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詩集

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名無しの詩

名無しの詩

肌寒い風が、きみの髪をさらりなびかせている。
桜のあしあとを辿るように、僕は息を吐く。

吐いた息は白く濁ることなく余白をつくる。
きみとのあいだを冷たく隔てるように。

(見つからなかった花びらは孤独であることを
まだ知らないらしいよ)

掬われるために生まれたわけじゃないから、孤独なんて言葉は相応しくないけれど、まだ、の含みにボクが含まれていることを願った。 願っ た 。

  
     (

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いのり

いのり

どんな言葉さえも届かないあの空の麓で

平穏な日常が取りもどされることをいのり

がらんどうの街に立ち尽くした。

(あのおとはだれのあしおと)

空中を漂っている、あのひとは、どこへ還る

ちいさな画面のなかで、しらない、ひとが、  

泣いている

不和の衝動に取り残された小さな掌

握りしめた文字が温もりを生み

閉じた掌がいつか芽吹きますように

血塗られることを望みませんように

ひらひ

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—Transparent girl in blue—

—Transparent girl in blue—

❇︎Prologue❇︎

たなびく風に運ばれてゆく記憶の行先を、ぼくは知らない。けれど、この風はきっと誰かへと手向けられていて、紡がれ、結ばれる為に吹いている。そして、幾つもの月日を越えて、記憶のありかへと巡り着いたとき、ぼくたちはそれを、愛と呼ぶのだと思う。

01girl 『あめの温度』
あめの足音をなぞるように泳ぐ魚たち。
窓辺から届く草花の匂いが、紫陽花の彩りをつくり、
やがて、水のな

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