natsu

旅先での忘れられない恋をたまに思い出します。

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旅先での忘れられない恋をたまに思い出します。

最近の記事

ドォーモ

もし、あなたにあの街でまた会えるのなら、あなたと一緒にドォーモに登りたい。 あの急な階段を登った先で、あなたと何度もキスをしたい。 あなたは白ワインのボトルをもって、私はプラスチックのカップを持つわ。 あの街をドォーモの上から眺めながら、また2人の数日間を始めましょう。 ずっと一緒にいてなんて言わない。 数日間でいいの。あの小窓から聞こえる教会の鐘を、また一緒に聴きましょう。

    • 自転車

      夢で久しぶりにあなたに会った。 あなたは私を確かめるために、遠回しに私に話しかけてきたね。私はあなたが近づいてくるのをドキドキして感じていた。 久しぶりのハグ、ディナーの約束、あなたの歯ブラシ。 私はあの丘の上にある楕円形の建物を出た後、あなたに連絡先を渡していないことに気がついた。 のぶちゃんの家から、またあの丘の上まで自転車で戻ったの。 あなたは何食わぬ顔で、そこで会うことが決まってたかのように、もうすぐ仕事が終わるから待っててと言った。 2人で自転車を並走してレ

      • 芸術家

        私の男は芸術家だ。 繊細で、素直で、不器用。 女心がなんとも解らず、いつも私を悩ませる。 悪意はない。 私の友達は言う。 芸術家を生きているうちに評価しようとするな。大抵の芸術家は死んでからありがたみがわかる。あんたよりも早く死ぬんだから、墓前で泣いてやれ。    と。 私より早く死ぬなんてとんでもない。 でも、多分あの男を残して私は死んでも死に切れない。 あの男には私より早く死んでもらおう。 そしたら私が墓前で泣くわ。新しい男を連れて。

        • 無様

          恋に落ちるのは簡単 な、わけあるか。 30歳を手前にキャリアという盾で身を守り、エリート男たちとカジュアルな疑似恋愛を楽しみ、家を買おうかと不動産会社に資料請求をしていた。 いつからこんなに高く積み上げられたのか、プライドを守るために虚勢を張り 恋という穴に降りていくのも、ゆっくりのっそり。一ミリも怪我をしないように、一瞬でも無様な姿を晒さないように。 落ちてなんていけない。この穴がどこに続いてて、どれだく深いか分からないもの。 途中で引き返そうにも、登るのも大変。 重

          世紀末みたい

          きっと思い出すだろう。 誰もいない日比谷通りを手を繋いで歩いたこと。 夜桜。3番出口でのキス。 すんなりと私の心に入り込んできて、私を溶かしてくれた。 でも、もうあなたは何も持っていない。 私が唯一あなたに求めた愛さえも、あなたは持っていなかったのだから。 誠実さ。正直さ。 全て幻想だった。 何も持っていないあなたを愛そうともした。 人生で一度経験するかわからないような時期をあなたと過ごせて楽しかった。 私は先に戻るね。 さよなら。

          世紀末みたい

          祈り

          目の前に広がる海を見た。 人一人いない海岸で。 ずっと続く地平線を見た。 迫りくる波の音を聞いた。 しぶきを上げる波を感じた。 一緒に。 名も知らない駅で、海を見て 電車を降りた。 地図も持たず、あても無く海を目指した。 名も知らない神社で神に祈った。 この人と一緒にいるのを見守ってくださいと。

          アイス

          私たちは帰り道に棒アイスを買った。 1本だけ。私のアイス。 かれこれ1時間半あても無く歩き回り、川を下り、ブランコを揺らし 男はその間数回泣いた。泣くのを我慢する顔がなんとも間抜けで、それでも私はもう、その男を愛おしいとは思わなかった。 涙と鼻水でぐずぐずになった男の顔。 歳下のあまりにも頼りない、どうしようもない男。 私への愛だけが真実だと信じてやまず、だけどその愛を適切に伝えられない男。 玄関に着いた時私たちは激しくキスをした。止まらなかった。お互いの唇が今くっつ

          アイス

          Wednesday afternoon

          夢の中であの男に会った。 薄汚いオレンジのジャケットを着て、全くの別人のようだけど、あの男の顔をしていた。 朝起きて、彼のInstagramをみると 東京タワーと満月の絵を背景に 頭部と顔面を骨折した旨の報告がされていた。 死ぬかと思った。と。 ポツポツと連絡をとると、ケラケラと返事がかえってきた。 去年の1月を懐かしみ、お互いの肌を恋しく思い、決まらない未来について話した。 あの男は死なない。 でも、私たちがどちらも生きているうちにもう一度あの男に会いたい。 あの男

