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マネジメント3.0をミャクミャクと読み解く

ミャクミャク様とマーフィーは似ている。

マーフィーとは、Management3.0モデルをシンボル化したものだ。6つの目を持ち、マネジメントのヒントを我々に教えてくれる。ミャクミャク様こと大阪・関西万博の公式キャラクターも実は目が6つある!(しっぽ)。

もちろん、ただの偶然だ。

さて、改めてこのマネジメント3.0  適応力の高いチームを育むための6つの視点を読んだ。アジャイルや認知心理学を意識して組織活動していた人全てに響く内容に思うのでここにまとめてみる。

マネジメント3.0とは何か?

Management 3.0 = 人ではなく、 システムをマネージするべき

引用:http://management30.jp/

一言で言うと、システムをマネージしようというお話。1.0と3.0の違いは本家サイト日本語訳監修より以下となる。

マネジメント1.0は、上位マネジメントが正しい指示を出し、統制するというモデル
マネジメント3.0は、組織自身を下界に適応する複雑系(複雑適応系)にすることを目指す

引用:マネジメント3.0モデル入門(120分版)P.10
https://speakerdeck.com/takufujii/management-3-dot-0-moderufalseetusensu-qian-bian?slide=10

VUCAを筆頭に、世界が複雑系の時代に突入したと考える。そこで、この状況に対応する組織そのものを複雑適応系にすれば素直な戦略となる。これを本書では6つの視点を交えて解説している。

ちなみにその6つの視点とは順に以下となる。

  • 人々を元気づける(Energize People)

  • チームに委任する(Empower Teams)

  • 制約を揃える(Align Constraints)

  • コンピテンスを育む(Develop Competence)

  • 構造を成長させる(Grow Structure)

  • すべてを改善する(Improve Everything)

話の要約自体は、翻訳者こちらにまとまっているが、本書自体が読み物としておもしろい。気になった箇所を以下ピックアップしつつ紹介して読み解いてみる。

ちなみに原初のタイトルは「Management 3.0: Leading Agile Developers, Developing Agile Leaders」。Agileが含まれていることに注目したい。本書は、ソフトウェア開発の歴史を読み解くことでもあるからだ。

アジャイルリーダーの育成とはなんなのか。

アジャイルとマネジメントを考える

アジャイルソフトウェア開発の話が第2章となる。アジャイルソフトウェア開発宣言(日本語訳)から、ソフトウェアクラフトマンシップ宣言日本語訳例)の潮流も紹介。のちの章ではスキルと規律の話が登場する。

ここでは、ラインマネジメントとプロジェクト管理が一緒くたに語られがちなことを忌避している点が印象的。アジャイルを前にしたマネジメントは複数のチームをマネジメントすることとプロジェクト管理は分けるべきと。

それは、つまりマネジメントが全ての責務を負ったりそもそも不要だったりするわけではないと説く。その後の章で複雑系の話を整理。イノベーションが必要となる3,4章の流れ。ここで5つのイノベーション要素に注目する。

それぞれ、知識・創造性・モチベーション・多様性・個性となる。知識+創造性は知識創造(野中郁次郎の話も登場)でもある。個性もおもしろく、XPや美徳群(信頼、感謝、誠実さ、敬意 …etc)を例に属性を語る。

そして多様性が複雑系の鍵となる。

多様性は、複雑系において平均を使えないということも意味する。

引用:マネジメント3.0  適応力の高いチームを育むための6つの視点
p.70

平均の考えは線形の考え方だ。複雑対応系においては非線形に物事を考える必要がある。これは人間の癖で、以前ブログでも書いた通りで、人間は平均を思考に求めてしまう。これでは中々イノベーションへとつながらない。

マネージャーは、そのシステムに責任があり、それゆえ人々の継続したモチベーションに責任があるのだ。

引用:マネジメント3.0  適応力の高いチームを育むための6つの視点
P.68

モチベーションは継続的な元気づけとなる。それも継続的な元気づけ。これらの歯車が噛み合うとイノベーションとなる。第5章では、この元気づけについて解説。これがマーフィーの6つの視点の一つ目となる。

モチベーションの定量化は可能か

内発的・外発的モチベーションを分けるのは基本。

次に見える化が必要で、定量化を一つの案内としていた。ただ、最後に語る価値観の共有がマネジメント視点ではチーム成長(本書ではチームビルディングの名付けを意図的に避けている)に必要と見る。

以前、価値観リスト(適当に検索した日本語キーワードでも十分使える)を使ってみたことがあるが、人の価値観というのはそもそもコロコロ変わる表層だ。本書でも科学的にはビックファイブも案内している。

