターが得意な自覚がある。

元々上手かったわけではなく、自然と経験を重ねた結果できるようになった。これを言語化して人に説明して共有して普遍化をしなければいけないとマネージメント視点で感じたのでまとめる。

ファシリーテーションを定義する

ファシリーテーションの対象はここでは会議とする。6-10人程度の規模を想定する。このレベルになると、ファシリーテーションが必要な規模になる。

司会者は50-100人規模と想定し、議長との違いは決める権限を持たないとする。議題がなんであれ決めるのは参加者であり、発見も参加者。そのフォローを促すのがファシリテーターの務めだ。

ファシリテーションが用いられる場所

今回はファシリテーションをビジネスの現場で用いて説明していくが、もう少し広い視点でファシリテーションを捉えてみる。

会議とはじめに定義したが、ファシリテーターが活躍する場は様々だ。

こちらは37名の執筆者による集合知。

ファシリテーションを定義し、拡散と収束を促す仕組みがフレームワークと事例を通じて紹介。さまざまな場面でファシリテーション発揮され、事例で学びを得られる。

facilitateの定義を「促進する」「(事を)容易にする」としている。

人々が集い、何かを学んだり、対話したり想像しようとする時、その過程を、参加者主体で、円滑かつ効果的に促していく方法

引用:p6.はじめてのファシリテーション 

プロセスで大事なのは、共有→発散→収束→決定とまとめている点がよく、この発散を促す役割がファシリテーションの醍醐味に思う。

ここで用いられる言葉を使って以下、歴史をたどってみる。

ホワイトボードを使っていた時代

2010年前後の感覚だと、ホワイトボードがあればファシリーテーションは容易だった。ファシリテーションの心得の一つとして、参加者の認識を合わせる必要がある。そのために何の話をしているのか?に板書きが役立った。

会議では、テーマや話し合う内容など準備が必要だが、話し合いの最中は意見を並べる必要がある。その意見の並び具合やまとまり具合はホワイトボードがあれば簡単だった。

場の認識を合わせる方法

本書はタイトル通りで、目線を合わせる方法だと共感できる内容。これができないと意見の発散と集約はない。書いて見せる。それにつきる。道具やツールといった仕組みに人はできるだけ乗っかるといい一例だ。

人は自然とホワイトボードの前に立ち色違いのペンをとる。それがファシリテーターデビュー。これで通用した時代があった。

ところが、リモートワーク時代の到来となった今はまた異なるファシリテーション能力が必要になる。そのヒントをいつもの書籍巡りより探って見る。

2000年代から2010年代後半までの流れ

先ほど紹介した本が2008年で2015年に読んだ。他だと、ゲームストーミング ―会議、チーム、プロジェクトを成功へと導く87のゲーム。プロセスをゲーム化する話でここでも道具やツールの工夫の必要を感じた

例えばポストイットはホワイトボードと合わせて強力だった。今も通用するやり方だ。ここで大事なことはファシリーテーションに道具が必要だということだろう。

ファシリテーターは決める人ではない

また、「会議ファシリテーション」の基本がイチから身につく本より、2000年代初頭は会議そのものをどうにかしないといけない状態だった。

この著者は会議ファシリテーター普及協会と、初期の日本のファシリテーター普及側の人。その主張で参考になるのは、意見の整理をファシリテーターが行わないこと。これがのちのファシリテーター像のモデルに思う。

参加者が常に当事者になる仕組みが大事

個人で考える時間を与えることやアイスブレイクの必要性も紹介していた。当時は会議の議長が決める人だったところから、会議の目的を合意形成型の場にしたことがパラダイムだった。

この本で面白いのは、整理や時間厳守すらも発言者の責任に委ねる点。ファシリーテーターは決める立場ではないのだ。俯瞰の目を持つと、整理しがちな立場がファシリテーターのポジションな点には注意したい。

なんでもかんでも決めたり仕切るのではなく、それがみんなでできるために委ねる立場の要と言えるだろう。まとめつつ手放す役割だ。

最近のファシリテーションの傾向

リモートワーク到来の直前の時代だと、ビジュアル・ミーティング 予想外のアイデアと成果を生む「チーム会議」術の本にあるような実践が盛んだった。

グラフィックレコーディングは絵心が欲しい

本書のように、文字だけじゃなく図解による可視化が盛んだった。この辺りからツールもビジュアル操作しやすいものが出てきたように思う。

私も会議中にリアルタイムで図解に近い説明は必要だと日々感じた。ホワイトボード時代であっても丸で囲ったり色を変えたりしたと思うが、その流れの先に思う。ただ、誰もができる点ではない能力でもあると感じた。

