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デジタル時代のブランディング

先日、中央大学ビジネススクール名誉教授の田中洋先生から興味深い話を聞きました。「デジタル時代のブランディング」についてです。かつてマス広告隆盛の頃のブランディングではブランド・イメージが大事でした。例えば「マルボロといえばカウボーイ」というように「メタファー(喩え)」を使うことでイメージ上の差別性を作り出すのが主流でした。この考えは現在のデジタル時代でも通用する普遍的なものだと思いますが、デジタル時代のブランディングでより重要になるのは「経験化」「信号化」「理念化」だと田中先生はおっしゃっていました。ちょっとわかりづらいかもしれません。簡単に説明すると、次のようになります。

経験化について。「多くの製品サービスがあふれる現代では品質も機能性もだいたい想像のつくもので、詳しく吟味して買うよりも、まずトライアルしてみて使ってみて(経験してみて)気に入ったら生活に取り入れる。ブランド体験・顧客体験がブランディングの入口になる」。信号化とは「そのように経験を先走らせるプロセスでは実感としてブランドが良かったかどうかのみが印象として残る。ダイレクトにシンプルに(まるで信号が青に変わるように)ベネフィットのみが印象として残る」。理念化とは「ベネフィットのみが印象に残る一方で、ブランドの理念を伝えることが共感を生み、仮に同じベネフィットのブランドでも大きな差別性を生む(ブランドの理念化)」。

こうしてみると生活者がブランドを経験化、信号化するスピードはかつてよりもかなり速くなっているのだろうなと思います。そして理念化。ここがかつてのブランド・イメージの機能を代替しているのだと思います。しかもメタファーのような複雑な構造のもとに何かのイメージを纏うのではなく「このブランドはこのような考えを持つ存在なのだ」ということを率直に伝えるようになっています。考えてみれば、僕がここ数年かかわったブランドのほとんどはストレートな理念のものが多い。そういうものでなければ生活者や顧客には伝わらないのも事実です。

「私たちのブランドはどんな考えのもとに存在しているか」。これまでも何度も自らに問いかけてきたものです。そして抽象度の高い質問ゆえに様々な答えが様々なレイヤーで出てくる。時には「理念」という言葉の定義に翻弄されることもあるでしょう。「理念とパーパスはどう違う?」とか。個人的には「そこまで厳密にならなくても良いのでは?」と思いますが、ここが難しいところでもあります。一度、このような話もいろいろな会社の経営者やマーケターと忌憚なく話してみたいものです。または自社の理念について考えてみたい方は連絡をください。

info@bmwin.co.jp

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