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エコー・イン・ザ・シー

コポコポコポコポ
私は毎晩、海で溺れていた。

ザーザー・・・という音がしていた。
ラジオの周波数を合わせるような音だ。
波の音にも似ている。


どちらかといえば夜の海に似ている。


昼間の海は、青い空が似合う。
夜中の海は、黒い水が蠢く。

近くのコンビニの明かりを頼りに
国道脇のガードレールを越えた。
その先にあるテトラポットの上に立つ。


人口物であるコンクリートにぶつかるたびに
波はドゴーンと大きな音を立てている。


ザブーンではない もっと破壊的な音がする。

まだ、夏の名残があって海風が涼しく感じる。
黒い水と白い波は生き物のようにうねっている。

私はなぜだか少し安堵していた。

この黒くて大きな生き物のような海に。
何もかもをその大きな口で飲み込み
私のややこしいこと全てを食べてくれそうだから。


スニカーの先がしぶきで濡れて光る。
あと一歩スッと踏み出せるような気がした。

ふと

ああ、このスニーカーってどこで買ったんだっけ。
なんだかの限定品で"世界に同じものは1つもない"とか
沢山喋る店員さんが勧めてきたんだっけ。

このスニーカーは、左右別々で違うデザインだ。

私はどうして選んだのだろう?
思考が私の足を止めてしまう。

次のうねりが迫ってくる。
黒い水と白い波がもうそこまで見えていた。

「それはダメだよ姉さん」

私は視線を背後に向けた。

「やだなぁ 冗談だよ ゆうちゃん」

コンビニで買ったビニールシートを脇に抱えて彼女が立っている。
私たちはどうしてここにいるんだっけ。
さっきまで街中で会っていたはず。

そうそう、唐突に「海に行こう!」って彼女が言ったんだ。

私は、彼女の言葉に誘発されて
最終電車に乗って海まできたのだった。



私とゆうちゃんが、知り合ったのはとあるクラブだ。
音の洪水の中で、彼女の小柄な体が跳ねていた。

私は、別の友人に連れてこられただけで
フロアには行かずに、バーカウンターの隅っこで
音に動く人の波をただ眺めていた。

ゆうちゃんは、目立っていたので私は顔を覚えた。

何回か通うと私もフロアに行くようになった。
気に入った音を流す人がいたからだ。

金と銀のキラキラした粉が舞うような感覚になる。

私は自然と体が動きその時間を堪能していた。


「すっごく気持ちよさそうだよね」

彼女が最初に話しかけてきた言葉だ。
自分では気付いていなかったがその時の私は
とてもよい表情をしていたらしいのだ。

「思わず声かけちゃった」

屈託のない笑顔で話す彼女は魅力的な子だった。
実際よくみると、整った顔立ちでショートヘアがよく似合う。

それからは、私を見かけると人懐こい子犬のように彼女から寄ってきた。

私の方が年上だったからか
ゆうちゃんは私のことを「姉さん」と呼び
私は彼女の「姉さん」になった。

ゆうちゃんは、沢山自分のことを話してくれた。

自分がレズビアンであること、失恋したばかりであること
その人のことが今も大好きなこと
クラブが好きなこと音楽が好きなこと

私の顔が好きなこと。

それは、恋愛感情ではなくて
ただ単純に顔がタイプなだけだと言って
会うたびに私の顔を両手で挟んでは

「うふふ やっぱりこの目が好き。」

うっとりした表情でただ呟く。
そしてパッと手を離して「ごめんね」と謝るのだ。

悪い気はしなかった。
自分でも私の目は魅力的だと思っていたし
誰だって可愛い子に「好き」と言われて嫌な気はしないだろう。

それで、恋愛感情を抱くかどうかは別のことだ。

私はよく同じ人の音で楽しんでいた。
ある日友人とゆうちゃんと話していたら

「それはその人を好きっていうことだよ」

二人は口を揃えてニヤニヤしながら言った。

私はというと、その途端に何かが小波のように引いて行った。

好きなものを好きっていうことは
どうしてその「好き」になってしまうのだろうか。

なぜ恋愛をしなければならないのだろう。