ただ、これはファシリーテーション+新しい役割の人とも言えるので、いろんな役割分担が求められる傾向と言えるかもしれない。書記と議長を分けるように。

オンラインミーティングの場では同時編集状態が望ましい

このホワイトボードやアナログの場での全盛の時代から、最近はオンラインミーティングが主流になってきた。つまり、ホワイトボードとは別のツールが必要で、ビジュアル化も求められるようになったわけだ。

オンラインミーティングの場でもツールの選択肢が大事だ。チーム同意を得て視線が集まる場を用意できれば、ファシリテーションしやすいことに変わりはない。

その上で可視化に向いたツールは、GoogleのMeetと連携しやすいJamboardだろうか。

ホワイトボードの前で付箋紙を使っていた感覚をそのままオンラインミーティングと合わせて活用しやすい。Miroも人気だ。また、みんなで特定の文書をリアルタイムに共有編集しやすいツールやソフトもある。

このように文字情報であろうと図解であろうと、適切なツールの選択がオンラインであっても、プロセス改善に活用される。図解をせずとも、デジタルな場かつ文字情報onlyでも見る視点が定まれば話題はぶれにくい。

大学や地域交流の場で求められるファシリーテーション

なお、定義で紹介した本より、ここ数年でファシリテーションのあり方も変わってきたことがわかり、規模に限らず応用が効く現場の網羅性を感じる。最近は教育現場でも用いられているようだ。

子供の現場でもファシリテーションが求めらているらしい。この本で伝えていることは、時間や目的をあらかじめ決めることで、ここでは時間の話が登場する。

こちらの監修は、日本ファシリテーション協会。ややファシリーテーションの適用範囲は狭いが、先ほど紹介した本同様に共有→発散→収束→決定の流れを大事にした内容だ。

先ほどデジタルな場を紹介したが、人と人が集まることで知の想像につながる現場も多々あるということだ。

ファシリーテーションは時間管理が求められる

書籍からたどると、目的やゴールをはっきりし、ツールを使い分けて、合意形成を得る場を作ることがファシリーテーションに求められていることだと見えてきた。

その際に、場の発言の発散を促すわけだが、ここで大前提を見直したい。時間を守ることだ。集まるということは人の時間を使う。集まる場では、この時間を大切に扱うことは何をするより前に抑えたい。いや抑えている。

ゴールを設定したら、時間も一緒に設定する

会議では、時間を決めてスケジュールを設定してみんなで集まるのはなぜだろうか?

まず集まる人を決める。次に時間の確保。内容の詳細は決まってなくても、先に時間までは決めることすらある。当たり前にしてしまっているが、まず時間なのだ。

場において共有→発散→収束を制限時間内で決定するには、この確保した時間を有効に使うことが求められる。時間は大事で、時間を守ることからファシリテーター体験を始めると良いのではないだろうか。

理想はみんなで時間を意識し守ることだが、会議の延長にしろ確保にしろ発散のプロセスに集中するためには、場づくりを観察するファシリテーターがいると心強いだろう。

時間は5分や10分刻みの感覚を持つ

まずはゴールを決めましょうとワンセットで時間を決める。そこからファシリテーションを始める

この時、時間の感覚が大事で、1時間と決めて1時間で何かを話すというのでは、見積もりが大雑把すぎる。5分、10分単位で予備時間を持ちつつ話し合いたい内容を事前準備しておきたい。

私がファシリテーションが得意だと思えるのは、この時間管理の感覚を意識しているからかもしれない。ただ、どうやって鍛えられたのか振り返ると、プレゼンをたくさんこなしたからだと同僚と話をしていて気付かされた。

プレゼンは時間が必ずゴールとしてある

プレゼンを通じて、限られた時間の中でゴールを明確にして、伝えて質問を受けて対応する。これを一人でこなすことが求められる。その限られた時間でやりくりすることは、ファシリテーションでも同様に求められることだ。

この経験を活かせばファシリテーターの初めの一歩ができるはずだ。

よって、ファシリテーションが得意になりたい人は、時間を守ること。そのためには、プレゼンを数多くこなすこと。これがコツじゃないだろうか。人前で話す慣れにもなる。

まずは、時間を意識しつつ発言を促せば自然と話がまとまり、傾聴だと質問方法といったテクニックはそのうち覚えていけばいいのではないだろうか。まずは時間を守ろう。


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