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同級生とすれ違う
駅のコンコースを歩いていて、同級生とすれ違った。地元に住んでいるとたまに同級生とバッタリなんてこともあるのだけれど、彼女は結婚して、私の実家から目と鼻の先に住んでいるため、今までも何度かすれ違ったことがある。
小、中、高と同じ学校で、同じクラスになることも多くて、結構仲は良かったのに、親友と呼べるほどの関係ではなかった彼女。それでも年賀状は今でもお互いに当たり前のように送り合っている。
今回すれ違った時も声をかけようか、と彼女の姿を目で追いつつ、結局そのまますれ違ってしまった。
こちらが母と一緒に歩いていたことと、彼女の方が私に気づいていなかったということもあるけど、
「ああ、今回も声をかけられなかったな・・」という思いで、遠のいていく彼女の背中を見送った。
と同時に「声をかけて、それから何を話すの?」というもうひとりの自分の声も聞こえる。
「Iちゃん元気?息子さんたちも元気?」ときっと私は尋ねるのだろう。でも多分そこから会話は続かなくなるような気がする。
Iちゃんは、これ以上真面目な人はいない、というくらい真面目で実直でおとなしい女の子だった。いつも同じ髪型、地味な服装、笑顔はあまり見たことがない、がり勉タイプ。物事をいつもしっかり考えていて、きっと今は良いお母さんなのだろうな、と想像できる。私も彼女とタイプは似ていたのでIちゃんと一緒にいて違和感はなかったし、気が合うと思っていた。でも、なぜ何度も街ですれ違っても声をかけられないままなのか、と考えてみた。
それはきっとIちゃんが私の過去を全部見てきたような気がするからだ、と気づいた。小学生の頃もよくいじめに遭っていたが、中1の時にクラス全員に無視されるという事態に耐えていた私をIちゃんは知っている。あの頃、お弁当をひとりで食べながら、私はIちゃんに助けてほしかったけれど、おとなしい彼女が、私のことを悪くは思っていないとしても、私を守ってくれる勇気がないこともわかっていた。立場が逆でも、きっと私はIちゃんを助けられなかっただろう。
それから同じ高校に進み、大学ではさすがに離れてしまったけれど、大学時代も手紙のやり取りは続いていた。ただ、彼女は大学時代もずっと真面目で変わらなかったけれど、私は大学で弾けてしまい、華やかな世界に憧れたり、牛乳瓶の底のような分厚い眼鏡をコンタクトレンズに変えておしゃれにかまけたり、モテ期に入ってIちゃんへの手紙も男の子の話題ばかりで、どんどん彼女と距離を感じるようになっていった。でもどんなに華やかな世界で明るく振る舞っていても、いじめられた経験はずっと根底にあって、トラウマになっていた。自分の原型は、ガリガリで小さくて牛乳瓶の底のような眼鏡をかけていた女の子。そして、Iちゃんはその原型を知っている。
だから、今でもIちゃんに声がかけづらいんだな・・・そう思った。
過去の自分を知っている人、そしてその自分がどう変化したかも知っている人、全てを知られているようで怖いのかもしれない。
Iちゃんにはなんの心のわだかまりもないのだけれど・・・
今度すれ違ったら、話しかけてみようか・・・
そんな勇気があるのだろうか・・・
そんなことを考えながら、また駅のコンコースを歩いていた。
☆☆☆☆☆
noteを使い始めて半年経ちましたが、まだ使い方がよくわからず、コードというところをクリックしてしまったら、黒い帯が出てしまい、しばらくあたふたしていました。情けないです。皆さん、YouTubeや他の人の記事なども埋め込んでいらっしゃるのに、やり方が未だにわかりません。この使いづらさが更新も遅らせてしまっていることが残念です。
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