この世界に男と女が存在する限り
まだまだ真ん中でいることはとても難しい。

私だって人を好きになることは稀にある。

けれど、その時は確かに違ったんだ。



私はあの日からその人のことが「好き」だということになった。

うまく説明できなかったのが原因だろうか。
気に入ってはいたけれどこの感情は違うのに。

ゆうちゃんは世話焼き係になってしまい
沢山の恋愛アドバイスとともに私にその人の話をする。

否定も肯定も、そのどちらにも疲れていた。

今ここでゆうちゃんと音を楽しめればそれでいい。
諦めにも似たような感情。

今思えばこの頃から私は私を無視したのだ。
大切な自分の本当の気持ちを。

そうやって自分を誤魔化していく事を覚えていくのだろうか。

程なくして、私とゆうちゃんはトラブルに巻き込まれた。

何かで目立つ存在の人達をインターネットの世界では
まことしやかな噂や悪口を広めたりする。

有名税という言葉も、いつ頃からかあたり前のように存在する。

クラブで目立つゆうちゃんは書かれる人で
私はゆうちゃんを妬んで書く人にされていた。

いつも彼女と一緒にいる事を誰かが嫌だったのだろうか。
私がゆうちゃんの事を好きでふられた事を妬んでいるそうだ。

「ごめんね 姉さん・・・。」

会うたびに謝らなくていい言葉を聞くようになった。

もともと、屈託のない笑顔でいた彼女の顔は
どんどん曇り、時々整った顔を歪めて暗い声で呟く。

「これ、あの女が書いてるんだと思う」

関係あるともないともいえない他人に疑惑を持つようになる。

「事実」としてあるのは
誰かが、ゆうちゃんと私のことを言っているという事。
ゆうちゃんが深く傷ついているという事。

それ以外のことは憶測で、書いてる本人にしかわからない。

こういう状況下では勧善懲悪を作りたがる。
犯人探しも始まるし、目には目をと言い争いも繰り返される。

ゆうちゃんの周りの友人たちもそうだった。
きっとあいつが犯人に違いないなどと

憶測が決め付けに変わっていく異常な事態だ。

悪口や噂話には中毒性がある。

一瞬スッキリはするかもしれないが
脳は、どんどんより強い刺激を求めていく。

そして、同じ刺激では満足できなくなる人が多い。
自分にとって良くないものをもっともっとと欲する。

そういうおかしな状況に自分では気がつけなくなる。

その度に、私たちの「事実」を周囲の人たちに
何度となく、話さなければならなかった。


"ねえ ゆうちゃん知ってる?
悪口にも色があってね 黒ではないんだよ。
それはもっとドギツイ濃い色だ。
スマホの画面やPCの画面から毒々しい色が飛び交う。

毒に群がる人々は、魚の群れに見えた。
色水の中を泳ぐ魚の群れたちはいつもお腹を減らしている。

匿名性という名の水槽の中で、噂話を餌に右往左往して泳ぐ
水族館のパフォーマンスショーみたいだ。

全ては、傍観者のためのショーなのかもしれないね。"



水槽をひっくり返して壊してしまいたい。

私たちは手をかけそうになっては思いとどまっている。
自分の内側に無数の傷があるのをわかって目をそらす。

同じことをしてしまうのは、より自分を傷つけることになる。
ゆうちゃんと私は、それだけはハッキリと自覚していた。

SNSの普及でネットいじめって言葉もできた。

それは、一度気にしてしまうと24時間付き纏い終わらない。
学校や仕事が終わり、家に帰ってもずっと続いてしまう。

もっと自分を好きになる方法や、自分が気分良く過ごせるように
一人一人が気づけていたら、いじめも減っていくのかもしれない。

けれど、私たちもそのインターネットに傷ついてしまったのだ。
自分を好きでいられる事も、他に逃げられることも知っているのに。

それでも、時々ゆうちゃんは大好きな人の話をしたり
私と好きな音の人が恋愛だとか騒いだりしていた。

悪口を言われようと好きなものは好きと言える強さ。
こういう時の彼女は輝いていた。

私は彼女と一緒にいてはいけないのではないかと感じた。
そこまで誰かを好きになった事がないから・・・?

