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若いうちに身につけたコミュ力は裏切らない

12.将来エグゼクティブを目指すあなたへ

 物事を実行できる人や成果を出せるリーダーに年齢は関係ありません。エグゼクティブにふさわしいコミュニケーション能力を身につけるタイミングは、早過ぎることも遅すぎることもありません。あなたが「できる人」を目指すならば、早く習得すべきです。

 日本に限らず、世代によって話し方は異なります。また、同じ人でも一生を過ごす間に話し方は変わります。周りの環境に応じて、子供には子供の、学生には学生の、社会人には社会人の話し方が「それなりに」身についていきます。幼少期や学生時代はそれでも問題ありませんが、実社会に出てエグゼクティブを目指すのであれば、それなりの能力では通用しません。何事も、意識と努力のほんのわずかな違いが日々積み重なって、大きな成果の差につながります。これがアマチュアとプロフェッショナルの一番の違いです。

 発信のための「相手に伝える力(コミュニケーション能力)」は、大学生活が折り返し地点を過ぎ、企業のインターンや採用面接のために学ぶのでは遅いと思います。小中学生のうちにカジュアルな話し言葉と基本的な書き言葉を確実に身につけ、高校から大学の前半にかけてじっくりと伸ばしていくのが理想です。書き言葉とカジュアルな日常会話の中間に位置する言葉、第3言語ともいえる「発信モードの話し言葉」を早い段階で習得できれば、社会との接点を早くから意識できますし、将来のキャリア選択にも役立ちます。発信モードの話し言葉を違和感なく使えるようになるまで、音読トレーニングを中心に数年かけて取り組みたいところです。そして何より、自分が話す言葉や周囲の人が話す言葉に関心を持つこと、それが将来の糧になるのです。

 このように早い段階で話し言葉に関心を向け、トレーニングに取り組むのは素晴らしいことですが、注意点を2つだけ挙げておきます。


 まず、若い頃から表面的、技術的な話し方(デリバリー)にこだわり過ぎるのは本末転倒です。話の内容を充実させることが先決です。感性豊かな学生時代は、読書等のインプットに重きを置きながら、アウトプット(発信)にもバランスよく取り組みましょう。例えば、ニュースを活用した音読とグループでの感想や意見の交換を組み合わせると効果的です。また、話し方や読み方に変なクセをつけないように気を付けましょう。放送部や演劇部の生徒に見られがちですが、変わった読みのクセを付けてしまうと元に戻せなくなります。プロらしく聞こえるかも知れませんが、相手に伝える能力としては役に立ちません。個性をつぶし、意味の伝達を妨げるような話し方を安易な模倣で身につけるべきではありません。自分の頭で考えながら音読トレーニングに継続して取り組み、クセが付かないうちに基本的なノウハウを獲得できれば一生の財産になります。

 もう一つは、若いうちに「聞く力」をしっかり身につけておくことです。他人の話に辛抱強く真剣に耳を傾けるのはコミュニケーションの基本です。相手が話す内容を正確に聞き取り、適切な質問をして情報収集や議論を進める訓練にもなります。

 最後に、学生が避けては通れない英語学習にも一言触れておきます。外国語の習得にも音読は効果を発揮します。ただし、英語学習としての音読は、発信に向けたリズム感の獲得に重きを置けば十分ですので、完全に意味が理解できた文章を楽しみながら読みましょう。あごの動きや口の開き方を英語のリズムに慣れさせるため、若いうちから続けると効果があります。また、発信につなげるためには、ネイティブスピーカーの発音を真似ることが効果的なので、ニュース等のシャドーイング(聞き取った音声を真似つつ、影(shadow)のように追いかけて復唱していく方法)もお勧めです。(つづく)

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