ミニマリストが着物を着る理由
なんで着物着てるの?
お会いした方の9.5割はそうおっしゃいます。別に茶道の家元の家系でもなければ、落語家でもありません。なぜ着物を着ているのかと聞かれれば、着物が好きだからと答えています。
今回は、着物生活7年目の私が、
「着物を着てみたい。普段から着物で生活してみたい」
「でも洋服と違って情報も少ないし、あと一歩が踏み出せない」
という男性に、私の経験談を交えた着物の魅力をお伝えしていきます。
着物に興味のある方の背中をほんの少しだけ押せるような、そんなお話です。
※こちらの記事も、多くの反応をいただけました。みなさんの着物を着るきっかけにしていただけば幸いです。
着物との出会い
わたしが着物に出会ったのは、ミニマリストとして生活を見直し始めるほんの少し前のこと。もしかしたら、着物がミニマリズムに興味を抱いた一要素であったかもしれません。
私は名古屋の繁華街、栄の街を歩いていました。すると、着物姿のお姉さんが路上で客引きをしていました。てっきり和風のカフェかなにかと思い入店すると、手前半分はカフェ、もう半分の奥は着物屋さんでした。アパレル店員が併設カフェの店員も兼ねているってわけです。その後あれよあれよと着物を試着させられて、鏡を見ながら「合計100万円です」とくるわけです。
そんな大金をぽんと出せるわけもなく、当然買わずに帰路につきました。その時の衝撃は忘れられません。100万円があまりに高額だったからではなくて、鏡に映った着物を着ている自分が、カッコよかったからです。もうカルチャーショックですよ。自己評価の低い謙虚な典型的日本人の私がテンション上がるほど似合ってたんですから。凄くないですか?
着物にも古着がある
そこで私は着物を買うべくさっきの店に戻る、なんてわけにもいきませんでした。100万円を払うほど、私はまだ着物に惹かれてはいませんでしたから。
その代わりに、着物を安く買える方法を調べました。
ちょっと調べるとお分かりいただるのですが、着物を安く買える場所って色々あるんです。ポリエステルなどの化学繊維の着物なら通販で売ってますし、手頃な値段の着物を売っている呉服屋さんも見つけました。
そんな中で私が選んだのは、洋服と同じ金銭感覚で買い物できる古着屋でした。そして幸いなことに、先ほど100万円の着物を売っていた栄の店の近くには、古き良き大須観音とその商店街があり、そこは着物の古着屋の聖地のような場所だったのです。
そこから先は洋服と一緒です。店員さんと喋りながら着物を選び、試着して気に入ったものを買う。どうやって着るのかは知りませんでしたが、そこはYouTubeで簡単に情報収集をして万事解決です。
そうやって慣れてきたら、新しい着物や帯をどんどん集め、気づいたら普段着が着物になっていました。ちょうど、洋服は流行があってミニマリスト的ではないと気づいた時期だったこともあり、政権交代のようなものだったんですね。
着物を着る理由
そんな私が今も着物を着ている理由はたった一つ。私に一番似合う衣服が着物だったから。それだけです。
ちょっと待ってください。石を投げないでください。
ミニマリストが喜ぶような衣服としての機能は着物にはありません。いくつかメリットはありますが、デメリットも考慮すれば洋服と大差ありません。しかし逆を言えば、全員揃って洋服にしないといけない理由もないわけです。
わたしが着物で暮らして感じた、ささやかな着物の利点を列挙していきましょう。
例えば急な宅配便の対応も、タンクトップにハーフパンツでは恥ずかしくてわざわざ着替えていましたが、着物になってからは部屋着のまま対応できるようになりました。
例えば最近流行のオーバーシルエット。体型を隠せて人気ですが、それなら着物でよくないですか?着物の方がより身体のラインを拾わないのでおすすめです。
例えばカフェや買い物で。洋服を店員さんに褒められる確率ってどのくらいですか?私は着物だと1/3の確率で褒められます。通りすがりのお婆ちゃんに褒められる頻度は、月に1回といったところでしょうか。
ずっと着続け、飽きてしまったシャツやスラックスが、ひとつやふたつお持ちですよね。それ、自分でデザインをいじったりできますか?着物なら、衿合わせの角度でVネックの深さを調整したり、帯の位置、すなわち重心を変えたりと、着付けの工夫だけで雰囲気を変えることができるのです。
夏は袖から風が通って涼しいし、冬はいくら重ね着しても着膨れしないので暖かいです。洗濯機で洗える素材もたくさんあります。
そして、着物の最大の利点は、流行り廃りがなく普遍的であるということです。
ミニマリストにとって、暮らしの基礎となる衣食住の無駄は、できるだけそぎ落としたいものです。もし、そんなミニマリストのワードローブが常に流行を気を付けなくてはいけなくて、古臭くなれば買い替えないといけないものだとしたら…。考えるだけで疲れてしまいます。
慣れるまでの生活との摩擦や、悪目立ちする社会的なデメリットがあるとしても、古臭くなることもなく飽きも来ない、ランニングコストの低い着物という衣服は、生活に取り入れてみる価値があると思います。
突然ですが、皆さん旅館に行ったら浴衣着ますよね。普通のパジャマも用意されているのに、浴衣を選んでいませんか?
夏になったらお祭りに甚平を着て行ったり、正月には着物を着てお参りしたり。洋服ブランドでは着物コートや袴パンツなんてアイテムも取り扱われています。
みんな着物好きだと思うんですよ。東京事変とか、椎名林檎さん、吉田羊さん、藤井聡太さんなど、素敵な着物姿を披露される著名人は大勢いますし、みんな恥ずかしくて言えないだけで、着物への憧れはあると思うんです。
わたしは将来、古民家で自給自足する余生を送りたいと夢見ていますが、その生活は着物で過ごしたいんです。その時サマになるように、今から練習しておかなきゃ、と執筆している今も紺の縞模様の着物を着ています。
むすび
なんやかんやと書きましたが、みんな好きな服をお召しになればいいんです。わたしはたまたま和服だっただけのこと。外出する際には服を着ないと逮捕されてしまう以上、どうせ着るなら好きな服で出かけにゃ損なのです。
みなさんが、お好きな衣服で素敵な毎日を過ごせますように。
おわり
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