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【ガンはメッセンジャー 1】とにかく汗が止まらない!

きっかけは、「汗」だった。

と言っても、もちろん「汗」でガンが判明したわけではない。もともと汗っかきだったのだが、ある時から異常に汗をかくようになった。もう頭、顔、脇、お腹、太ももの裏、足の裏まで、全身が一気に水でも浴びたように汗だくになるのだ。

ああ、ついに来たか……と思った。更年期だ。45歳。ちょっと早いけどなくはない。よく聞いたことがあった。更年期になると汗をかくと。それに、もうここ数ヶ月生理が来ていない。これは若くして閉経するタイプなのかとちょっと落ち込んだ。

体の異変に気がつくとすぐに病院に行くタイプではないが、汗は別だ。私は取材ライターなので、初対面の人と接することが多い。その時に汗だくになっていたら相手も私も気になって絶対にいい取材などできない。それだけは避けたいと思い、近くにあるレディースクリニックへ行った。更年期障害の相談もできることをサイトで確かめて。

診察の時、先生に「更年期だと思うので、なんとか汗を止めたいんです」と話した。すると先生が「汗をかくのはどのへんですか?」と訊く。「頭から足の先まで、本当に全身です」と答えた。次に「どんな時に?」と訊かれたので、「何かに集中した時とか、一生懸命になった時です」と答えた。「今も、先生に伝えようと思って一生懸命話そうとすると、汗が出てきました」と額の汗をハンカチで拭う。

そう。わかりやすく言えば、まつ毛にマスカラを塗る時、急ぎのメールを書く時、テレビで興味のある話題が出た時、面白い本を読んでいる時など、自分が集中したり興奮したりすると、一気に全身から汗が噴き出るのだった。当然、取材の時も汗だくになる。

それを伝えると、先生は「じゃあ、更年期じゃないですね」と言った。更年期障害の汗というのは、本人の感情や外気温などに関係なく、急に「顔から上だけ」汗をかくのだという。そうだとしたら、確かにまったく症状が違う。では何なのかと問えば、「おそらく自律神経の問題」とのこと。ここではそのような治療はしていなかったのであきらめて、帰ってまた別の病院を探そうと考えた。

もう1つ、このクリニックで相談したかったのが生理不順だった。それに関しては薬を出してもらうことができた。言われた通りに薬を飲むと、ちゃんと決まった日に生理がくるらしい。半信半疑だったが、とりあえず更年期ではないことがわかったので、生理不順だけでもなんとかしようと思い、薬をもらってクリニックを出た。

それが、ガンと向き合う日々の始まりだとも知らずに。

連載【ガンはメッセンジャー】について
2016年にガンになり、手術と抗がん剤治療3クールを経て根治した。……と思ったら、3年後の2019年に再発。もう「根治」の可能性はなく「延命治療」しかできないと言われ、それから抗がん剤治療を9クール受けた。そして今は何も治療をせずに1年以上経つ。よく「闘病記」や「治った」人の話は聞くけれど、私はまだガンが骨盤リンパ節や腹膜に散らばっている。ステージ4だ。定期検診は受けているが、治療は一切していない。仕事もするし、お酒も飲むし、キャンプもするし、痛みなどもない。この奇跡の話をこれから少しずつ書いていこうと思う。日本人の二人に一人が生涯でガンになると言われている時代。<治療法>ではなく、私のような新しい<ガンとの付き合い方>が、ご自身や周りの人の参考になれば、うれしいです。

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