練武知真第31話 『掌はココロから生える事と知る為の武術』
中国伝統武術「形意拳」や「八卦掌」では、防御は勿論のこと、攻撃においても『掌』を使う事が多いです。
特に「八卦掌」では、その名称が「拳」ではなく「掌」と記されるほど、多彩な使い方をします。
真っ直ぐ掌面で打つ。
掌面を振り下ろして叩く。
側方から張り倒す。
手刀にして振り打つ。
両掌を使って挟み打つ。
関節技を極める。
指先で突く。
指を使って掴み、抉る・・・など、
リストアップしたらキリがない程、掌は重要な「武器」になります。
さらに、掌の性質を変え、
掌を硬くしては骨を砕き、
掌を柔らかくしては内臓にダメージを与える、
という使い分けもあります。
掌で相手の攻撃を捌き崩して、瞬時に掌で攻撃するといったように、
掌は瞬時に、そして、次々とその性質を変える事ができます。
また武器を扱う場合は、柔らかく持つのが基本であり、対象にインパクトする瞬間にグッと圧をかけるように握って、相手により深く斬り込むようにし、同時に反動に備えます。
いわゆる「手の内を効かせる」という事になります。
ここにもまた変幻自在な掌の妙法が含まれているのです。
では形意拳・八卦掌修行者の「掌」はどんな感じなのか?
実は形意拳や八卦掌では、動き自体が気功を兼ねており、正しい動作を繰り返すことにより、気の増量と指先末端までの気の流通を促します。
結果、内家拳修行者の掌は、肉厚ではあるが、ゴツゴツしていない事が多いように感じます。
このように闘いおいて非常に強力な武器となる「掌」。
しかし、闘いという目的を離れると、「掌」は人を癒す至極の器官となります。
人とハグをして、「掌」で包み込むようにその背中に触れることによって、その人に安心感を与える事ができます。
落ち込んでいる人の肩に「掌」を乗せる事によって、その人に励みを与える事ができます。
子供の頭を「掌」で撫でてあげることによって、その子に愛を伝える事ができます。
体が冷えてしまっている人を「掌」で擦ってあげることによって、その人の体に温もりを与える事ができます。
悲しんでいる人の手の甲に、そっと「掌」を重ねてあげることによって、その人の孤独を癒す事ができます。
普段よくする握手というのは、「掌」と「掌」を重ね合わせて、親愛の情を交換するコミュニケーションです。
「掌」は人を害します。
「掌」は人を癒します。
それはその時のココロの有り様によるのです。
その「掌」にどんな心を乗せるのか。
「掌」はココロから生え、外に向かって咲いている花なのです。
2024年9月18日 小幡 良祐
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