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#150 突き詰めた先はシンプル〜カタールW杯も終わりまして〜



カタールW杯が終わりましたね。




凄いW杯でしたね。あまりにも壮絶で、あまりにも刺激的で、あまりにも残酷で、そしてあまりにも美しい決勝戦でした。日本代表の大躍進も含めて、間違いなく過去一面白かったW杯と言い切れます。


今回のW杯は、ある意味ですごく……なんというか、近年の進化の果てであり、その積み重ねの上での軌跡でもありながら、ある種のアンチテーゼでもあった…そんな大会だったなというのが自分なりの感想です。

近年、"再現性"や"ロジカル"といったフレーズを纏った戦術はいつしか学問のようになっていき、そしてこの数年で一気にピッチ上の事象は複雑化していきました。その現象と兆候は、このフットボールというスポーツに新たな価値観と評価基準を与え、間違いなくこの競技を進化させたと思います。ましてや、日々進化するテクノロジーの力と、そして人々がこの学問にタッチしやすくなるだけよプラットフォームの誕生もあり、その流れはファンにまで広がるようになっていった。誰もがサッカーを深く考えるようになった……それ自体は、この競技を新たな次元に連れて行ってくれたと思っています。
その一方で、欧州を中心とした革新的な時代の流れは、まるで概念が理屈に囚われていくかのように……そして目的の為の手段だったはずが、いつの間にか手段の為の目的に変わり始めていった。人々はその手段を言葉で説明することを求め始めて、本能のまま感じるべきところを、感じるよりも考えることに取り憑かれ始めた人も少なからず見てきました。サッカーの複雑化は新しい境地を見せた一方で、今まで素直に見ていた景色を素直に感じられなくなってしまった部分も否定できない……これがロシアW杯からカタールW杯までの間に顕著になった、サッカーを観る事の光と影だったように思います。


決勝戦のみならず、今大会を振り返ると……もしここにテーマを設けるなら、それはそういうフェーズを経て辿り着いた「突き詰めれば結局、シンプルに行き着く」といった部分だったように感じました。決勝戦はまさしくその象徴だった……一つ一つのプレーへの執着、形勢を変える為のギャンブル、「誰かの為に」を地で行くような極上の根性論、目的をどこまで愚直に純粋に追い続けた両チームの攻防…そしてまるで運命に約束されていたような、あまりにも出来すぎた王と新時代の怪物の対峙とその結末……それは近年のサッカーの潮流に対する肯定と否定であり、それを経て辿り着いた一つの境地だったように思います。これほどまでに美しく、これほどまで再現性のない極上のゲームを、私はこの人生であと何回見られるのでしょうか。
フットボールとはいつも刹那的で、だからこそ大袈裟なほどの文脈をそれぞれが紡ぎ、文脈が文脈を呼んだ新しい文脈が日々生まれていく。伝説は伝説に繋がり、この4年に一度の儚い舞台を基点とした旅を目指して、戦う者も観る者も熱量の下に人々は狂う。一周回って、やっぱりフットボールは何よりもシンプルで、そして少なくとも私にとっては何よりも美しいスポーツでした。あまりにも出来過ぎたシチュエーション、余りにも出来過ぎた結末……この120分間のドラマにリアルタイムで触れられた幸運にただただ感謝したい気持ちでいっぱいですし、この1ヶ月に見た景色は、物事を考えるより先に目の前の興奮を感じさせてくれた。サッカーというスポーツの喜びであったり、なぜこの競技の狂気に自分は取り憑かれたのかを、フィクションでも描けないような物語で突きつけてもらったような気分です。日本代表が見たのがベスト8という新しい景色じゃなかったとしても、日本代表の戦いぶりや、日本代表のみならず、この大会は素直な原風景を思い出させてくれたような気がします。

この1ヶ月間、本当に楽しかった。もはや誰に感謝していいのかわからないほど、全てに感謝したいです。
サッカーというシンプルは、突き詰めた先は結局シンプルに行き着く。このW杯の感想を尋ねられたら、私は心の底から何の捻りもないシンプルな感想を叫べることでしょう。


最高に楽しい1ヶ月でした!!!!!!!!!!


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