コロコロ変わらない価値観を得るには、ある程度の自己認識が必要となる。幼少の占いから始まり、本書紹介のエニアグラム性格論クリフトンストレングスなどなど。また、マインドフルネスとなるのでここは割愛する。

価値観の共有に私はこう思うという視点と、周りはこう思っているという視点の照らし合わせでギャップを埋めていくワークショップ(ドラッカー風エクササイズ)が個人的にはオススメ。

これも一つのコミュニケーション。チームのモチベーションの根っこの確認になる。これがわかると、ビジョンの共有や目指す方向性の確認がやりやすい。私はこうであなたはこうだの前提が共有されるからだ。

自己組織化は庭師の発想でチームを育む

第6章は自己組織化。二つ目の視点チームを委任する話が語られる。本書ではこの委任と委譲を厳密に分けて注意深く段階を提案しているのが特徴的。先ほどのチームビルディングも用語を整理している。

チームをマネージするということでも、用語法はここでも適切に適用されていない。チームを構築(ビルディング)するという代わりに、チームを育むと言ったほうが良い。

引用:マネジメント3.0  適応力の高いチームを育むための6つの視点
p.132

以後、チームを育むと使いたい。適切な権限レベルを成熟度に合わせて委譲し続けて委任しきる。自己組織化するということはマイクロマネジメントをする必要がなくなるということ。

マネージャーにとって、チームメンバーがチームを去りたくないという以上の賛辞を私は想像できない。

引用:マネジメント3.0  適応力の高いチームを育むための6つの視点
p.136

そして、この自己組織化は本書はデフォルトプラクティスと解く。これが強烈で、そもそも生物学で例えるのであれば、自己組織は当たり前と捉えるのだ。その上で育むにはある程度の制約が必要となり、第8章へと続く。

システムを管理し、人々を管理しない

ここで、システムを管理し、人々を管理しない(P.173タイトル)。これが、マネージャーの3番目の責務となる。システムを育むには、守り、そして方向性を示すことになる。つまり指示が時には必要になる。

9章の前にマネージメントvsリーダーシップが語られがちな点に警告。役割の一つとして表裏一体なのか包含なのかを整理。それが意識できれば制約を揃えるためのゴール設定することができる。

これが、チームにルールを生み、ミッションやビジョンを気づかせることになる。10章でルール作りに必要な要素を解説しているが、ここではミーム学とミームプレックスに納得いった。

いろんなツールやプラクティスがあり、それをミーム(本書ではクリスマスのサンタやツリーに例えた集合体)として捉えると、いろんな要素を集合させたXPなりアジャイルなりスクラムなりが有効であることに気が付く。

プラクティスの集合体から学ぶ点では、スクラムが入りやすいことは実感する。ここでは規律の意識も入る。つまり、ルール作りの意識も芽生えるのだと気付かされた。

構造を成長させるには、時に規律も必要

これは、先のソフトウェアクラフトマンシップ宣言の話にもつながる。Clean Craftsmanship 規律、基準、倫理という書籍も最近出ており、規律も気にかけることが求められていることを知る。

この4つめの視点コンピテンスは、第11章も交えて語られる。その教育や支援は、GTDだのフィードバックループだとのコミュニケーションだのを自身が改善し、自らが示すまとめで影響力をとなっていた。

その示し方や影響力となるのが5つめの視点。コミュニケーションの話になる。スペシャリストとゼネラリストの違いと必要性を論じつつ、マネージャーだけでなく、チームが組織そのものを調整できるよう案内する。

改善サイクルを回す

最後の6つめの視点が改善。不確実性を受け入れ、変化を受け入れ、適合する必要があることを示唆している。これが第14章,15章と続く。ここは、非線形な地形を歩むがごとくなので、一般論として頭に入りやすい。

最終章を読んでのまとめ

まとめきれないと著者もいっているが、カオスを扱いアナーキーを扱いカオスに終わる。しかし、このモデルが間違っているとしても、今までのモデルもあっていたとは限らない。まるで、資本主義モデルのようなお話だ。

たぶん物事を単純にしたがることは時には有効だが、現実的にはとては複雑だという現実かもしれない。モデルはモデルに過ぎないことを忘れないようにしたい。

その意味では、ミームの考え方が個人的には帰着点に思う。プラクティスの集合体は価値観があいさいすれば、まずやってみるということが可能だからだ。行動することはできる。

その後、仮説検証を前提に、データをとり、向き合い、線形に考えないようなチームづくりとする。そのシステムを継続的期支援することがマネージメントなのかもしれない。

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