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【最近読んだ本】旅は何かを気づかせてくれる。人生をもっと足掻こう!

大学時代から旅をするようになった。
手段は電車と徒歩。時々バス。
「旅行」という言葉より「旅」のほうがしっくりする。
そんな時間を日本全国あちこちで過ごした。

旅に出ると、決まって小説が書きたくなった。
その頃は「一度旅に出ると、ひとつ物語が書ける」と言っていた。
それくらい「旅」というのは、何かを気づかせてくれる時間だったように思う。

原田マハさんの『さいはての彼女』を読んだら、あの頃の旅の空気を思い出した。

これは、女性を主人公にした4編からなる短編集だ。
本のタイトルにもなっている1編目「さいはての彼女」は、六本木ヒルズで会社を経営する女性社長が、沖縄でヴァカンスを楽しむ予定だったのに、なぜか北海道の女満別空港に来てしまうことから物語が始まる。

そこで「サイハテ」と名付けられたハーレーに乗る若い女性に出逢い、一緒に旅をすることで、忘れていた“自分”を取り戻していく。

2編目は、大手広告代理店を辞め、親友と一緒に旅をするようになった女性の話。
3編目は、職場の部下とうまくいかず、会社を困らせるために休暇をとって旅に出た女性の話。
4編目は、1編目でハーレーを乗りこなしていた若い女性の母親の話。

どれも旅の中での気づきがテーマだ。
厳密に言えば4編目の主人公は、実際には旅をしていないが、間接的に「旅」が物語のカギになっている。

旅の中での非日常的な出来事や小さな冒険、人とのふれあいによって、日常に埋没して見えなくなっていた自分自身を取り戻す、というストーリーは、読んでいて心地よかった。

特に印象に残っているのは、2編目の主人公が会社を辞めた後で親友からもらったメールの文章だ。

『会社を辞めた』ってメールから、しばし時間が経過したよね。
もう、行けるかな。そろそろかな。
ね、行かへん? どこでもいい、いつでもいい。
一緒に行こう。旅に出よう。
人生を、もっと足掻 あがこう。

人生を、もっと足掻こう。
いいフレーズだ。

その言葉通り、人生をこれでもか!と足掻く人々が描かれている。
読み終わったら、私ももう少しだけ人生を足掻いてみようかな、という気持ちになっていた。


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