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届かなかった小石

■大人にいじめられていた幼少期

小学校に上がる前なのは覚えている。
多分4~6歳くらいのことである。

私は当時実家の会社の住み込みの男性従業員達からいじめを受けていた。
叩かれたり、突き飛ばされたり、蹴られたり、スカートをめくられたり、それ以上のことをされたりした(最も大きな性的被害については別の記事で書くと思う)。
いじめられる時はだいたい2、3人の複数に囲まれていて、みんな楽しそうにニヤニヤ笑っていた。

私はちっとも楽しくないので、
なぜ私をいじめて笑うのか不思議だった。
そして暴力を受ける理由がわからなくて、ただひたすら怖かった。

今思えば、あれは経営者である祖父や父に対する腹いせだった。私自身にいじめられる理由はなかった。強いていうなら「やり返してこなさそうなおとなしい子供だったから」だろう。

■抵抗することは許されなかった

立場のよくわからない幼い自分でもだんだんと一方的にいじめられていることへの怒りが溜まってきて、どうにかしてやり返したくなった。ある日反抗の意志を込めて、作業中の男性従業員に石を投げた。

子供が持てるくらいの小石。
力がなくて全然届かなかった。
本人にはかすりもしなかった。

でもその男性従業員は、顔を真っ赤にして猛然とこちらに向かってきて殴りかかろうとした。
私は逃げ、激怒する彼を周りの従業員が諌めた。

ものすごく怖かった。


何が怖いって、普段無抵抗だった子供が石一つ投げようとしただけで成人男性が本気で殴りかかろうとしてくるおとなげなさや、
「あくまでこちらがいじめる側だからお前の抵抗は一切認めない」という傲慢で自分本位な姿勢が怖かったのである。
私には一切の非がないにもかかわらず。


■「家族は無償の労働力」という認識


しかし、家族は身内の私の言い分よりも他人の従業員の言い分を信じ、私がただいたずらをしただけだと解釈した。
なぜなら祖父や父親にとっては身内ですら単なる”労働力”で、
そして目の前で戦力になっている従業員との関係を維持する方を優先したからだ。
祖父や父にとって身内は「無償の労働力」だと思っていたのだから従業員よりも扱いが悪かった。

それからというもの、子供の些細な反抗に対しても全力で報復しようとする大人がとても怖くて、ますます抵抗出来なくなった。

(別の機会に詳しく書くが、私は成人後父の経営を手伝ったが、どんなに働いても毎月の役員報酬は一万円だった。まだタイムカードを切って働いている従業員やパートの方が、報酬が支払われるだけマシだ)

このように家族との関係をなおざりにすることが積み重なった結果、私の父母は離婚し、一家は離散した。当然の成り行きだった。



■安全な場所がない

私の住んでいた「家」というのは特殊な環境だった。

いわゆる一戸建てでも賃貸でもなく、四階建ての中高層建築ビルで、
地下と一階が工場、二階が事務所や応接室、三階が家族の居住スペース、
四階が住み込みの従業員(男性と女性の部屋に分かれている)の寮だった。

だから私は家の中ですれ違わないように、隠れて逃げ回った。
自分の家のはずなのに安全に生活することができなかった。

小石は私の精一杯の抵抗であると同時に、周囲や家族へのSOSだった。
でも私が投げた小石の意図を知ろうとする人間はいなかった。

私の周りには誰も信用できる大人がいなかった。
本来守られるべき幼少期に守られなかったことにより、
小学校に上がるころには私は解離性障害を発症していた。


■解離性障害とうつ状態


常に安全な場所がなく脳が危機を感じている状態だったので、防衛本能により意識を切り離すようになってしまったのだ。

気がついたら知らない道を歩いている。
今まで何をしていたのか覚えていない。
記憶力は普通なのに特定のことに関してだけ忘れっぽい。

そういうことがたまにあったし、人格解離まではいかなくとも物心ついた時から意識が二重だった。わかりにくいと思うのでこれも別の記事にできればと思う。

小さい頃の自分の写真を見ると、カメラ目線でない時は目が虚ろで半開き、
ぼーっとして猫背で力の入っていない、どう見ても異様な姿がたまに写っている。
正直見返すのが苦痛だ。そして、いくら経営で忙しいとはいえこの状態の子供を誰も異常だと気づかなかった家族もなかなかに異常だ。



■猫だけが心の支え



この件や家族との問題が重なって私の人間不信は根深いものとなり、
人間不信を通り越して人間嫌いとなった。
まだ動物の方が信用できる。動物の方が心を通わせてくれると思い、
私は飼っていた愛猫に救われた。

小学三年生の時に母親が出て行ったときはショックが大きすぎて感情を表に出せなくなっていたが、愛猫の前でだけは素直に泣くことができた。
今でも私にとって愛猫は実の家族より大切で、心の支えになっている存在だ。

■家族経営の闇

今、会社経営をしている人間に知ってもらいたい。

従業員にパワハラをしたらどこで報復されるかわからないということを。

自分のあずかり知らぬところで、自分の大切な人や家族が自分のせいで何らかの被害に遭っているかもしれない。

家族経営ならなおさら、経営と同じくらい家族を大事にした方がいい。
厳密に言えば、従業員との関係と同じくらい家族との関係にも配慮するべきである。
特に小中規模の家族経営者は、今の時代家族の理解が得られなければ早晩破綻するだろう。

大正時代から100年近く続き、老舗と呼ばれていた私の実家の会社でさえもそうだったのだから。





#児童虐待 #トラウマ #逆パワハラ #家族経営 #解離性障害

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