          Wednesday afternoon

          If the world was ending

          あの男を思い出す時間も減った。 そろそろ1年が経つのだから。あの男と出会ってから。あの男と離れてから。 最近、とても変わった人に出会った。36歳猪年B型。私たちはデートをしている。 生まれたてのヒヨコのような男で、正直に彼が生きてきた36年間の話をする。まだ2度しかデートをしていないが、彼には初恋の忘れられない人がいること、以前付き合っていた人がベトナム人だったこと、甲殻類が好きではないことなど、彼はランダムに伝えたいことを私に話してくれた。 きっとみんな、誰かを求めて

          If the world was ending

          浮気

          気持ちが浮かぶ。 一見、楽しそうでワクワクしてしまいそうだけど 私は浮気を嫌忌する。 激しい情事の後で、ある男は私に言った。 おれ、彼女いるんだ。 先程まで私の下半身を舐め回していたその口で、なんとも楽しそうな言い草で。 男に恋人がいようが、妻がいようが、愛人がいようが、私は構わない。 しかし、その女達を傷つけることを何とも思わないその男に私は腹が立った。 その場で服を着て出て行こうとする私に男は 朝までいなよ?今帰らなくてもセックスした事実は変わらないじゃない?

          共有

          あの男に似ていた。 軽やかさ。空を掴むような居心地。手の届かない心。 この男も私が激しくキスをすると口角を上げて笑った。でも、あの男のようにガムを噛んではいなかった。 この男はジャーナリストを目指していると言った。そして、私がドイツのポルノ女優と同じ空気を持ち合わせているとも。 男はこうも言った。俺たちが中学生から知り合いで、セックスの初めからこれまでの歴史を共有できていたらいいのにと。 私たちは人生を共有することはないだろう。 しかし、セックスだけはいとも簡単に共

          傷心

          他の女が見る彼を見た。 その女の目線で、でもきっと同じ気持ちで。 彼らは一緒にあの街を歩いていた。 夏だから半袖で。 男のカメラのフィルターに映る女が映る。 このビデオは男のことを想って造られたのだろう。私が見ていた男そのものが映し出されていた。 私はただ女があの男を弄んで傷つけたらいいと思う。 そしたら男はひとまわり成熟した写真家になるだろう。 私はただ男に傷つけたられた。 そして、ひとまわり成熟した女になったはずだ。

          メリーゴーランド

          動いているあの男を久しぶりに見た。 あの時と同じで、ガムを噛んで笑っていた。 あの男はきっとあのメリーゴーランドでたくさんの女と待ち合わせをするのだ。 そして、彼に夢中になった女はあのメリーゴーランドを見て彼に焦がれる。 男は私を撮らなかった。彼のお気に入りのLeicaでは。でも、この動いている男は、男を撮っている女を撮っている。 男が私を撮らなかったのは幸運なことかもしれない。私たちはフィルターを通さず見つめ合えたから。 男は私の写真を一度だけ撮った。ケータイのカメ

          メリーゴーランド

          ヒノタマ

          私の心はまだあの国で燃えている。 そう話すと、「旅先での恋って引きずるよね」と言われる。 旅とは不思議なものだ。 普段、東京では許せないような軽い冗談や情事がふわふわと成せてしまう。 そして、ふわふわした感情が重たい体と共に東京に戻るが、これがなかなか着地できない。 ふわふわ、ふわふわとかれこれ8ヶ月は宙に浮いている。 男の声も香りも、ましてや肌触りまで忘れてしまった。あんなにも憶えていたかったのに。 なのに、ふわふわふわふわ。私の心はまだあの国で燃えている。

          ヒノタマ

          ガム

          男はいつもガムを噛んでいた。 長方形の紙箱に入った正方形のガムを。 緑のガム。 別れの際、男のキスの味を覚えていたくてガムを買ったが同じではなかった。 私が噛んで味がなくなったガムを、キスするとき男の口に移したことがあった。 男は非常に驚いていた。笑っていた。 笑うとできる目尻のシワ。綺麗に並んだ歯。薄い唇。 私は次いつ男に会うのか。 会いたければ航空券を買えばいい。時間もお金もあるのだから。男は変わらずそこにいるだろう。 私は起こりえる『変化』を恐れているのだ。変わ

          ルフトハンザ航空

          今朝男の夢をみた。 夢で私たちは空港にいた。 男と出会ってから8ヶ月が経った。 男と別れてから8ヶ月が経った。 2ヶ月ほど前、男から東京にいる旨の連絡が入ったが、私はその時アメリカにいた。 つくづくアベコベだ。 夢で男は笑ってはいなかった。 私に会えて嬉しいのか、私を疎ましく思っているのか、私は男の気持ちを尋ねられたことがない。 ただ、男の左手薬指には彼の手には似合わない、タテヅメダイヤの女物の婚約指輪と結婚指輪が重ねてはめられていた。 私は男が何を考えているのか、誰と

          ルフトハンザ航空