エッセイ
膨らんだ不安と訪れた平穏
入院中の祖母に会いにいった。口腔癌の影響で片側の頬を中心に片側がパンパンに腫れていた。
それでも何故か美しかった。
もう片側は祖母の顔の面影が残っていた。
いつ食事が取れなくなるかもわからない状況らしい。看護師さんからは『食べられるうちに、食べれるものなら何でも食べていいよ!』と言っていただき、一緒に病院のカフェへ行った。
祖母は昔から喫茶店が大好きだ。百貨店へ買い物に行ってはカフェで小一時間スタッフや友人と談笑して帰ってくるのが日課だった。
認知症の彼女が、一体どれだけ自分の状況を理解しているのかはわからない。祖父が亡くなった事も、自分が入院中でいつどうなるかわからない状況である事も、理解していないらしい。
それが良いのか悪いのか私達には全くわからないのだけれど、それでも彼女は幸福そうだった。
生きるのは辛い事だから、特に苦しんでいる人にとって死は救いのうちのひとつなのかもしれない。私もいつか死ぬけれど、それは幸福な事だ。
私もあなたもいつか死にますから、どうか悔いのないよう、日々をお過ごし下さい。
そう考えると、これまでの不安は消えてひさびさに心に平穏が訪れた。散らかっていたものを片付け、家中の窓を開けて空気を入れ替えて掃除をした。
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