毒と鎖

人が思うよりも
この毒はいつまでも廻り
この鎖はとてつもなく頑丈だ

絶とうとすればするほど
毒と鎖は絡みついてくる
身動きも取れないほどに

人には見えない毒に侵され
人には見えない鎖に繋がれて
今の今まで生きてしまった

僕も君もあなたも
つらくてもつらいとは
ずっと言えなかった

今現在も続く
異常なほどの空気読み
気がつけば同調圧力

笑えないよな
心から笑えるのは
本当に恵まれた人たちだけだから

「生きるのがしんどい」と
見える言葉に残しても
あっという間に流れていく

「死にたい」と言えば
「ひとりで抱えないで」と言われるが
結局ひとりで抱えてしまう

「心配だ」と言われても
その言葉にとらわれて
手も口も身体も動かせない

悩みも悲しみも
簡単には言えない世の中を
苦しみながら生きている

けれど今は
毒と鎖で
思うようには生きられない世界にいる

そういうときに
言いたい言葉はいつも
言ったとしても一瞬でかき消される

そんなことを言えば
さらに淀んだ空気が
一瞬でこの生きている世界を支配する

逃げられず
逃れられず
もがく

思い出すことがある
思春期の頃の話
今の僕に繋がる話

好きなこともできず
あれをやれこれをしろと
嫌なことをさせられたこと

誰にも分かってもらえなかった
我慢するしかなかった
ずっとそんな日々だった

操り人形のように
僕の精神は無視され
心と身体に傷が増えていった

未だ消えないその悲しみが
今の僕を形成したのなら
あまりにも残酷な話だ

誰かの「生まれたくなかった」は
きっと僕にも君にもあなたにも
覚えのある痛みだ

呪縛だ
家族も仕事も友人もこの社会も
いつのまにか毒と鎖になっていた

束縛だ
複雑に絡み合う蜘蛛の糸だ
解こうとすればするほど苦しむ

それが今でも続いている
見えない毒でできた傷も
見えない鎖でできた痣も残る

「つらかった」と言えるには
相当の時間がかかった
それはあまりにも長かった

だから人が思うよりも
この毒はいつまでも廻り
この鎖はとてつもなく頑丈だ

絶とうとすればするほど
毒と鎖は絡みついてくる
今でも身動きが取れない

いつかこの毒が抜けて
この鎖が外れたら
自由があるとは決して思えないが

この悪しき轍を
踏ませてはなるまいと
反面教師にして強く誓う

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