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無党派層の投票率を上げるには

注記:本記事は何らかの“根拠”や“実績”に基づくものではありません。詳しくは別記事「提案型無根拠記事のススメ」をご覧ください。

 現在の国政選挙は一般に有権者たちの政党選択の場所となっています。時々ミニ政党が出現してマスコミの話題をさらうようになることがありますが、現在ある主だった政党はそれなりの歴史を持っています。特に支持政党を持たない無党派の有権者たちは自分が知っているそれぞれの歴史を踏まえつつ、直近のそれぞれの政党の活動や選挙の時に掲げられる選挙公約を見て投票先を決めているように思います。
 しかし選挙公約を見ても多くの有権者にとってインパクトのある政策は主要政党に限って言えば現状ほとんどありません。確かに選挙公約を並べてみれば違いがあることは分かりますが、それらのうち比較的目立つ項目のどれも今自分たちが実現してほしい政策とは距離があるわけです。「距離がある」とは別段反対したいとは思わないものの、積極的に支持したい内容でもないという意味です。
 どの政党も他の政党に対して政策上で差別化を図ろうとする傾向がありますが、それにも関わらず各政党の公約を並べてみても、どのような違いがあるか分からない、という人が多いのです。確かに公約内容はそれぞれ違いがあります。しかしそれを読み込んでも自分たちの生活に直結した領域である政党を選んだ場合と別の政党を選んだ場合とで具体的にどんな違いが出てくるかがイメージできないのです。それぐらい各党の選挙公約は一見競い合っているようでも、政策としては抽象的過ぎて投票先の決め手とはなりにくいことになります。
 そもそも政治に関心がないわけでもないのに無党派になってしまう理由も考えてみる必要があります。前記のように選挙が積極的な政策競争の場になっていない期間が長すぎたことが一因にあるでしょうが、それ以外にも原因はありそうです。
 長く政治を見続けてきた人の多くにはどの主要政党にも何がしらの「嫌う理由」があることがその主な原因です。つまりどの政党に対しても“アンチ”であるがゆえに無党派になってしまうということです。各党の政策の違いがはっきり見えなくなると、無党派層は「どの政党が一番嫌う度合いが少ないか」という問題設定で政党選びをしなくてはならなくなります。しかしそんな問題に取り組んだところで楽しくはありません。はっきり言うと苦痛なわけです。
 仮に「嫌いだけど一番マシな政党はコレ」と決めたところでまだ有権者の苦痛は続きます。投票する時は当然ですが自分の意思としてその政党の名前を投票用紙に書かなくてはなりません。その時「本当はこの政党(またはその政党に所属する候補者)は嫌いなんだけど」という葛藤する気持ちを投票行動に載せられないことで更なる苦痛を覚えてしまいます。つまり積極的に「この政党に自分の一票を是非託したい」という思いで臨む他の積極的政党支持者たちの投票と自分の投票は違うのに差別化できないことに苦しむのです。
 このように選挙権を行使するのが「面倒くさい」という以上に葛藤しつつ政党を選ばなければならないことが無党派層の投票意欲を削いで棄権行動に走らせてしまっているのです。
 私にはこの投票行動における無党派層鬱憤を晴らすには「マイナス投票」を導入するしかないように思われます。「マイナス投票」とは他の通常の支持的投票を打ち消す効果を持つ投票です。理屈の上では支持的投票のみで選挙をすれば支持基盤が厚くて一位当選を果たすような政党・候補者でも多くの人々の嫌悪を集めれば落選させることができる制度です。
 このタイプの選挙を実施できれば少なくともどの政党も嫌いというタイプの無党派層の葛藤を大幅に減らすことが可能です。一般的には一番嫌いな政党を決めて投票すればいいのですから、前記のような葛藤を抱えるために棄権してきた多くの無党派の有権者を選挙行動に引きつけることが可能です。少なくとも落選運動が大幅にやりやすくなるため、その意味ではどの既成政党も嫌いというタイプの無党派層の中には大歓迎する向きも少なくないでしょう。是非を別にして投票する無党派層を増やしたいなら、この方策は有力です。
 一方で少なからず嫌われている自覚のある既成政党の多くは大反対するでしょう。また現実に導入するならかなり慎重に制度設計をしないと喜び勇んでマイナス投票をした人々でさえ多くが「こんなはずじゃなかった」と思ってしまう意外な結果をもたらすリスクがあります。その意味で実現可能性の高い方策ではないことも確かです。
 ただしそのことを承知の上で特定の組織、あるいはあらゆる方面を攻撃して支持を集めるタイプの政党や政治家にとって「マイナス投票の導入」を公約に掲げることは魅力的な選択肢になります。現状の選挙制度のままだとしても、多くの既成政党アンチの鬱憤感情を糾合して当選や党勢拡大につながる可能性があるからです。
 誤解がないように付け加えると私自身は現状の選挙制度を支持しているわけではありませんが、「マイナス投票の導入」を支持する者でもありません。ただ党派を問わず特定集団や誰かを攻撃することで支持を集めるタイプの政治家が増加している現状を見ると今後「マイナス投票の導入」を唱道するミニ政党が出現するのではないかと予測しています。
 そしてそのことが結果的に無党派層の投票率を上げることになるかもしれません。ただし選挙後の政治が多くの人にとってより望ましいものになるかどうかは定かではありませんが。


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