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風になったモーリスよ、永遠に。

和訳すると「地球、風、火」となるバンド、EARTH, WIND & FIRE。なんともすごい命名だ。創設者兼リーダーのモーリス・ホワイトの占星術の天宮図に「土、空気、火」があったのだが、空気=エアーはなんかしっくりこないので代わりに風=ウインドを使い、名付けたんだそう。

そのモーリスはもうこの世にいない。2000年にパーキンソン病と診断され、2016年2月3日に永眠した。享年74歳。合掌。

そんなEW&Fは元々ジャズ・ドラマーとして活躍していたモーリスが1970年にシカゴからLAに拠点を移し、本格的に活動を開始したバンドだ。拠点を移した後、シカゴから呼び寄せた他の2人のメンバーと当時まだ大学生だった弟のベーシスト、ヴァーダインに声を掛け、西海岸に向かわせた。

ヴァーダインはこの時のことを「絶対に忘れないよ。僕は他の土地に行ったことがなかったからね。もう少しで行かないところだった。でも、モーリスからの電話で、別の人生が始まっていたんだ」と語っている。

モーリスは他のメンバーを入れるべく、LAでオーディションを行い、結果6人のメンバーを加え10人編成の大部隊をなすことになった。

その後、2枚のアルバムを出し、今後に期待が馳せられる状況だったが、短期間で成功を収められないとメンバーが不満を言い出した。結果、弟のヴァーダインのみが残り、他のメンバーは全員EW&Fを去ってしまったのだ。

モーリス達は再編をはかるべく、改めてオーディションを行いながら、後に看板ボーカリストになるデンヴァー出身で既にLAに来ていた、ファルセットヴォイスが売りのフィリップ・ベイリーに声を掛けた。彼はEW&Fに参加することとなる。

実はこれより前にフィリップは地元にいる時にEW&Fの曲をカヴァーし、クラブで演奏していたことから彼らがデンヴァーに来た際に前座を務めていた。この時にフィリップはモーリスのことを「普通の人とは全然違う種類の人だと思った。その頃ですら、相当のカリスマがあった」とコメントしている。

そんなフィリップはEW&Fに参画した時のことを「モーリスはこの芸術様式に尊厳の意識を持ち込もうと真剣なのが分かったんだ。遊びまわって、女の子をものにするんじゃなくて、芸術に対する誠実さなんだ。そこに興味を惹かれたんだ」と回想している。

EW&Fはフィリップが誘った彼の地元の友人ミュージシャンや、オーディションで獲得した他のメンバーらで再出発することになる。これが栄光の始まりだった。

コロムビアレコードから出した次のアルバムは後にゴールドディスクとなり、次のアルバムの制作に取り掛かる。この間に若干のメンバー変更があったのだが、その時に新規加入した1人にギタリストのアル・マッケイがいた。

そして、続くコロムビアからの3作目が彼らの最初のプラチナ・アルバムとなる。また、この時に後の彼らを大きく変えることとなるチャールズ・ステップニーという名プロデューサーとの出会いを果たす。この出会いがEW&Fの更なる成功を後押しすることになることを、彼らはこの時知る由もなかった。

つづく

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