意図せずショーの出演者となってしまった私たちは
楽しかったはずのクラブから足が遠のいた。

自分を大切にして過ごす時間を必要としていた。





チーーーーゴルルルルザザー


私の左耳から音がするようになったのは
それから少したった頃だった。

耳鼻科に行くと、軽い音響難聴だと薬を処方された。
聴力は残っているが、時々聞こえにくくはなる。

耳鳴りも人によって千差万別あるのだから
医者に説明するのがどうにも難しい音もあった。

大きい音が好きだったのだから、いつなってもおかしくはなかった。
特にショックもなく淡々と医者の説明を聞いた。

聞こえにくい時には、常にいろいろな耳鳴りがする。

少し離れたところで左側から呼ばれれば
間違って右側を振り向く事もある。

また、自分が大きな声を出すと、ノイズのように声が割れた。

医者が心因性のものもあると言っていたが
だからといって、特に治療するほどでもない。


ただ、「それ」は一人の夜にやってきて
漠然とした絶望に似た感情を抱かせては去っていく。



特に理由なんてないのだ。


もちろん、普段は「いのち」に感謝して生活している。
どちらかというと「命の大切」さを実感していて気にかけている方だ。

ただ、耳鳴りのするふとした夜に「それ」はヒタヒタとやってきては
私を、濃い紫をした闇色の真綿に包もうとするだけだ。

光が暖かくて闇が冷たいなんて誰が決めたのだろう。
闇はぬるま湯のような温かさで私を包んでいく。

目にして焼き付いた悪口が脳内で繰り返される。


ザザー・・・ザサーー・・・

どこかで聞いた波のような音が寄せては返していく

このまま闇に溶けていなくなってしまおうか・・・。


ブブッ

通話アプリの着信を知らせる振動でハッとする。
ゆうちゃんからメッセージが届いた。

「明日会える?いつもの場所で19時」

クラブから足が遠のいた私たちが最近会うのは
偶然見つけた半個室みたいに仕切りのあるカフェだ。

少しほっとする。
ノロノロと指先を動かして返信する。
「明日」という文字を見つめて「約束」をする。


それだけのことだが、闇色の真綿はいつの間にか消えていた。



「はい。姉さん、ブラックコーヒー苦手でしょ?」

私の分も注文しに行っていたゆうちゃんが
丸みのある白いカップを2つ手にして席に戻ってきた。

今日はミルクティーの気分だったけど
まだ何も言う前にゆうちゃんは席を立ってしまった。

白いカップに入ったカフェオレを受け取る。
席について暫くすると彼女が言った。

「私たちは、何も悪いことをしていないのにね。」

私はうなずきながらも、モヤモヤとした説明のつかない感情になる。

多分・・・誰も悪いことをしていると思っていないのだ。
きっと、私もゆうちゃんも「正しく」はない。

私もゆうちゃんも、はっきり物事を言う方だ。
誰かを知らず知らずに傷つけていたのかもしれない。
けれども、それも「憶測」にすぎないのだ。

私は、自分がとても冷たい人間のような気がした。

ゆうちゃんのことを友人として好きだけど
もし違う感情を抱いていたとしたら
彼女を守ろうとしたり他の行動が起こせているのでは?

