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また明日会おうという意味の「さようなら」ともう会えないという意味の「さようなら」では重みが違う

ボクの知り合いに財務省の女性がいる。もう10年以上勤めているベテランなのだが、この方とは実は同級生なのだ。社会人学生というやつだ。入学から一緒で、この秋からイギリスの大学院に行くらしいということだった。

そんなことを全く意識せず、ボクは何も変わらずいつもと同じように登校して教室で彼女にあった。我々の学校の学生の日常は、授業を受けてからさらに自習室で自学という超ハードなスケジュールだ。

そして、今日もいつものようにみんな帰る時間となる。別に決まった時間に帰るわけではないが、ボクは誰より夜遅くまで残るつもりだった。ボクは自習室の机に向かったままだった。まあ、勉強はしていなかったが。気がつくと、

「では、お先に失礼します」

彼女がドアを開けて帰ろうとしていた。ボクはその姿を見てハッとした。そういえば、あれ?今日で会うの最後じゃないか?夏休みもあるしもう、会うことないじゃん。

「今日で合うの最後ですよね?」

確認してみた。どうやらお互いの登校日を数えると最後だった。帰ってくる頃にはボクは卒業してるし、どこにいるかも分からない。それからしばし雑談することになるが最後だから色々聞いとかなきゃと思って、キャリアに関する質問をぶつけてみた。彼女は財務省。エリート中のエリート経歴。

「日本社会で働いたの正解でした?」

我ながら挑発的な質問だったと思う。しかし、

「不正解」

即答で返された。年功序列が残るシステムが嫌いらしい。しかも、この留学を機に財務省を辞めるつもりらしい。爆弾発言だった。キャリアを投げ出して、国際協力系の仕事に就きたいとのこと。場所は日本国内外どこでもいいと。

何か聞かなきゃと思って、焦って投げかけた質問だけど正直驚いた。留学がここまで人を狂わせるのか。いや、自分に大切な物を気づかせてくれるのかと。そして、キャリアを投げ出してでもやりたい事って誰にでもあるのだと。たった数分の雑談だったけど、1番内容のあったものだった。

彼女からキャリアよりも大事な事、自分がやりたい事をすべきなんだと学んだ。安定やお金で職を選んでも、最後には物足りなくなる。それならすぐにでもやった方がいいのじゃないか。勇気をもらった。

そして、彼女は

「さようなら」

と言い残し、帰っていった。また、どこかで逢えるといいな。その時には、ボクらはまた強くなってて、なりたい自分に近づけてますように。