そんなモヤモヤした感情を抱いてカップに口をつけた。

「姉さんも私も、考えすぎなんだよ。自分のことも人のことも。」

ゆうちゃんは、今大好きな人のことで頭がいっぱいだ。

ふられて傷ついたゆうちゃんがクラブに行って
そこで、傷ついたゆうちゃんを支えているのは、結局大好きなその人だ。

その人は、ふっても優しくするんだなぁ・・・っとぼんやり思った。

表面的に優しい言葉をかけても
またきっと、大好きな人と居られないことでゆうちゃんは泣く。

私はきっとまた、ゆうちゃんを慰めたくて一緒にお茶をしたりする。
けれどゆうちゃんの一番ではないし、友達のような友達じゃないような。

私が以前、恋愛感情を抱いたのはいつだったかな。

「俺らまだ学生じゃん・・・」その言葉通りの終わり方だった。
年相応の恋愛が分からなくて、結婚願望もないのに

相手からしてみれば、私の言葉は情熱の塊にみえたのだ。
だったら別にどうでもいいやってその時に思った。

恋愛「普通」が、私には分からないとその時に実感した。

なんとなく思い出していて口数が少なくなった頃に
ゆうちゃんが、通話アプリの画面を見て唐突に叫んだ。

「姉さんごめん! 今から海いこ!」

私も、この気持ちをどうにかしたくてすぐに席から立ち上がった。



「それはダメだよ 姉さん」

冗談だよ・・・私は嘘をついていた。
もし一人で来ていたら冗談ではなくなっていたかもしれない。

ガードレールを越えて道路に戻る時、彼女は手を差し伸べてきて
なんとなしにその手を繋いだまま私たちは歩き始めた。

外灯もまばらな暗い夜道を、一人で歩くには寂しすぎた。


ドゴーン
海は、時々何か言いたげに大きな音を立てている。

時折すれ違う車のヘッドライトが二人の影を作る。

自然に繋いだ手に違和感もなくそれでいて
特に何の感情も湧いてこない自分にも戸惑っていた。

暫く無言で歩き続けていくと、海岸線はコンクリートではなくなり
少し明るい、砂浜の開けた場所が見えてきた。

ゆうちゃんはパッと手を離して駆け出して行った。

砂浜の上で素早く裸足になると海に向かって走る。
私もスニーカーを放りだし裸足で波打ち際まで走った。

サワサワと動く水がひんやりと心地よい。
ゆうちゃんは、溜まっていた全てを吐き出すように叫んだ。

それから、砂浜の上にさっき買ったビニールシートを広げ
ドサッと倒れ込むように寝転び、足を海に向かって放り投げた。

私もそっと横に座って彼女の足を眺めていた。

空を見上げるとちょうど丸い月が出ている。
水面に反射する月明かりがぼんやりと私たちを照らす。

「ごめんね、姉さん。姉さんを代わりにしちゃいけないのに。」

ああそうか・・・
私は今、ゆうちゃんの大好きな人の代わりだったのか。

スマホの通信アプリの画面を見ながら謝る彼女を見て
ただ、何も言わずに横に座って月を眺めていた。

私はこの先、こんな風に人を好きになることがあるのだろうか。
誰かを見るたび触れるたび思い出してしまうような。

「姉さんってどんな人と居たら幸せなんだろうね」

ドキリとする。
私の中を見透かされてしまった。


"私はね、ゆうちゃん。 
贅沢なんだと思うよ。
何もかも全てではないけれどここぞというような時
例え100億人がNOと言っても互いにYESと言えるような。
左右のデザインが違う世界に1つのスニーカーみたいな。"

目的地さえ同じなら何かが違っても共に歩ける事。
本当は誰しもそういう人を探しているのかもしれない。

けれども徐々に忘れていって情とかそういう他に大切なものや
一緒に居られる事で育むようなの関係を求める。

それがいいとか悪いとかではなくて
恋愛という言葉に縛られながら関係性を保とうとする。

私には分からない感覚だけれども
そういう世界から見ると私の方が異端だ。


私がそう話すとゆうちゃんはガバッと起き上がり
両手で私の顔を挟むと

「やっぱりその目大好き。ごめんね。」
と言った。

それからまたドサッとビニールシートの上に寝転がり
数分後には寝息を立てて眠ってしまった。

私も仰向けになり、月の光を浴びながら気づくと眠っていた。


周囲の音に目を覚ますと誰もいなかった砂浜は
サーフィンを楽しむ人で賑わっていた。

ピンク色の朝焼けの海は綺麗で、生きている感じがする。


私たちは無言でビニールシートを片付けて砂浜を後にし
晩夏とはいえ、少し冷えた体を駅前のファストフード店で温めた。
ペラペラのパンケーキと少し甘めのコーヒー。

別に一晩一緒に過ごしたからとかそういうわけじゃなくて

ゆうちゃんには、これから先ずっと幸せでいてほしいなと感じた。




国道脇の白いガードレールを越えようと足をかける。

「ダメだよ!危ない。もう車に戻って」

まだ超えてもいないのに、私は引き止められてしまった。
後ろを振り返ると、ホットコーヒーを2つ手にした彼が立っている。

助手席のシートに体を預けてコーヒーを受け取る。
ゆっくりとトラベラーリッドに口をつけて一口飲む。

ゆうちゃんとは、あれから少したって徐々に会わなくなった。
最後に交わした言葉は何だったかな。

それぐらい年月はあっというまにたってしまった。
ひきたてのコーヒーが当たり前にコンビニで買えるぐらいに。

苦い・・・ブラックコーヒーが口の中で苦味を主張する。

「あ、ごめん。また忘れてた」

この人はとても善良な良識ある社会人で、私を大切にしようとしている。
どちらかといえば無害で、いい人だと誰もが口を揃えて言うだろう。

実際、いい人だと思う。

冬の海が見たいという私をドライブに連れてきてくれて
嫌な顔1つせず、長距離の運転中も穏やかにハンドルを握っている。

それから、体が冷える頃にホットコーヒーを持って現れもする。

「眠い?眠かったら寝ていいよ。
後ろにブランケットもあるから。」

彼からはもの思いにふける私は眠そうに見えるのだろうか。

助手席のシートを倒して後部座席のブランケットをつかむ。
体の位置が落ち着くようにモゾモゾと動いて目をつぶる。

私もゆうちゃんといた頃よりかうまく社会に溶け込んでいる。
ハンドルを握る彼はとてもいい人なんだろう。

だったら、彼でいいのかもしれないと海にくるまでは思っていた。


ごめん カーラジオつけてくれる?」

私が少し体を起こしてこう言うと、すぐにラジオが聞こえだした。

"そろそろ家路へと急ぐ身支度中の方もいらっしゃるかもしれませんね。
ドライバーの皆さんは運転に気をつけてお帰りくださいね。
本日最後の曲はこちら・・・"


♫~
A smiling face, a fireplace, a cosy room
笑顔と暖炉と居心地の良い部屋
A little nest that nestles where roses bloom
薔薇が咲いてる小さな巣

Just Molly and me
モリーと僕
And baby makes three
それと赤ちゃんと三人で
We’re happy in my Blue Heaven
僕らは幸せ 愛する我が家 ~♫

この曲のような彼にとっての幸せのイメージ。
私の幸せだと信じて疑わないんだろうな。



ザサー・・・
ブランケットが闇色に変わっていく。
彼は、闇色の真綿に包まれた私に気づきはしない。

あの時、ゆうちゃんと手を繋いで歩いた道を車は反対方向に走っている。


口の中が苦い。
誰かの巣ではなく、自分の家に帰りたくなった。

ふと以前この海でゆうちゃんに言った言葉を思い出した。

急に視界が開けたような気持ちになっていく。


闇色の真綿はチェック柄のブランケットに戻っていた。

ああそうだ、スニカーの事を忘れていた。

私は、今日からちゃんと自分の言葉で話していこう。
まずは、目の前にいるこの人から。

それから、甘めのコーヒーを自分にいれてゆっくりと飲もう。


"ゆうちゃん、人は変わる、考え方も変わる。
以前、あなたに100億人の例え話をしたけれど
今は考えが少し変わってね
例え誰かがYESって言わなくても
まずは、50億人ぐらいがNOでも自分にYESって言えるように
真っ白のスニーカーに自分の絵を描けばいい。
この両足で歩いていけるように。"




※このお話はフィクションです。実在の人物や団体とは関係ありません。

#創作大賞2022


このお話はフィクションです。
著者の現実は別よ



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